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16話「ケットシーは策士です」

城下町 武器屋


そろそろ一時間が経ったので、武器屋に武器を取りに行くことにした。

相変わらず、店の中は竃の火で顔が火傷しそうだ。


店員「お!来たか!ほら、約束のものだ。」


こんな休日なのだから、注文する人は多いと思うけど。

やっぱり武器で客を覚えるのかな。


俺「おおっ!すげぇー!本物のSIG556だぁっ!」


…まあ武器知識は詳しいわけじゃないけど。


店員「ふふふ実はな、これには少し仕掛けがあってだな。ここをこうすると…ほら、形が変わった!お前さん人間の生徒だろ?オマケだ。」


俺「おおっ!これは…なんだっけ。」


もう一度言うが、武器には詳しくはない。


妹「DSR-1だよ、お兄ちゃん。」


…妹よ。

お前は、なんでそんなことを知っているんだ。


店員「まあ他は弄って試してくれ。ほれ、これ説明書な。じゃあ、次は蛇のねーちゃん。」


ラミアと交代すると同時にパンフレット程度の大きさの紙を渡された。


説明書か…あまり読まないタイプだけど、流石に銃だから見た方が良さそうだ。

それに、異世界の銃だし勝手が違うかもしれないからな。


ラミア「私のは、どんなのかなーっ?」


店員「ふふふ…どうだ!」


ガチッと音を立てて机の上に置かれたのは、まさしく忍者の持つような両端が鎖で結ばれた二本の短剣だった。


ラミア「うひゃーっ!これだよー!可愛いなぁ全くお前はーっ!」


今までも、この人がどこか変なのは知っていたけど。

刃物に愛着を持つのは普通に皆引いていた。


店員「じゃ、じゃあこれも使い勝手が難しいから説明書だ。えー、あぁそうだ、次はそこのメガネの兄ちゃん。」


次にオオカミが呼ばれると、丁度ラミアが俺に声をかけてきた。


ラミア「俺くん俺くん、そこに練習場あるし武器の性能、試してみない?」


俺「…手合わせって奴か?死ぬぞ、俺。」


冗談で言ったのに、ラミアは必死に手を前でブンブンと振り出した。


ラミア「ち、違うよ!ほら、流石に部屋で練習するわけにもいかないし、それに早速使い勝手を試したいじゃん。」


まあ納得だ。

でも一応許可は取っておこう。


俺「店員さん。練習場借りていいっすか?」


ドワーフは、オオカミのナックルのサイズ調節をしながらこちらを向いた。


店員「ん?いいぞ。好きなだけ使ってくれ。」


妹「じゃあ、私も貰ったら行くね。」


出来ればお前に切られないようにしたい。


………………

……


武器屋 練習場


練習場内はやはりドワーフが作ったと思われる様々な武器にあった設備があった。

銃向きに、きちんと射撃台もある程だ。


試しに幾つか弾を打ってみた。


俺「えっと…安全装置を外して…弾を入れて…あれ?弾は?」


ラミア「俺くん、説明書!」


ちなみに、ラミアは向こうで短剣を使いバッティングマシンから飛ばされる球を素早い動きで切り刻んでいる。


…早速慣れたようだ。


俺「あ、そうか。えっと…ほう、弾は要らないのか。」


流石異世界と言ったところだろうか、弾の代わりに飛ばすのは銃に込められた魔力らしい。


俺「…まあ、俺の魔力はまだたかが知れてるだろうし、今はこの魔力タンクを使う方がいいらしい。」


多分この説明は、俺が人間ということに対するドワーフの配慮だろう。


改めて、弾を打つ。


俺「パーン!パーン!」


ラミア「…えっ?」


俺「ダダダダダダダダッ!!」


ラミア「俺くん…?」


俺「セダーン!セダーン!」


ラミア「俺くんっ!?」


聞こえていたが、そろそろ無視も出来ないだろう。


俺「こいつ、凄いな。きちんと打てているのに銃声も反動も無いし、もう効果音も口で言うしかないな。」


ラミア「…口で言う意味なくない?もう変な人にしか見えなかったよ?」


それにしても、扱いやすい。

見た目程重たくないし、何より銃器が変わるのが凄い。

ボタン一つで形が変わるところとか、まるでFPSそのものだ。


俺「ほう、グレネードもあるのか。」


試したい…

でも、絶対試したらいけない…っ!


自制をし終える時には、既に全員集まっていた。


………………

……


ヴァンプ「ほー、軽いな。」


オオカミ「お前が持つと、修学旅行でヤンキーが買った模造刀みたいだな。」


なるほど、他の世界にもそういう奴はいるのか。


ヴァンプ「んー。そうだ。模擬戦しようぜ!」


突然の提案にどよめいた。


タウロ「私はいいが…危なくないか?」


タウロさんの言うのも最もだ、今日貰った武器をいきなり扱えるわけがない。


ヴァンプ「大丈夫、武器を弾くっていうだけだから。」


ラミア「ならいいじゃん。私は、ヴァンプに賛成。早速使ってみたいし。」


オオカミとタウロさんも渋々承諾したようだ。


ヴァンプ「よし!じゃあ俺くんやるか!」


俺「ええええっ!?なんで俺!」


逆に、レイピアだと面積が小さいし、ヴァンプの方が危ない気がする…。


ヴァンプ「折角だしな、それに俺は銀の弾丸じゃない限り死なないぞ!」


いや、それでも致命傷はできるだろ。


俺「うー、仕方が無いか。どうなっても知らないからな。」


勝ち目は無いと思うけど。


オオカミ「じゃ、始めー。」


はやっ!

そんなあっさり告げられても…


俺「え!ちょちょっと弾込める時間が…」


あたふたしている時間、2秒。

それだけでも、ヴァンプにとっては充分だったようだ。


ヴァンプ「悪いなっ!」


俺「よし!…あっ!?」


何か打ち付ける音がなり、手から愛銃が放たれた。


やはり、スピード以前の問題だ。


………………

……


城下町 喫茶店


俺「やっぱり、俺は戦いなんて無理だって。」


武器屋を出ると、そろそろ昼ごはんの時間だったので、折角なので城下町で取ることにした。


選んだ店は、まさに庶民的と高貴的の間のような店だったが、俺たちのような学生でも普通に入れてくれた。

…まあ喧騒もない静かな雰囲気だから良しとしよう。


タウロ「俺くんはそのままで良いと私も思う。」


ラミア「いや、タウロさんの場合は俺くんが強かったら専属の騎士になる意味がないからでしょっ!」


サンドウィッチを食べた後に頼んだケーキとコーヒーが出てきた。


ふむ…少し砂糖入れよ。


ヴァンプ「あ、ちなみにここ、俺くんの奢りだから。」


えっ…?

少し驚いて砂糖をこぼしてしまった。

いやいや、そんなことより!


俺「はぁっ!?な、なんで!」


ヴァンプ「え、いや、だって。…負けたじゃん。」


えー。

あれは負けイベントじゃないの?


俺「ちょ、おい!皆もなんか言ってくれよ!」


俺の泣き言に返ってきたのは、半分は予想していた悲しき現実だった。


みんな「「ゴチになります」」


俺「…えー。」


仕方が無いので、財布を見る。

大丈夫だ、まだ今月の家賃を使えば…


となど考えていると、突如野太い男の怒声が聞こえてきた。


男「おいコラ!俺の服汚しやがって!」


すると、言われた女性も控えめながら反論する。


女性「いや、貴方が勝手にぶつかって零したのでしょう?それに、零れたのはただの水です。」


男「うるせぇっ!この服、いくらしたと思ってんだ!しみになる前にクリーニング代、慰謝料等払ってもらおうか。」


無理やりな言いがかりに妹が俺に質問する。


妹「ねぇお兄ちゃん。普通、水ってしみならないよね。それに、あの服、さっきの店でみた服だよ。」


まあ、シミは物によったらなるけど。


妹「ついでに、服が売ってた店じゃなくて雑貨屋ね。」


それを聞き、ラミアが表情を変える。


ラミア「つまり…どういうこと?」


先ほどの流れから考えられる答えはすぐに出るが、代わりにオオカミが答えた。


オオカミ「つまり、言いがかりをつけて金を盗ろうとしているんだろう。」


やるせない問題だが、善があれば悪もある。

あの学園長もそう考えてこの世界を世界を創造したのだろう。

ものの秩序を考えれば仕方ないことだろう。


しかし、オオカミの言葉を聞いたラミアは血相を変えて飛び込もうとした。


ヴァンプ「お、おいヤメろ!」


間一髪、タウロさんがラミアの手を掴み制することができた。


ラミア「なんでっ!あの女の人、何も悪くないんだよ!?」


オオカミ「校則にあるだろ!一般人のトラブルには首を突っ込むのはダメだ!」


オオカミに続けてタウロさんも冷静に注意する。


タウロ「それに、このようなことで首を突っ込むと体がいくつあっても足りないぞ。」


タウロさんの言葉を聞き、ラミアは項垂れた。


ラミア「う、うん…」


一方、喧騒はまだ収まっていなかった。


女性「もういい加減にしてよ!本当にコーヒーとかぶっかけるわよ!」


男「あぁ!?女のくせにお前なっ…!?」


バキッと音が聞こえたと思うと、瞬間に男は倒れていた。

そこに残されていたのは、唖然とする女性と冷や汗をかくタウロさんの2人だけだった。


俺「あっ。」


タウロ「うああああああああっ!?わ、私は、な、なんでことを…っ!?こ、今度こそ田舎に…」


何が起こったのかは、タウロさんの手に持ったランサーで一目でわかる。

多分、女性差別を聞いて許せなくなって思いっきり殴ったのだろう。

すると、男はまだ意識があったのか体を起こした。


男「こ、この野郎…たかが学生のアマになにが出来るってんだ。」


…顔に蹄鉄の跡がついている。

ランサーは関係なかったらしい。


それを見たヴァンプは呆れて頭を抱えた。


ヴァンプ「あいつ…なにやってんだよ…。」


オオカミ「仕方ない。あいつ、まだあの男、仲間がいるようだし加勢するか。」


何故かオオカミも乗り気に見えるのは気のせいだと信じたい。


俺「ええっ!ちょ、危ないって!」


俺の心配を無視して2人とも行ってしまった。

男の方を見ると、オオカミの言葉の通り、それなりに仲間がいたらしい。


妹「お、お兄ちゃん…」


俺「だ、大丈夫だよ。」


ここに来てから、なんだか頼りないところしか見せていない。

こういう時くらいは兄らしくするべきだろう。


しかし、妹の口から出てきたのは信じがたい言葉だった。


妹「私も加勢したい!」


俺「…!?」


それを聞いて、脇にいたラミアも声を上げる。


ラミア「よーし!じゃあ私についてきなさーい!」


俺「おい!校則ってなんだったんだよ!」


俺の声も虚しく届かないまま、また2人と立ち去ってしまった。


もう既に残されたのはスライムさんと俺だけだ。


俺「…はぁどうしよう、スライムさん。」


そう言っても、スライムさんはポヨポヨしているだけで俺にはスライムさんの言葉はわからなかった。


俺「…コルク銃とか麻酔銃にはならないのかな。」


狙撃ぐらいなら手伝えそうなので弄ってみることにする。

さっきラミアに注意されて、説明書を読んだ時、ボタンだけでなく自分の意思でも銃は変わると書いてあった。

その通りに使えるなら、試すのにいい機会だ。


俺はさっきの葛藤を忘れて、形を変えてを忍ばせた麻酔銃に手をかけた。


俺「…ほいっ!」


的は動いているものの丁度敵の首に針が刺さった。やはり反動が無いと軸がぶれにくい。

刹那男は眠るように倒れた…ってか事実眠ったんだけど。


スコープを追加して覗く。

他の人たちもかなり優勢に戦っているようだ。

妹ととかは適当に振り回してるようにしか見えないけど。


しかし…

夢中になりすぎていたのか、首に冷たいものが触れる。

スコープから顔を外すと後ろには顔の濃い男が刃物を俺に向けていた。

これは、ヤバい。マスケットに形を変えるにも、変な行動を起こしたとみて首が跳ねるのは見えている。


しかし、なにより。

…他の人たちにバレたくないっ!!


これで叫び声とかあげたらマジで俺の中の男が他の人から消える気がする。

すると、歯を食いしばって我慢した甲斐があったのだろうか、または単なる幸運か。…まあ後者だろう。


スライムさんが男の顔にへばりついた。窒息でもさせる気だろうか。


スライム「…。」


終いに男は動かなくなり、スライムさんが剥がれる。


…その男の顔を見て思い知らされた。


スライムさんが意外と酸が強いということを。


俺「す、スライムさん…やりすぎ。」


スライム「^_−☆」


いや、テヘッてされてもこれはトラウマになるからと内心ツッコミを入れて置いた。

どうせ、口で言っても仕方が無い。


…………

……


女性「あの、本当にありがとう。なにかお礼させて欲しいですが少し今は…」


敵を片付けた後、女性が話してきた。

すっかり逃げたのだと思ったが、本人曰く流石に食い逃げも悪いと思ったらしい。


タウロ「いや、礼など構わない。私が勝手に首を突っ込んだだけだ。」


ヴァンプ「そうですよー。お礼とかやめてください、性に合わないっす。」


こちらがいくら断っても、女性の方は下がろうとしない。

さっきも思ったが、強い意思の人だと思う。


最後まで粘った結果、またお礼をするから連絡先を教えるということになった。


タウロ「よし、俺くん。君だ。」


俺「えっ?なんで俺?」


ラミア「だって、この人と1番種族似てるし。」


えー。見た目で決められた気がする。

そんなの、オオカミやヴァンプにも言えることだと思うが…やはり、俺が連絡受けになった方がいいだろう。


俺「あ、はい、じゃあ。えっと、これでいいですか。」


カバンに入れてあったメモ用紙にペンで、学校住所と部屋番号、そして部屋の電話番号(この世界にも電話線は通っていた)を書いて女性に渡した。


女性「はい、確かに。…えっ!学園の生徒さんだったんですか!」


そういえば、伝えるの忘れていたな。


ヴァンプ「ああっ!そうだ!すいませんがこの事学校には秘密に…」


ケットシー「もう出来ないにゃ」


後ろから聞いたことのあるクセのある声が聞こえた。

背筋が冷たくなったのは俺だけではなかっただろう。


ラミア「せ、せんせー…」


ラミアが弱々しく声を上げる。


ケットシー「うーん、城下町の人たちのトラブルには首を突っ込んだらいけないと伝えたはずにゃ。君たち、悪いけど罰として教科の『闘い』。単位マイナス20からのスタートにゃ。」


結構痛い罰だ。

他の人たちも顔をしかめている。


ケットシー「ちなみに、オオカミくんには個人的に恨みがあるから国語でもマイナスしとくにゃ。」


オオカミ「えええええっ!?」


これはタダの理不尽だと思う。


……………………

……


門星学園 自室


俺「スポーン、スポーン」


妹「あ、危ないよー!」


次の日、俺たちは一日部屋から出たらいけないと言われた。


俺は折角なので練習として、銃の練習をすることにした。

もちろん危ないから、コルク銃にしてだが。


俺「人には向けないから大丈夫。」


妹「じゃあ私も、刀の練習しようかな…」


俺「…離れて、模造刀でしてくれ。」


再び、ドアに掛けた的に目掛けて銃を打つ。


…すると


ラミア「俺く…うはっ!?」


的ではなくラミアに当たった。

人に向けないようにと言ったところだったから妹に変な目でみられている。


俺「ラ、ラミアさん!?なんで出ちゃダメでしょ!?」


ラミア「…イテテ…出ちゃいけないのは外にだよ。部屋から出ずにご飯とかどうするの。」


作れよっ!?


俺「…もしかして、ラミアさん料理出来ない?」


ラミア「うぅ…いいもん。私は俺くんに主夫してもらうから。」


まさかの妻働き。


俺「ってか、勝手に結婚決めんなよ…まあいいや、そこそこいい時間だし今回は俺がご馳走するか。」


ラミア「えっ!?いいの?」


せっかくなら、他の人も呼びたいが今回は仕方ないだろう。


妹「いいって、お兄ちゃんこう見えてもバイトで厨房立てる腕前なんだよ!」


ラミア「すごい!意外と普通なのが特にすごい!」


うん、それすごくないな。


ラミア「あ、そうだ。俺くんにこれ渡しにきたんだった。」


俺「お、そうか。今回は意味のある訪問なんだな。…これって。」


ラミアが取り出したのはそれは雑貨屋の包み紙だった。


ラミア「えへへ、あの時のマグカップ。片方、俺くんになんだ。」


カップを手に取り改めて彼女は俺に好意を抱いてくれているのだと思う。


…いやいやいや、彼女は俺が人間だから好きなんだ。

危ない、それを忘れそうになった…。


ラミア「あと、実はもう一つ。…あ、これは恋愛とかじゃなくて一生徒としてなんだけど。はい。」


俺「えっ?」


渡されたのは、また雑貨屋の袋だった。

中に入っていたのは…


俺「手袋?」


ラミア「っていうより、グローブかな。これね、魔力が溜まりやすいから俺くんにと思って。」


そうか…そういえば、ラミアって俺の世界に魔法がないこと知ってた…ん?


俺「おい、ラミアさんの世界にも魔法ないよな?自分のはいいのか?」


ラミア「うん、覚えてくれてたんだ。まぁね。私は…ラミアだから、一応魔法っぽい力はあるし。俺くんなら知ってるでしょ?」


確かに。

ラミアは伝説では人語を話せない代わりに美しい口笛で人間を虜にすると聞いたことがある。


ラミア「まあ、この世界は人語が話せない私でも魔法で補正して、伝えてくれるけどね。多分、口笛も魔法みたいなものなんだと思う。」


…そういえば、不思議なことがある。

かなりリスクのある質問かもしれないけれど、今のラミアなら教えてくれるだろう。


俺「どうして、ラミアさんは口笛で俺を虜にしようとは思わないの。」


ラミアは、微笑んで応えた。


ラミア「私は、そんなせこい技を使って恋人にはなりたくないの。そんなのタダの外だけの恋愛だもん。」


………


俺「バカだな、あんたは。」


ラミア「なっ!こ、これ言うの恥ずかしかったんだよ!?」


俺「そうか。録画しておけばよかったな。」


ラミア「むううううっ!!」


なんだ、

意外とまともなところもあるんだ。

ちょっと献立を変更してやろう。


妹「ねー、晩ご飯なにー?」


俺「エッグベネディクトだよ。」

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