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第6話「盤上のスピード狂」

「ふぅ、とりあえず鬼は撒いたようだな」


「危なかったぁ!車がなかったら死んでたぜ……」


「ちょっと!陽向!あんたの運転荒いのよ!

もっと丁寧にできないの?」


「ウルセェなぁ!俺の運転技術に耐えられないこの車がポンコツなんだよ!」


確かに、気持ち悪くなってきた。

どうやら、陽向はレーシングゲーム感覚で車を運転している。

アクセルはベタ踏み、曲がる時もかなりインコースだ。

いいドライバーだ。

ゲームならな。


「なぁ、とりあえず、どこに向かうよ?」


「東京全域がデスゲームなんだ。

どこに行っても、状況は変わらなそうだが……」


———ブゥン!!


突如、真横を通り過ぎる黒い影。

高速で通り過ぎたので黒い残像にしか見えなかった。

ここは一般道、車を運転するにしてもせいぜい速度は60km/hだろう。

まぁ、デスゲームなんだ。

車を飛ばすやつがいてもおかしくない。

いや、車で出せるスピードじゃ無かっただろ。

ということは、つまり……


「な、なぁ、今のって……鬼?か?」


だよな、そう考えるよな天才。


「あぁ、おそらくな……」


「あんなに速い鬼、梨緒でも勝てるかな……」


「いや、流石に無理じゃないか?」と言いたいが今自信を無くしても意味がない。

ここは、


「勝てるんじゃないか?

だって、陸上の全国1位だもんな」


「だよね!だよね!梨緒勝てるよね!」


「はいはい、勝てるんじゃねぇ?」


「陽向は黙ってて!」


「なんで、俺だけ厳しんだよ!」


「あんたのは、気持ちがこもってないの"気持ちが"!」


まぁ、俺も勝てるとは思ってないんだがな。

とりあえず、あんなに速い鬼がいるなら車移動はあまりしない方が良さそうだ。


「鬼を全て倒すってことは、あの鬼も倒さないといけないんだよね?」


「まぁ、そうだな」


「マジかよ!!あんなのどうやって倒すんだよ!

俺の入れ替え(超能力)は相性悪そうだぜ?」


「そうだな……」


いずれ、あの鬼も倒さなければならない。

どう倒そうか、あんな速いの。

別の超能力者を探した方がいいのか……


……え、ちょっと待てよ。


俺はふと、サイドミラーを確認した。

そこには、バイクに乗った黒い物体。

ライダースーツだと言われれば違和感はないが、バイク本体には馬のような顔が付いている。

間違いない、鬼だ。


「おい、陽向後ろ!鬼だ!さっきの鬼が来ている!」


「おい!マジかよ!!」


急激に迫り来る鬼。


警察さん、今が出番なんじゃないか?

このスピード狂を捕まえてくれよ。

まぁ、多分俺たちもスピード違反だが。


「とりあえず、右折だ!」


「お、おっけい!!」


「ちょ、ちょっと!!痛いわよ!」


陽向は急ハンドルを切る。

傾く車体。

遠心力で身体は窓に押し付けられる。

あのスピードなら、すぐには曲がれないだろう。

サイドミラーを確認する。

曲がりきれず真っ直ぐに走り切る鬼。


「ど、どうだ?陽向」


「とりあえず、撒いたようだな……」


「ふぅ、あっぶね……」


「車降りた方がいいんじゃないの?」


梨緒にしては頭が冴えてるじゃないか。


「そうだな、適当に車を停めよう」


「分かった……」


———キキィィィィ!


急ブレーキ音。

車体は前方に傾く。


「痛いっ!!ちょっと陽向!ブレーキ下手!」


「うるせぇー!早く出るぞ!」


適当にとはいったが、豪快にとはいってない。

運転すると性格が変わるとはこのことか?

いや、陽向の場合は大好きなゲームを取り上げられた子供のような感覚か。


俺たちは車を路上に乗り捨て、徒歩移動を選んだ。

標識を見る感じ、ここは高円寺。

俺たちの高校は千駄ヶ谷。

かなり、移動したな。

まぁ、何処に行ってもさほど変わらないと思うがな。


「高円寺とかあんまり来ないぜ?俺」


「土地勘がないのは少し不安だな」


———ガッガッガッ!!


突如、後方から鳴り響く、速い連続音。

それは学校で散々聞いた、悪魔の足音。

念のため振り返り確かめる。


「おい!鬼だ!」


「マジかよ!どうするよ!歩!」


「とりあえず、逃げろ!

あとでメールする!」


散り散りに逃げる3人。

迫り来る鬼。

やはり、ターゲットは俺だ。

1/3を引き当て続けている。

運が悪い。

いや、良いと捉えておこう。


振り返るとすぐそばに鬼の姿。

手はもう数cmにまで迫っている。


やばい、死ぬ!死ぬ!


突如、目の前に現れる男。

鬼ではない、人間だ。


「う、うわぁ!」


突然、路地裏に吸い込まれる身体。

今処理したが、これは引っ張られた感覚だ。


「……シィー!静かに!」


そこには、先ほど目の前に現れた男。

いや、さっき目の前にいたじゃん。

え、双子?


路地裏を通り過ぎる鬼。

目の前に現れた男にターゲットを変えたのか追いかけて行った。


「ふぅ、なんとか無事でよかったっす!」


「さっきのはなんなんだ?双子か?」


「あぁ、アレっすか?

アレは俺の異能っす!」


「異能……分身ができるってこと?」


「俺もまだよく分かってないっすけど、とりあえず分身が一体出せるんすよ!」


多分、この人は頭が悪い。

まぁ、ウチには梨緒がいるから慣れてはいるが。


「とりあえず、俺の仲間を呼ぶ」


「仲間がいるんすか?

俺1人で寂しかったんすよ!」


「そ、そうか……」


この男が内通者って可能性もある。

共に行動するのはまずいか?

しかし、俺を助けたってことは、敵ではないのか。

まだ、判断するのは早いか……。

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