第3話「重力の実験」
「あ!いたいた!!歩っ!」
「おい!おせぇーぞ?
はやくその方向音痴治せよな!」
「うるさいわね!陽向!
私は方向音痴じゃないわ!」
いや、方向音痴だろ。
と言いたいが今喧嘩しても仕方がない。
「喧嘩してる場合じゃないぞ。
いい作戦を思いついたんだ。」
「うん!なになに!歩!」
「今度は完璧に倒せるんだよな?」
「その確証はないが、とりあえず今は思いついた作戦を実行していくのがいいだろう」
「そうだね!さすが歩っ!」
「それで?作戦は?なに?」
「あれを使ってアイツを誘導する!」
「人体模型?」
「鬼はそんなに馬鹿なのか?
人体模型と人間を区別できないぐらいに」
「あぁ、かなり馬鹿だった!
俺があそこのロッカーに隠れている時に鬼は人体模型に触れていたんだ。
その後3秒ほどの硬直」
「硬直……
あの鬼自体が仮にメカだとすると、人型を捕捉する回路と手で触れる回路が組み込まれているはず……
そういうことか!分かったぜ!
アイツはとりあえず人型に触れる回路を組み込まれていて、消えなければ人間じゃないと判断している!
その判断の処理に数秒かかるってことか!」
「さすが天才発明家だ!その処理に伴う硬直を利用する!」
「ちょっと、まだ理解できていないんだけど?
鬼って機械なの?」
「あぁ、95%ぐらいの確証だがな……」
石を頭部に投げつけた時の挙動。
人体模型と人間の区別がついていない点からほぼ間違いなく人を消すために作られた機械である。
これを言っても梨緒には理解できないだろうからアイツは機械ってことだけで理解して欲しい。
「でも、どうやって倒すんだ?
石を投げつけてもかすり傷な奴だろ?」
「それはだな、"重力"を使う!」
「なるほどな……
おっけい!やろう!」
「ちょ、ちょっと勝手に話進めないでよ!」
普段から梨緒に走りで置き去りにされているので今回は別のベクトルで置き去りにしよう。
俺は梨緒に中庭まで人体模型を運ぶように指示した。
そのあとは適当に鬼の居場所監視しておくようにと。
そして、俺と陽向は屋上に向かい重力の実験準備を始める。
「なぁ、こっからモノを落としたらどんぐらいの威力になるんだ?」
「まぁ、物にもよるが、そうだな……
あの、鉢植えとかだと車にぶつかるくらいの威力はでるんじゃね?」
「よし、じゃあその鉢植えにしよう!
これで、鬼を倒せなかったらどうするよ?」
「まぁ……逃げる」
「そうだな、車にぶつかっても倒せないならここじゃ無理そうだしな」
ポケットからブブッと振動。
携帯のバイブレーションだ。
おそらく、梨緒からだろう。
俺は携帯をポケットから取り出す。
———
梨緒:「設置完了だよ!」
歩:「りょ」
———
俺と陽向は屋上から身を乗り出し中庭を見下げる。
真下にある、人体模型。
どうやら、しっかり設置してくれたようだ。
「よし!あとはあそこに鬼が引っかかるのを待つだけだな!」
「どっちが鉢を落とす?」
「それは、俺だろ!」
「だよな、天才発明家」
鉢を持ち待機する陽向。
ニヤリと口角が上がっている。
それはそうだろうな、退屈だと思っていた学校でこんなに大掛かりな実験ができるんだ。
当たれば自動車と衝突事故並みの威力。
これで倒せなければ、かなり厄介だ。
再びスマホが震える。
———
梨緒:「鬼が中庭の近くに向かった!」
歩:「りょ」
梨緒:「あ!あれに気づいたよ!」
歩:「りょ」
———
「おお!!キタキタ!!」
中庭の人体模型の前に立つ鬼。
陽向は俺を見つめ、頷く。
「いいよな!いいんだよな!」って言いたいんだろう。
「盛大にやってくれ」と言わんばかりに俺は大きく頷いた。
とうとう陽向の手から鉢が離れる。
重力に乗り加速する。
———パァーーン!!
投下から役2秒後に鳴り響く音。
間違いなく直撃した音だ。
実験結果を見るべく中庭を覗き込む。
そこには粉々に割れた鉢。
そして、倒れ込みぴくりとも動かない鬼。
「よっしゃぁぁ!!」
「実験成功だな!
車で轢けば倒せるくらいの鬼ってことだ!」
「人を消す技術があるのに大した事はないんだな」
再び震え出すスマホ。
梨緒からだろう。
実験成功のお褒めの言葉か?
———
梨緒:「やばいよ!鬼が動き出した!!」
梨緒:「階段を登ってるからそっちに向かっているかも!!」
歩:「ま?」
梨緒:「マジマジ!!」
———
「おいおい!あの鬼まだ生きてるって……」
「……っぐ……ぐあっ!」
「ど、どうしたんだよ陽向」
そこには、頭を抑えうずくまる陽向。
実験成功かと思われた後の失敗通知。
天才発明家のメンタルをえぐったか?
「……ッグ!頭が……」
「実験失敗で悔しいのは分かるけど!
もうこっちまで鬼が来てるんだ!!なぁ!」
「頭が……クソ……イテェ……ッグ!」
頭が痛い。
メンタルからくるものではないな。
脳梗塞とかか?
だとしたらやばくないか。
病院もデスゲーム中じゃやってないだろうし。
それよりも、鬼が来てしまう。
屋上の扉がゆっくりと開く。
そこには黒アーマーを見に纏った鬼。
足を引き摺りながら俺たちに迫る。
まるで、ゾンビのように。
え、やばくね……




