第2話「"鬼討伐作戦"PART.1」
「あ、いたいた!!」
前方に見える鬼の姿。
次々と触れられては消えていく生徒。
もう過半数ぐらいは消えたか?
それぐらいに学校としての活気が無い。
俺はポケットからスマホを取り出した。
変人どもに連絡するためだ。
スマホの画面に指を踊らす。
———
歩:「鬼いた。職員室前」
梨緒:「OK!さすがだね!!歩!」
陽向「教師、死亡不可避で草」
梨緒「じゃあ、りお向かうね!」
歩「おけ、作戦通りに」
陽向「こっちも準備おけまる!」
———
俺はスマホをポケットにしまう。
変わらず職員室にいる鬼を眺める。
その、3m後方には梨緒の姿。
手には掌サイズの石。
「そぉーれ!!」
大きく振りかぶり鬼に投げつける梨緒。
見事、後頭部に直撃する。
さすが、陸上部。
幼馴染3人のうち1番運動神経がいい。
鬼の頭は前方に傾く。
纏っている黒いアーマーに少し傷がつく。
鬼討伐作戦、その1は成功。
鬼が見に纏う黒いアーマーの耐久力確認だ。
梨緒の投擲で傷が付くレベル。
未知の素材ではなさそうだ。
振り向き梨緒を捉える鬼。
「さぁ、私を捕まえてみなさい!」
鬼を挑発する梨緒。
とんだ強心臓だ。
触れられたら死ぬんだぞ?
つくづく変なやつだ。
まぁ、だから囮に抜擢したんだが。
獲物を捕らえるように走り出す鬼。
鬼討伐作戦、その2に移行する。
梨緒を追いかける鬼を追いかける俺。
相手はタッチすることだけを生業としているんだ。
獲物を捕捉すればバカみたいに追いかけまわすだろ。
もう一度言う、バカみたいに。
「ねぇ、遅くない!?これじゃあ、ジョグでも捕まらないわよ?」
「鬼が遅いんじゃなくて、お前が速いんだよ」と言いたいところだが、声を発すると俺がバレる。
正直、俺が追いかけられると瞬殺だ。
鬼討伐作戦、その2は鬼の誘導。
バカみたいに追いかけまわす鬼はおそらく理性がない。
いわば、人間に触れるだけの回路をぶち込まれた機械だ。
それは鬼討伐作戦、その1で確証に変わった。
石を投げつけられた時の挙動は明らかに人ではなかった。
梨緒は階段を駆け上がる。
ゴールは3階の教室。
扉を大きく開け中に逃げ込む。
獲物を捕らえるためにまんまと教室に入る、鬼。
そこで待つ、陽向。
「はい、いらっしゃいませっ!!」
手にはボタンを持っている。
鬼討伐作戦の仕上げは、"これ"。
鬼が教室に入り切った頃に、そのボタンを押す。
すると、大きなネットが放出され、鬼を包み込む。
「よっしゃ!捕えたぜ!!
早く離れるぞ!!」
「ちょっとなんなのよ!!」
陽向と梨緒は急いで教室を出る。
扉をバタンと勢いよく閉めた途端聞こえる音。
———バリバリ!!
鬼討伐作戦の仕上げは、誘い込んだ教室で拘束し電撃を流すと言うもの。
電撃とネットは陽向お手製の道具。
この短時間で作り上げたんだ、さすが天才発明家。
無事作戦は成功した。
集まる俺たち。
「上手くいったな!歩!
さすが、お前の作戦だ!」
「陽向こそ、この短時間で電撃ネットを作り上げるなんて、さすが天才発明家だな!」
「ちょっと!私も褒めてよ!!
私の囮があってこそでしょ?」
「お前はただ走ってただけだろ?」
「それを言ったらあんただって、ただ作っただけじゃない!」
「まぁまぁ、ありがとう、梨緒!」
「ううん!歩の作戦が良かったんだよ!」
「おい!相変わらず歩夢に甘いよな梨緒は!」
「うるさいわね!!歩はアンタみたいにぐちぐち言わないのよ!」
いつも通りの喧嘩は相変わらず面白い。
デスゲームという非日常に包まれた今、この空間だけは日常が流れている。
突如、開かれる教室の扉。
そこには、まんまと作戦にはめた鬼の姿。
さっきまでの日常は一気にデスゲームへと塗り替えられる。
「おいおい!倒したんじゃなかったのか!!?」
「やばいやばい!逃げろ!」
バラけるように逃げる俺たち。
できれば、逃げ切れる可能性が高い梨緒に行ってくれ!
そう願い後ろを振り向くと鬼の姿。
「くっそ!俺かよ!!」
直線では捕まると判断した俺は、近くの扉を開けて逃げ込む。
すぐに鬼も入ってくるだろう。
一か八か掃除ロッカーに入り込む。
ありきたりな隠れ場所だ。
そんなことは分かっているが、死の恐怖は冷静さを欠く。
ほうきがチクチクあたり背中が痒い。
今頃になって隠れ場所を後悔する。
扉の開く音。
入ってくる鬼の姿をロッカーの隙間から覗き込む。
もう、ここから出られない。
なるべくバレないように息を殺し、やり過ごす。
迫り来る影。
開けられたら終わる。
ポケットで揺れるスマホ。
おそらくメールの通知音。
くそ!あとにしてくれ!バレちまう。
すると、突如方向転換する鬼。
何かを捕捉したように方角を変える。
その先には人体模型。
俺が避難した場所は、どうやら理科室だったようだ。
人体模型に触れる鬼。
全く、マヌケにも程がある。
人間型であればなんでもいいのか?
消えない人体模型。
そりゃそうだろ。
かつてのターゲット忘れたように理科室を出る鬼。
それを確認すると、ロッカーから脱出。
痒くなった背中を掻きながらスマホを手に取る。
そこにはあいつらからのメールの通知。
———
梨緒:「歩!大丈夫?」
梨緒:「ねぇ、大丈夫!?」
歩:「なんとか無事」
梨緒:「良かった……(泣)」
陽向:「足遅いのに生還してるの草」
歩:「思いついた。作戦。」
梨緒:「さすが!歩」
陽向:「今度はしっかり倒せるんだろうな?」
歩:「多分。理科室集合」
梨緒:「分かった!すぐ向かうね!!」
陽向「りょ」
———
俺は携帯をそっと閉じポケットにしまう。
人体模型。
そして、鬼のあのマヌケな行動。
これは、使える……




