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プロローグ
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真っ青な空に雲がくっきりと白く立ち上がっていた。
少女は草原に寝転び、印象的な黒緑色の瞳で、しばらく空を眺めていたが、やがて立ち上がった。
肩までの漆黒の髪が頬の辺りでさらさらと揺れた。
「かなとこ雲。風も吹いてきた」
少女は独り言ちた。空気が冷えてきたので、間もなく雨か、もしかしたら雷雨が起こるかもしれない。
天に向かって伸びずに横に広がり始めた積乱雲を、かなとこ雲と呼ぶ。そのかなとこ雲が立つと天気が荒れる。
じっとりとした熱い空気を涼やかに変えてくれる夏のかなとこ雲が、少女は好きだった。雷はもっと好きだ。
「わくわくする!」
少女はひとり、草原を駆けだした。
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