リザルトタイム
「いやー死んだ死んだ!」
「いっそ清々しいまでに死にましたねー」
「あそこまで一方的だと文句を言う気も起きないよ!」
ここはデスマーチの拠点。ミトラ山脈奥地でぶっ殺されたサナダ達三人が、ガヤガヤと駄弁っています。
「人数多けりゃ行けると思ったんだけどなぁ」
「順番に食われて終わりでしたねぇ、人間は弱い」
ダンジョンにおいて人間は弱く、モンスターのオヤツでしかない。探索者たちにとっての常識で、殺されたことも話の種です。
「でもまぁ姿は見れたワケだし、収穫はあったんじゃない?」
「そうだな、お手柄だぜマリーさん」
「マリーで良いよ、あとサナダも呼び捨てにして」
「はーい」
「それはそうとして。そうだろー! お手柄だろー!」
マリーによると件のモンスターは「黒くて長い」「地面に潜って飛び出してくる」とのことです、この新しい情報にはハナマルも大喜び。
「潜る系のモンスターか、地面に潜れない人類とは相性が悪いな」
「人類と相性が良いモンスターなんていないでしょ」
「違いない」
人類は雑魚です、そしてモンスターは強いです。蟻と猛獣で相性を考えても仕方ないでしょう。
「でもマリーちゃんが見た感じ、潜る動作がスムーズ過ぎたんだよねぇ」
「というと?」
「なんというか、土を掻く様子が見れなかったんだよ。強いて言えばイルカが飛び出す感じが近いかな?」
「なるほどね」
動物が穴を掘って地面に潜るならば、掘り返された土が周りに飛び散るものです。しかし件のバケモノにはそんな様子が一切見受けられませんでした、実は異次元から襲って来てるんじゃないの?
そして気になる点はもう一つあります。
「それから一番謎なのが、木の上に居たのに食われたんですよね」
「地面から飛び出してきたんじゃない?」
「いやぁ流石にそれは無いですよ。下から襲うなら地面に近い下半身を持ってくでしょ」
「それは確かに」
見るからに雑魚な人間を狩るのに一々頭を狙うようなモンスターは居ません、テキトーに手頃なところを丸かじりするのが普通です。やっぱ異次元から飛び出してきてるんじゃないの?
しかし彼らは柔軟な発想に欠けているので、モンスターが異次元から任意の空間に飛び出してきているという可能性に思い至りませんでした。異世界に常識が通用するワケないというのに。
「そういえば、二人は発火スキル取れた?」
「うーんと……僕はダメですね、覚えられてません」
「マリーちゃんもダメだったよー」
メニュー機能からスキル一覧を確認する二人ですが、その中に発火の文字はありませんでした。まあ一回の挑戦でスキルを習得できるわけがないので、当然ですね。
「ハナマルさんはどうです?」
「俺はもう覚えてるんだけど……あっ、レベル2になってる」
「えっ、発火覚えた人ってあなたなんです?」
「そうだよー」
なんとハナマルの発火スキルがレベルアップしました、やはり森の奥地に突撃することがスキル経験値のトリガーになっているようですね。
「追加されたのは……「発火能力の強化」? どういうこと?」
「燃やしやすくなるとかじゃないです? シケモクも着火できるとか」
「あー、かもね」
レベルアップによって追加される能力は「速度アップ」や「動体視力強化」とかで、基本的に地味です。「二段ジャンプ」や「インベントリ」は5の倍数で習得できる、キリ番ボーナスの強い能力ですね。
「というかこれで【発火】の習得条件がハッキリしましたね、森の奥に行けばいいワケです」
「だな! 今日で一番の収穫だわ!」
「ついに誰でも炎魔法が習得できるようになったわけだね、私も胸が熱くなるよ」
「鍛えれば武器に炎を纏わせるとかも出来そうじゃないです? 夢が広がります」
エンチャントファイア、あるいは魔法剣の可能性に三人が胸を躍らせます。発火スキルを鍛えれば、出来るようになるかもしれません。
「そんじゃマスターに報告してくるわ! またなー!」そう言ったハナマルが拠点の奥に去って、二人も出口へと向かいます。今回の収穫によって、探索者たちは「炎」という文明の象徴を操れるようになりました。これでまた一歩、ダンジョン探索が前に進むこととなるでしょう。




