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地味スキル【荷物持ち】と【逃げ足】による、現代ダンジョン物拾い生活  作者: 自爆霊


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新たなる力

「…………んん、おはよー」


 二人が横になって2時間ほど後、マリーちゃんが先に目を覚ましました。目を覚ました彼女は自分の下敷きになっているサナダの肩を揺すって、一緒に起きるよう促しています。


「サナダ、起きて」

「んぅぇ……なにぃ…………」

「ほら、一緒に起きて。遊んで、ね?」

「うぐぐ……鈍痛……」

「Don't you?」


 【鈍痛】鈍い痛みのこと。

 どうやら体重50kgのタンパク質に2時間押しつぶされたことで、サナダ君は全身に痛みを覚えている様子。深刻なダメージで起き上がれなくなっています。

 しかしマリーは容赦しません。起き上がり、布団を引っ剥がし、ぐずるサナダをひょいっと抱き上げ、椅子の上に座らせました。彼女は【荷物持ち】で耐荷重が上がっていますから、子供一人くらいワケなく持ち上げられます。


「よしよし起きたね偉いね元気だねー」

「うんにゅぃ……身体がだるい……マリぃ……」

「はいはいしょうがないわねー」


 そう言ったマリーが隣に座るや否や、鈍痛に耐えかねたサナダがその肩へ思いっきりもたれかかりました。

 無論マリーはこうなることを分かって座りましたが、想定外の思いっきりな勢いは支えきれなかったようです。サナダの上半身が肩から滑り落ちて、その太腿にドサッと倒れ込んでしまいました。奇しくも膝枕の形です。


「わっ、メッチャ勢いよく落ちた」

「痛い……追い打ち……」

「そりゃ痛いよね、どうする? 死んでリセットする?」

「やだ……ぐうたらする……」


 そう言ってサナダは動かなくなりました。ふて寝です、マリーちゃんの体重に圧殺された分彼女の膝に圧力をかける(物理)つもりのようです。

 マリーちゃんも特に文句は無いようで、「しょうがないなぁ、まったくもう」とか言いながら、頭撫でたりお腹ぽんぽんしたりして遊んでいます。楽しそう。






「新しいベッドを買います」


 そうして15分ほど経った後、復活したサナダが藪から棒にそんなことを言い出しました。これにはマリーも困惑です。


「どうしたのさ、藪から棒に」

「さっき鈍痛に悩まされながら僕は考えたんだ、この原因はベッドではないかと。フカフカさのカケラもない、この最低限のベッドが原因ではないかと」


 そう言ったサナダはさっきまで寝ていたベッドを……土台に7枚ほど毛皮を敷いただけの、現代社会らしからぬ雑なベッドを指差したのです。


「いやまあ、家買ったときに余った金で用意した間に合せですし。そもそもロビーでガチのマットレスとか作れなかったですし」

「うん、確かにあの頃の米すら無いロビーではマットレスは手に入らなかった」


 ロビーの物資は基本的に、全て探索者が発見して持ち帰ったものです。二人がこの丸太小屋を買った頃のロビーではマトモなダンジョンも食料も見つからず、【始まりの平原】の草を練った草団子を食べて、皆が死に物狂いでダンジョン開拓をしていました。実は意外と美味しいんですよ草団子、最近はあんま売ってませんけど。

 しかし今はロビーでクッキーを好きなだけ買える時代、当時は不可能だったフカフカベッドも、もしかすると手に入るかもしれません。


「でもねマリー、今は自宅にコンロを買える時代だ。あの頃は不可能だった、二人で眠れるフカフカベッドも手に入るかもしれない」

「まあたしかに」

「そういうわけで善は急げだ! 今からマーケットでベッド探しに行くぞー!」

「おーー!!」


 こうして二人のフカフカベッド購入計画が幕を開けたのです。ところでお土産は?


「そうだサナダ、お土産ちょうだい」

「あっ、普通に忘れてた……」


 まあ昼寝したら忘れますよね、さもありなん。

 2時間もの間机の上に忘れ去られていた紙袋から、サナダが買ってきたお土産が姿を現しました。特徴的なY字型のフォルム、そして両端に張られたゴム質の紐、紛うことなきパチンコです。お金飛ばす方じゃないですよ?


「はいこれ、勇者の武器」

「これは…………パチンコ? なぜ勇者の武器?」

「ほら、緑の勇者が使ってるから」

「あー、なるほど」


 時オカの子供リンクも使っていた伝統的な「子供の飛び道具」、それがパチンコです。これならひ弱なマリーちゃんの腕力でも遠距離攻撃できること間違いなし、良いチョイスですね。


「弾はその辺の石で良いから経済的だし、弓よりは撃ちやすいでしょ。大きくなるまではこれで我慢しておくれ」

「ほほう、ほほーう」


 試しにマリーがパチンコを引いてみれば、グギュッ……とゴム紐が良い音を立てます。そして手を離せばパンッ!と快音が響き、打たれた空気が軽く震えました。


「おーっ…………これ、いいね……!」

「気に入った?」

「気に入った! 特に音が好き! 撃ってる感じがする!!」

「なら良かった」


 マリーちゃんご満悦です。お土産がハマってサナダもニッコリです。

 そうして新たな力を手にした二人は、ベッドを求めマーケットに繰り出して行きました。そういえば二人とも、これからも抱き合って寝ることがある想定なんですよね。これもう好きでしょ。

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