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ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります  作者: はぶさん


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第二百七十六話:極寒からの帰還。神話級の甲羅ダシで作る究極カニ鍋と、魔導温室建設計画

 マイナス50℃の死の世界、永久凍土の大陸での極寒サバイバル(という名の最高級海鮮・熟成肉の収穫ツアー)を終え、俺たちの乗る『魔導キャンピングカー(改・極地仕様)』は、無事にリーフ村の広場へと着陸した。


 プシューッ……という排気音と共にドアが開く。

 車外に一歩踏み出すと、秋の穏やかな風と、ふかふかとした土の匂いが鼻腔をくすぐった。

 凍てつく猛吹雪も、息が凍るような冷気も、世界を滅ぼす災厄の気配もない。

 鳥が囀り、村の子供たちが駆け回る、いつもの平和な農村の風景だ。


「はぁ~……。やっぱり、村の空気が一番だな」

「主よ、早く外に出ようぞ! 我の胃袋はまだカニを求めておる! 村の連中に我らの戦利品を見せびらかしてやるのだ!」


 俺が大きく伸びをしていると、広場にはすっかりキャンピングカーのエンジン音を聞きつけた村人たちが、農具を持ったまま集まってきていた。


「おーい、ルークス様が帰ってきたぞー!」

「今度はどこの世界から、何を持ち帰ってきたんだ!? また美味えもんなのか!?」


 目を輝かせ、パブロフの犬のようにヨダレを拭う村の男たちに向け、俺はアイテムボックスを全開にした。


「みんな、ただいま! 今回は大漁だぞ! 永久凍土を生き抜いた【雪中キャベツ】と、神話級のモンスター【氷河帝蟹エンペラー・クラブの極太脚肉】、ついでに【500年モノのマンモス熟成肉】だ!!」


 ドォォォォォンッ!!

 ズズズズズンッ!!


 俺が空間収納から取り出した戦利品が、広場に文字通り「山」となって積み上げられる。

 大木の幹ほどもある真っ赤に茹で上がった極太のカニ脚。エメラルドのように発光する巨大なキャベツ。そして、美しいルビー色の霜降りが輝くマンモス肉のブロック。

 村人たちのどよめきが、地鳴りのような歓声へと変わる。


「な、なんだこのデカいカニは!? 俺の背丈よりデカい脚じゃねえか!」

「キャベツが宝石みたいに光ってるわよ!? それにこのお肉、見ただけでとろけそう……!」

「さあマリアさん、村のみんなで宴会の準備だ! 今夜は**『究極のカニ鍋パーティー』**だぞ!」


 ◇


 夕暮れの広場に、村で一番大きな鉄鍋――魔物討伐の打ち上げで使う、大人十人がかりで運ぶような超特大の鍋が設置された。

 俺がまず鍋にぶち込んだのは、捨てずに持ち帰ってきた「氷河帝蟹の巨大な甲羅」と、関節部分の分厚い殻だ。

 これをたっぷりの水からじっくりと煮出すことで、神話級モンスターが蓄えていた途方もない魔力と、極上の旨味がスープへと溶け出していく。


 グツグツと煮立つにつれ、透明だったお湯は、次第に神々しいほどの**「黄金色」**へと変わっていった。


「うおお……なんだこの匂いは……」

「出汁の香りだけで、白飯が3杯食えそうだぞ……!」


 広場中を包み込む、暴力的で芳醇な磯の香り。カニ特有の甘く濃厚な匂いが、村全体をすっぽりと覆い尽くす。

 俺はその黄金のスープの中に、分厚く切り分けた純白のカニ身と、ざく切りにした雪中キャベツを惜しげもなく大量に投入していく。

 味付けは、ほんの少しの塩と酒だけ。素材が神話級なのだから、余計な調味料は邪魔になるだけだ。


「よし、あとは蓋をして少し蒸らすだけだ。……おっと、具材を入れすぎて蓋が浮き上がってきたな。何かちょうどいい重しは……」


 俺は周囲を見渡し、そしてアイテムボックスをごそごそと漁った。

 手に取ったのは、赤く明滅するように発光し、奇妙な古代文字がびっしりと刻まれた、重さ5キロほどの平べったい石板。

 永久凍土の地底湖で発見した、世界の命運を握る『大地の澱み』の次の目的地――【灼熱の大砂漠】を示す『古代のコア』だ。


「よし、これでぴったりだ。重さといい平たさといい、申し分ない」


 俺は、神話の時代から受け継がれてきたであろうその神聖な遺物を、**鍋の蓋の重し(文鎮代わり)**として無造作にドンッと乗せた。


「ル、ルークス君ンンンッ!?」


 ホットワインを飲みながら一息ついていたガリウス所長が、目玉をこぼれ落ちんばかりに見開いて駆け寄ってきた。


「せ、世界の命運を握る神話の遺物に、なんてことをしているんだー!! もし熱で壊れたり、文字が読めなくなったりしたらどうするつもりだ! 人類の損失だぞ!」

「大丈夫ですよ、所長。ただの石ですって。それに、絶対零度の地底湖にあった神話級のアイテムなら、ちょっと鍋の湯気に当てられたくらいじゃ壊れないでしょう? むしろ、古代の魔力が遠赤外線効果を発揮して、鍋が美味くなるかもしれませんよ」

「そういう問題ではないのだぁぁぁ! 学者としての私の心臓が止まる!」


 頭を抱えて泣き叫ぶ所長を尻目に、俺は腹時計タイマーを確認し、カニ鍋の蓋(と古代の石板)をパカッと開けた。


 モワァァァァァァァッ……!!


「完成だ! 『氷河帝蟹と雪中キャベツの究極黄金鍋』!!」


 黄金色のスープの中で、真っ赤に色づいたカニの身と、出汁をたっぷりと吸い込んでトロトロになった雪中キャベツが、照明の魔導具の光を受けて宝石のように光り輝いている。

 立ち昇る湯気は、もはや「暴力的な旨味の塊」だ。


「熱いから気をつけて食えよ! 汁まで残さず飲み干すんだぞ!」


 俺は村人たちが持ってきたお椀に、熱々の具材とスープをよそって回った。

 村長のハンスさんが、フーフーと息を吹きかけながら、黄金のスープを限界まで吸い込んだキャベツの芯を口に運ぶ。


 ……ハフッ。

 ジュワァァァァッ。


「んんんんんッ!?」


 ハンス村長の動きが、彫像のようにピタリと止まった。

 噛んだ瞬間、極寒を耐え抜き限界まで甘み(糖度)を蓄えた雪中キャベツの繊維から、**極上のカニの旨味が溶け込んだ黄金のスープ**が、滝のように溢れ出したのだ。

 フルーツのようなキャベツの強烈な甘み。そして、それを包み込む暴力的なまでの海鮮の深いコク。

 カニの身そのものを食べるのとは違う。野菜の甘みと海鮮の旨味が織りなす、究極の相乗効果。


「あ、甘い……! キャベツがとろける! なのに、噛むたびにカニの濃厚な旨味が口の中で大爆発を起こすぞ……!」

「こりゃダメだぁ……。美味すぎて、魂が抜けるぅ……」

「お、俺の分もおかわり! 最後はこのスープで雑炊を作るんだろ!? 俺はそれを食うまで絶対に死ねねえ!」


 広場のあちこちで、村人たちが次々と「美味すぎて昇天する……」と雪の残る地面の上に倒れ伏していく。

 フェンは鍋に頭を突っ込みそうな勢いでカニの殻ごとバリバリと咀嚼し、エレナ様は「お行儀が悪いとは分かっていますが、止まりませんわ!」とお椀に直接口をつけてスープを飲み干している。

 平和な、あまりにも平和な光景だ。

 世界の危機だの、大地の澱みだの、古代の呪いだの、そんなものはどうでもいい。

 俺が世界を回るのは、この美味い鍋を、美味い飯を、村のみんなで笑いながら囲むためなのだ。


 ◇


 大満足の宴が終わり、村人たちがそれぞれの家へと帰っていった深夜。

 俺は屋敷の自室で、天空の浮島から持ち帰った【天空トウモロコシ】の種と、永久凍土の【雪中キャベツ】の芯を机の上に並べていた。


「この極上の味……一度きりの収穫で終わらせるのは、農民として絶対にあり得ない」


 空の雷雲と希薄な大気がなければ育たないトウモロコシ。

 絶対零度の寒波がなければ、あの狂ったような甘みを引き出せないキャベツ。

 地上の、のどかなリーフ村の畑の環境では、決して育てることのできない神話級の作物たち。


 環境が合わないなら、どうするか。

 農民の答えは一つだ。**「環境そのものを作ればいい」**のだ。

 俺は、虚空をタップしてシステムウィンドウを開き、ポイントショップの検索欄に条件を打ち込んだ。

 今回の冒険(マンモスとカニの討伐)で稼いだポイントは膨大だ。強気に出る。


 【検索ワード:気象操作、環境再現、全天候、農業施設、最高級】


 ズラリと並ぶアイテムの中から、俺の目を釘付けにする究極の農業インフラを見つけ出した。


 【環境再現型・全天候魔導温室バイオーム・ハウス

 価格:1,000,000 pt

 説明:内部の温度、湿度、重力、マナ濃度、さらには「雷雲の発生」や「絶対零度の吹雪」まで、あらゆる気象条件を完全再現できる神話級のドーム型温室。

 空間拡張魔法により、外見の数十倍の内部面積を持ち、区画ごとに全く異なる環境を同時に設定可能。


「ひゃ、100万ポイント……!」


 俺は思わず息を呑んだ。

 これまでの武器や防具、キャンピングカーの改造費(80万pt)すらも軽く凌駕する、過去最高の価格設定。

 日本円の感覚なら、1億円規模の巨大プロジェクトだ。

 一瞬、貧乏農民の魂が「やめとけ、破産するぞ」と警鐘を鳴らした。


 だが、俺は迷わなかった。


 (高い。確かに目玉が飛び出るほど高いが……これは浪費じゃない。**『農業インフラへの投資』**だ! これさえあれば、世界中のあらゆる神話級の野菜を、季節も天候も無視してウチの村で量産できる。投資額なんて、極上の野菜を収穫して市場に(あるいは俺の胃袋に)還元すれば、すぐに元が取れる!)


 俺は、投資家としての冷徹な計算と、美味いものを食いたいという農民としての熱い欲望を胸に、購入ボタンを力強くタップした。


 チャチャチャチャチャリーンッッッ♪♪♪

 (100万ポイントが吹き飛ぶ、ファンファーレのような重厚かつ軽快な決済音)


 ――翌朝。


「お、おい! なんだあれは!?」

「またルークス様が、とんでもないものを生やしたぞ!」


 リーフ村の畑の横に、突如として巨大な半透明のドーム施設(直径50メートルは下らない)がドーンと出現し、早起きした村人たちが大パニックになっていた。


「よし、完璧だ。これで俺の農場は、陸・海・空・極寒のすべてを制覇したぞ」


 俺はパジャマ姿のまま縁側に立ち、朝日に輝く真新しい魔導温室を眺めながら、不敵に笑った。

 天空のトウモロコシも、極寒のキャベツも、これからは一年中食べ放題だ。


「次は、あの石板が示していた『灼熱の砂漠』か。……極上のスパイスを植えるスペースも、今のうちに温室に空けておかないとな」


 世界を救うついでに、最高の自給自足農場を作り上げる。

 最強ポイ活農民の食欲と野望は、とどまることを知らない。


【読者へのメッセージ】

第二百七十六話、いかがでしたでしょうか。

激闘の世界巡りから一息ついて、今回は村での「最高の日常回(カニ鍋パーティー)」でした。

カニの出汁を限界まで吸い込んだ、極寒の雪中キャベツ……想像しただけで涎が止まりません! 世界の危機を知らせる石板を「鍋の重し」にしてしまうルークスの俗っぽさも、本作の持ち味ですね。

そして、ついに飛び出した過去最高額「100万ポイント」の買い物!

あらゆる環境を再現できる魔導温室を手に入れたことで、ルークスの農業は神の領域へと足を踏み入れます。

次回からは、いよいよ極上のスパイスを求めて『灼熱の大砂漠編』がスタート!

「汗をかくのは嫌だ」と言うルークスが、砂漠の地でどんな斜め上のポイ活農業(と飯テロ)を見せてくれるのか。

次章も、ワクワクと空腹をお届けしますので、ぜひブックマークと評価をお願いします!


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