二章 第十七話 馬に蹴られて死んじまえ(シンディ視点)
「アリシア~準備できた~?」
「もうちょっと~」
今日はアリシアと一緒に初めての生徒会出席、別にドレスを着て出席するわけじゃないのにアリシアはドレッシングルームで準備中、制服なんだからそんなに準備することなんて無いと思うんだけど…
「おまたせ、いこっか」
う~ん、何処が変わったんだろ?それにしてもこれで男とか…女として自信無くしそうになる、良いとこのご令嬢としか言いようがない、いや実際伯爵家のご令嬢だしメルダルス公爵家の後ろ盾も出来たからかなり良いとこのご令嬢なんだけども
「じっと見てどうかした?私なにか変?」
変です!何処からどう見ても可憐な美少女なのに男!
「なんでもないよ」
気持ち切り替えなきゃ、初の生徒会にジルベリオ殿下、サイファス侯爵令息、ルーカス侯爵令息は~騎士科で鍛錬だから居ないんだっけ、殿下の警護ってそれで大丈夫なのかな?
王立学園は王立と付いているだけあって外も中も格式高いお母さんが亡くなったときには平民だったし自分が王立なんて冠の付いた学園に入るなんて夢にも思ってなかった、グレナド家に行くってなった時はお母様、お姉様と上手くやっていけるかとっても不安だった、幸いお母様もお姉様も優しくしてくれて、でもお母様は暫くの間お父様と口も聞かなかったっけ、でも私とお姉様が同い年ってことはお姉様がお腹の中に居た頃には…やめよう違うこと考えよう私は頭を振るってアリシアに話しかけた
「やっぱり緊張してる?」
「うん、シンディが居てくれて助かってる」
嬉しいこと言ってくれるじゃない!これは公爵令嬢としてきっちり男どもから守ってあげるんだから!
フンスと気合を入れていたら生徒会室に着いちゃった!
コンコン
「し、失礼します!シンディ・デルファ・グレナド、アリシア・サウストン入ります」
ばかぁ!あたしが緊張してどうするのよ、アリシアは、あ、笑ってる。アリシアの緊張がほぐれたのならプラスかマイナスかで言えばプラスね、私ってばポジティブ
ああ~でも、こんな時お姉様ならどうしたのかしら、歳は変わらないんだけど貫禄?落ち着いてて涼しげで公爵令嬢としての格の違いを見せつけられるわ、って落ち込んでる場合じゃない、お姉様って表と裏の差が凄いのよね。お姉様どうか私に力を~、思い切ってお姉様の真似をしてみよう、お姉様は身分が平等と言われている学園内でも公爵令嬢として凛とした態度を崩さなかったわ
生徒会室の奥の豪奢な机には椅子に腰掛けたジルベリオ殿下、その左隣にはサイファス侯爵令息、右隣には、あらあの方は
「よく来たな。生徒会と言っても今日は顔合わせが目的のようなもんだ互いの自己紹介と生徒会の仕事内容の説明くらいしかないから肩肘張らずに軽い気持ちでいいぞ」
ファリシア様のお兄様じゃなくて?おっと先ずは殿下にご挨拶を
「本日は殿下にお目もじ出来て…」
「硬い硬いこれから一年間一緒に活動するんだぞ、さっき言ったようにもっと気楽に行け、俺はライオス知ってると思うがフェリシアの兄貴だ、今日は一年の時に生徒会、ま今も二年生で生徒会やってるがな後輩への指導と殿下の護衛も兼ねている。ルーカスは騎士科の鍛錬で居ないからな」
殿下を前にしてもこの態度、流石はフェリシア様のお兄様、ごりごり…いえぐいぐい来るわ
「では…シンディ・デルファ・グレナドです。本日からアリシア嬢と一緒に頑張りますのでよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる
「ん~まだ硬いがこんなもんかもな」
ニッと豪快に笑顔で喋るライオス様の隣の殿下は…引きつった笑顔と汗が凄い…この距離でも駄目なの?3m位あると思うんだけど私は後ろに下がりアリシアの番
「え、えっと、アリシア・サウストンです。よろしくお願いします」
わかり易すぎる!殿下は打って変わって笑顔、超笑顔!!あの顔を見たらご令嬢方はいちころですわ、ここまで態度が違うと普通は屈辱なんでしょうけど、お姉様から
「シンディには嫌な思いをさせてしまうと思うけど、どうか殿下を責めないで、あれは私達のせいだから」
なんていつも私の前では元気いっぱいのお姉様からしおらしく言われたら聞かないわけにはいかないわ
どうしても理解不能なのは、あのお姉様達が殿下に消えないほどのトラウマを植え付けるくらい大暴れしたってことなのよね…
なんか殿下も申し訳無さそうにこっち見てるし、アリシアも申し訳無さそうだし、もしかしなくても私が空気悪くしてるわねこれ…ええと
サイファス様は、、、この場合様でいいのよね?いやでもこっちが公爵令嬢であちらが侯爵令息でこちらが位は上だけどジルベリオ殿下のお付きで、、、ううう~男子生徒とろくに話したことないから解らない、ここは無難にやり過ごしてお姉様にあとで確認しよう、うんそうしよう!
「先程ルーカス…様は鍛錬と言われてましたがいつもこの様な感じで代わりの人が来られるのですか?」
ライオス様に話を振って場を繋ぐ、話しやすいのはありがたい
「騎士科や魔法科の人間が殿下の護衛をするのは当たり前だからな、かといって鍛錬をしないわけにはいかない、予め学園に王家の人間が入学する際は騎士科、魔法科、王家の近衛から交代要員が選抜されるんだ、ルーカスは今日は来れなかったがいつも欠席といわけでもない、鍛錬の後に活動内容の詳細を確認して生徒会の活動に支障が出ないようにする」
それってかなり大変なんじゃないかしら?
「思ったことが顔に出てるぞ、こんなことで支障が出る様では将来お使えするなんて出来ないからな」
そう言ってまたニッと笑顔をみせてくる
「すいません、その、殿方のお仕事についてよく解ってなくて、大変なのでございますね」
この発言がサイファス様のご機嫌を損ねてしまったみたい
「姉同様、社交に現を抜かしておるのだろう、もう少し世間というものを学んだらどうだ」
何この人!あんたなんかにお姉様の何が理解るのよ!あったまきた!宰相の息子だからって人を下に見てない?
「お言葉ですがサイファス様、社交は令嬢にとって情報収集の場であり駆け引き次第では家がぐらつくことも有りましてよ、ただ笑顔を振りまいて踊っているだけだと思っているのなら足元を掬われ兼ねませんわ、サイファス様もその狭い視野を広げて学んでみてはいかがかしら?あら、私ったら失礼を宰相閣下のご令息ですもの言われるまでもございませんでしたわね」
お姉様を馬鹿にするやつは馬に蹴られて死んじまえ!
令嬢に言い返されると思ってなかったんでしょうね、一瞬何を言われたのかわからないようにぽかんとしてたけどみるみるうちに顔が赤くなって…宰相に向いてないんじゃないかしらこの人
パンパンとライオス様が手を叩く
「すごいな最初っから真正面からぶつかり会えるやつはそうそう居ないお前ら相性良いんじゃないか?」
どう考えたらそうなるのよ!
「「ありえません」」
キッと睨むと向こうもこっちを睨んでた
「息もピッタリ」
「「だれがこんな男(女)と」」
「冗談はさておき殿下をほったらかしてお前たちはなにをしているんだ」
急に真面目になるの反則でしょ
「サイファス、まずお前の態度が悪い。ご令嬢相手に最初から喧嘩腰では高が知れてると思われても仕方がないぞ」
ふん、ざまあないわ
「シンディ嬢も言い返すにしてもあれでは揉め事になるのは目に見えてる、姉君の様に軽くいなせるようになれ」
…ここでお姉様を出されたら言い返せない
殿下はサイファスの肩を叩き、アリシアは私の手を握る
「ごめんなさい、アリシアをサポートするのが私の役目だったのに…空気悪くしちゃって」
「ううん、そんな事ない。シンディがお姉様の事大好きだっていつも見てて理解るもの、今日はそれがちょっと出すぎちゃっただけよ」
にこっと笑って慰めてくれる。女神か!
「私の方からも謝罪させてくれ、私の部下が君の姉君を侮蔑するような事を言ったのが切っ掛けだ申し訳ない。今は学生同士だ謝罪を受け取ってくれると助かる」
ちょっと距離は遠いけど、身分を笠に着ずストレートに謝ってくださる殿下。神か!
「勿論でございます殿下、謝罪を受けます」
「それと生徒会室では殿下は止めてもらえると嬉しい」
「ですが、それは」
「学園内も規則では同じなのだが、良からぬ噂を立てる者もいて難しい、アリシア嬢、シンディ嬢、どうかお願いできないだろうか?」
殿下に言われている時点でこちらは断れないんだけど…殿下の気持ちも汲んであげたい
「でしたら、こちらは様付けでご容赦を、私達のことはシンディ、アリシアと呼んでいただければ、アリシアも構わないわよね」
「はい、構いません。ジルベリオ様、改めましてこれからどうぞよろしくお願いします」
そう言ってアリシアはカーテシーではなく握手を求めた殿下の気持ちを組んで『対等』の意思表示ね…私より全然立派でちょっと凹む
ぱちぱちとライオス様が拍手をして一件落…
「私は殿下とお呼びします」
ほんっと…この人大っ嫌い!絶対いつか凹ましてやる!私はそう心に誓った
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