49話 大砂百足を従える
大砂百足の群れとの戦いは終わった。
大砂百足は大小合わせて21匹。
群れのボスだった体長26mの奴が一番でかく、小さな奴は8m程度だ。
そのボスはリッターとレクターの元帝国北方騎士団所属の二人が仕留めていた。
この二人の戦闘力はこの軍団トップだな。
ビデス率いる元北方騎士団の部隊も2匹を仕留めている。
魔技を駆使して百足の体内に傷を負わせる、体接部の柔らかい部位を切断する、そうする事で仕留めたそうだ。
やはり魔技持ちの北方騎士団は個々の戦闘力が高い。
それは、これから相手をする北方騎士団第三軍も同様だろう。
大砂百足を仕留めたのは彼らだけだった。
他の部隊は抵抗するも蹂躙され大きな被害を出していた。
その百足を仕留めたのは腐肉喰い丸スライムの腐食ガスだ。
生物相手ならば最強なのではないだろうか。
我々は夜闇の中、ばらばらになった骨を拾い集め、丸スライムの食事を待ち、百足の内部からも食われた骸骨を集めた。
大抵の骸骨は朝までに復活したが、押し潰され粉砕された骸骨の復活にはもう一日必要なようだ。
◇
大砂百足の種族スキルは『砂もぐり』『岩砕き』『麻痺毒』だ。個人スキルはなかった。
これは元人間の骸骨と魔物との差だな。
俺は骸骨大砂百足20匹と腐肉大砂百足1匹、外見はほぼ一緒、の使役を試みた。
屍鼠とシーカーは行動目標を伝えれば、その内容をほぼ理解して偵察任務にあたる。
丸スライムは死体を置けば食事してくれるので、ほぼ命令を伝えたことはない。
せいぜい馬車に乗せたときに「おとなしく乗っていろ」と言った程度だ。
しかし、シーカーとの連携を見ていると、多少の自意識はあるようだ。
この百足達は、基本は食欲だ。
普段は土を食べて土中の栄養素を吸収する。一緒に魔力も吸収して魔物となったようだ。
地上の獲物を襲う事もよくあるようだ。やはり足音を聞き分けている。骸骨になったが大丈夫か?
生息域は主に砂中だが、乾いた岩場も問題ない。
その岩も食べる。体内で粉砕し排出される時は石や砂になる。
こいつらを放置すると地上が全て砂漠になるのか。
彼らとの意思疎通だが、言語ではなく感覚的なモノが伝わる。
進む、止まる、は分かるので進軍に問題ない。
外殻の上に骸骨を乗せてみたが、平地なら問題は無いが傾斜地になると鞍が必要だ。
外殻に穴を開けてロープを付けるのはどうだろう。そう考えると百足達から不安と嫌悪の感情が伝わってきたので、この案は無しとした。
今日一日は骸骨達の復活を待ち、明日の夜明けから進軍を再開するとしよう。
■■■
偵察をしていた鉄騎部隊員達4名は戸惑っていた。
到着後数刻は大砂百足が圧倒的な優勢だった。
あわよくば骸骨軍団を壊滅させるかも、とまで思ったのだ。
辺りが闇に包まれ、目視での観察が難しくなった頃に変化が起きた。
大砂百足の立てている音が徐々に消えて、戦闘音が無くなり周囲は静かになった。
静かな闇の中、かすかに聞こえるのは骸骨どもの骨の足音だけとなった。
大砂百足はどうやら砂の中に戻ったようだ。
そう考えて、彼らは見張りを交代しつつ眠りについた。
朝。
骸骨達も夜は横になって眠るのか、200体程が部隊の中央で横になっているのが見えた。
他の骸骨共は骸骨馬に跨り整列して佇んでいる。
何体かは歩いているのも見える。
それよりもだ。
大砂百足がそこにいる。
だが、暴れる事も無く、大人しくしている。
眠っているのか?
だが、それでは敵対していた骸骨どもがその傍らに居るのはおかしい。
では、大砂百足は既に倒されているのか?
つまり昨夜の闇の中の戦闘で倒された。
しかし、彼らが見ていた戦闘状況では骸骨共は圧倒されており全滅してもおかしくなかった。
骸骨は魔物だ。
闇の中でこそ、その真価を発揮する。
ならば、日没と共に力を増し、大砂百足を討伐したのか。
4人はその想像が事実であると考えた。
なぜなら、彼らが見ている骸骨達は4000体以上いる。
昨日見たときも4000体はいた。
大砂百足の群れと戦闘したにも関わらず、損害が無い。あったとしても軽微だ。
これは我が第三軍にとって明確な脅威だ。
大砂百足一匹を仕留めるのは一部隊10人でも手強い。
それも人員の中に炎系の魔技が撃てる者が複数いる必要がある。
それほどの相手を、この骸骨共は仕留めた。
4000体もいるとなれば、その実力は侮れないだろう。
本部への報告に戻ろうとした時、大砂百足が動きだした。
死んでいなかったのか。
動き出した大砂百足と骸骨共の再戦を予感して様子を伺うが、そのような動きはない。
骸骨共は整列したままだ。
そして、動き始めた大砂百足の前には幾人かの骸骨がいて、その中の一体は白マントの甲冑姿だ。
その骸骨が右手を振ると、何と大砂百足はその方向に進みだした。
一匹が進み、さらに一匹が続き、その後ろに次の大砂百足が続く。
大砂百足が行進している。
大砂百足は骸骨軍団の周囲をぐるりと一周して元の位置に戻った。
21匹の大砂百足が整列している。
なんという事だ。
今見た事に理由を付けるならば、つまり、骸骨共は倒した大砂百足を従えた事になる。
そんな話はこれまで聞いたことがない。
偵察部隊2名は急ぎ本部への報告に向かった。
残った2名は骸骨軍団の動きに追従するために見張りを続ける。




