魔石土を探して
『むーーーーん、こっちか~? それとも、あっちかあ~?』
ネズミ妖精はくんくんと鼻先をひくつかせ、魔石土の在処を探っていた。
思いのほか、真面目に探索を続けていた。
ただ、宙をひらひら飛んでいくネズミ妖精のあとをついていくのは一苦労だった。
道なき道を飛んでいくので、何度呼び戻したことか……。
『ははははは、人間、よーーくついてこーーい!!』
「おい、調子に乗っていると、痛い目に遭うからな」
『なんだ人間、びびっているのか? 我は最強! 恐るる存在など何もない!』
そう言ってどんどん加速していく。
「あいつ、まったく言うことを聞かない……!」
「本当に」
このままではネズミ妖精を見失ってしまう。
イグナート様に先に行くようお願いしようとした矢先、思いがけない事態となる。
大口を叩き、上機嫌かつ、絶好調な様子で飛んでいったネズミ妖精が真顔で戻ってきたのだ。
「おい、どうし――」
イグナート様は何か異変を察したようだ。
遅れて私も気付く。
森の奥から大柄な物体が四体、のっしのっしと歩いてきていた。
『あーははははは……なんか、強い魔力を感じて洞窟に飛び込んでいったら、アイス・ベアの巣だったみたいで』
信じがたいネズミ妖精の報告にイグナート様は言葉を返さず、腰に佩いていた剣を引き抜く。
イグナート様が雪原を蹴るのと、アイス・ベアがこちらに向かって突進してくるのは同時だった。
昼間のアイス・ベアは基本的に眠っていて、うっかり遭遇し向かってきても〝見せかけの突進〟と呼ばれる、威嚇目的の動きしか見せない。
けれども怒りを買っている場合は別である。
目にする存在すべてを敵と見なし、攻撃をしかけてくるという。
四体のアイス・ベアは明らかに怒っていた。
ネズミ妖精が睡眠の邪魔をしたからだろう。
イグナート様は剣を手に、アイス・ベアへ果敢に立ち向かっていく。
私も補助ができたらと思い、腕輪型だったメルヴ・スタッフを杖状にして構えた。
ネズミ妖精は大口を叩いていたというのに、私にしがみついて襲いくるアイス・ベアを前にガタガタ震えていた。
『あわわわ、あわわわわ……!』
仕方ないと思い、ネズミ妖精はベルトに吊している鞄に詰め込んでおく。
アイス・ベアは空気が震えるほどの咆哮をあげていた。
『ガアアアアアアアアアア!!!!』
鋭い爪でイグナート様を攻撃する。
別の一体は噛みつこうと口を大きく開いていた。
残りの二体は様子見をしているようだが、冷静に見えて目が血走っている。状況によってはすぐに襲いかかってくるだろう。
イグナート様はアイス・ベアの爪での攻撃をひらりと躱し、剣をくるりと旋回させる。
アイス・ベアの腕が飛んだ。
噛みつこうとしたアイス・ベアの口には、何か投げ込んでいた。
赤い石だったので、おそらく火魔石だろう。
距離を取って、何か呪文のようなものを発していた。
イグナート様は魔法が使えたのか。
なんて関心している場合ではない。
なんだか嫌な予感がしたので、急いで聖術を詠唱し、イグナート様の周囲に結界を展開させる。
結界が展開されるのと同時に、火魔石が爆発したようだ。
真っ白な雪原に、アイス・ベアの肉片と血が散っていく。
腕を切り落とされたアイス・ベアも、火魔石の爆発に飲み込まれ息絶えたようだ。
様子見をしていた残りの二体が動いた。
一体は地面を掻いて雪を辺りに散らした。
それにより視界が悪くなる。
もう一体がその隙に、イグナート様に多い被さるように襲いかかり――。
イグナート様も負けじと魔法を放ったようだ。
「炎よ、渦巻け――フレイム・トルネード!」
イグナート様を中心とし、炎の渦がアイス・ベアを巻き込んで立ち上る。
なんて美しい炎なのか。
神々しさすら感じてしまう。
炎に見とれているうちに、イグナート様が放った炎がアイス・ベアの命を奪ったようだ。
信じがたいことだが、イグナート様は単独で四体のアイス・ベアを相手に、見事勝利してしまった。




