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世界樹の世話役神官ですが、役立たずだと辺境に飛ばされました。開き直って辺境でスローライフをします。え、世界樹が枯れかけているって? そんなの知らんがな  作者: 江本マシメサ
第二章 世界樹を育ててみよう!

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これからについて

 話が逸れてしまったが、今後についても話し合う。


「職務についてだが、ひとまず世界樹の筆頭庭師としての扱いになるが、問題ないだろうか?」


 筆頭なんて恐れ多い、なんて言おうと思っていたが――。


「それとも筆頭神官がいいのか?」


 どちらにせよ筆頭と付くようだ。


「筆頭庭師か? それとも筆頭神官か? 他に望む肩書きがあればなんでも言うといい」

「いえ、その、庭師として頑張ります」


 別に部下がいるわけではなく、私とメルヴで世界樹を育てていくので、別に肩書きにこだわる必要はないのだ。


「あとは給金についてだが、ひと月、金貨十枚ほどでいいだろうか?」


 金額を聞いて、口に含んでいた紅茶を噴きだしそうになった。

 なんとかごくんと飲み込む。

 せっかく食事のマナーは問題なかったと褒められたばかりだったのに、その言葉を撤回されるところだった。


「どうした? 少ないのか?」

「いいえ、とんでもない。その、金貨十枚は貰いすぎだと思いまして」

「貰いすぎだと?」

「はい」

「神官時代は、どれくらいの給金を受け取っていたのだ?」

「給金という形はなく、欲しい品物があれば申請する、という流れでした」

「は? どういうことだ? まったく理解できないのだが。月給はいくらだった?」

「それが、存じておらず」


 イグナート様は眉間に深く寄っていた皺を、指先で揉んでいた。


「それで、毎月欲しい品とやらを頼んで受け取っていたのか?」

「いいえ、欲しい品は特になく……」


 服は支給されるし、食事も三食提供される、本は図書室で読み放題だし、化粧品や香水は世界樹の害になると思って使っていなかった。

 そもそも救貧院にいたころから、自分で自由に使えるお金がなかった。そのため、神官になっても必要と感じなかったのである。


「ただ、金貨十枚が貰いすぎだということは理解できます。以前、聞いたことがあるんです。大聖堂を守る聖騎士達の一ヶ月の給金が金貨一枚だと」


 聖騎士の仕事はとても大変だと聞いた。そんな聖騎士の十倍の働きなんて、私はとてもできない。

 ふと、イグナート様が額に手を当てて、ほんの少し震えているのがわかった。

 もしかして、私の金銭感覚のなさに呆れられてしまったのか。


「その、イグナート様、どうかなさいましたか?」

「神官長に、怒りを覚えている」

「どうしてでしょう?」

「ソフィヤ・トィルシナ、お前に正当な報酬を払わなかったからだ」


 イグナートは私を諭すように言う。

 毎月、給料が支払われないのはおかしなことである、と。


「私はかつて、大聖堂に身を置いていたからわかる。すべての聖職者は日々の勤務を労働と言わずに奉仕と言う。けれども実際には労働と変わらず、給金が一人一人きっちり支払われているのだ」

「そうだったのですね!」


 イグナート様の言うとおり、聖教会で働くことは労働と言わずに奉仕活動という。

 その表現に引っ張られて、給金が支払われなかったことを不思議に思っていなかったのだ。


「なんと言いますか、お恥ずかしい限りです」

「恥ずかしいのはお前に給金を払わなかった神官長だ」

「その、はい」

「これからは毎月きっちり、金貨十枚を受け取るように」

「いえ、あの、まずは試用期間として、銀貨一枚から始めていただきたいのですが」

「銀貨一枚だと!?」


 私にとって銀貨一枚も大金である。本当は半銀貨くらいから始めてほしかったものの、イグナート様の眼力に圧倒されて言えなかった。


「わかった。では、金貨五枚からにする」


 わかってない! ぜんぜんわかってない! そう言いたかったものの、領主であるイグナート様の言うことは絶対。

 そもそも、雇われる側が給金についてあれこれ言うべきではないのだろう。


「契約書は今晩のうちに作っておく」

「はい、ありがとうございます」


 あとは、衣食住について説明してくれるようだ。


「衣装はひとまず、この屋敷にある、かつての女主人が着ていた服を着用するように」


 使用人の服でもいいのだが、と言いかけたが、それらはイグナート様がお金を出して用意しなければならない物かもしれない。今、ある物を受け入れたほうがいいのだろう。


「食事については、私と同じ時間に、同じ物を食べるように」


 これについても、私の分を別に用意するより手間がかからないのだろう。


「住居については、空いている部屋を案内するから、掃除をして使うように」

「イグナート様のお屋敷に身を置くというのですか!?」

「そうだが」


 てっきり村で家を借りて暮らすものだと思っていた。

 まさか、このお屋敷に置いてもらえるなんて……。


「そのほうが、世界樹に何かあったとき、すぐに駆けつけられるだろう」

「そうですね」


 以上が待遇だという。

 私にはもったいないくらいの条件だった。

 本当にいいのかと思ったものの、決めたのはイグナート様である。

 私は受け入れる他ないのだろう。


「これから身を粉にして働きます」

「そんなに働かなくてもよい。仕事だけではなく、何事もほどほどにするようにしろ。いいか、忘れるなよ」

「は、はあ」


 これまでにない好待遇に、戸惑ってしまった。

 

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