〈1〉
強い女性、大好物なのです。
逞しく美しい女性像を目指します。
しばらくの間他の物語と並行して投稿いたしますので投稿間隔が開くかもしれませんがよろしくお願いします
ドサッ。
家令のベックは驚いて私の顔を見て、足元に横たわる汚れた男を見る。
「クロエ様。この者はどうされたのですか?」
「拾った」
「どこで?」
「ちょうどなっていたので採取していたら見つけたんだ。どうも生きているようなので、介抱してやってくれ」そう言って籠いっぱいのブルーベリーを見せる。
「…はぁ…。犬や猫じゃないんですから…身元は?」
「この状態でわかると思うか?」
「…ですよね。では、使用人部屋に…」
ベックが言い終わる前にクロエが被せるように言った。
「いや、客間に運んでくれ…」
ベックは何かを察したのか真面目な顔になって
「かしこまりました。医師も呼びましょう」と言った。
「よろしく頼む。私は厨房に行ってくる…」と
横たわる汚れた男とベックを置いてその場を離れた。
•••••••••••••••
ダイナモ王国の南東部、隣国との辺境にあるアルシェッタ辺境伯領。領主代理クロエ・アルシェッタは今朝早く目が覚めて、愛馬のウイングと共に運動を兼ねて朝駆けをして、ついでに旬を迎えたブルーベリーを摘んでいる時、うつ伏せに倒れている金髪の男を見つけた。
死んでいるのか?とそばによってみたら浅くだか息をしている。
着ている衣服は汚れ、ところどころ裂けている。
だが致命傷になるような傷はないようだ…
近寄って、仰向けにして、身元がわかるものはないか…と探した。
その時、男の意識が浮上して薄く目を開けた。
瞼から金色の瞳が姿を現した。しかしその瞳はすぐに瞼の後ろに姿を隠した。
クロエはその男の汚れた顔を目を見開いてしばらく見つめていた。
クロエにはその男に見覚えがあった。
4年前、両親と共に王都にデビュタントの夜会に行った。そしてデビュタントを終えたクロエは数件の夜会に招待されて両親と出席していた。
そのうちのひとつ、ドミトス公爵家の夜会に彼はいた。確か〈嫡男〉だと公爵は横にいる息子のことを紹介していたと記憶している。
上背がありガッチリした体付きにフロックコートがよく似合い、整った顔に黄金の髪と瞳。
この爵位にこの容姿(こんなに綺麗な男性が世の中にはいるんだ。ご令嬢が放っておくはずがない…私には関係ない)と思ったことは覚えている。
思った通り、挨拶が済めば公爵令息は綺麗に着飾ったお人形のようなご令嬢達に捕まっていた。
それ以外は関心がなかったので、名前は覚えていない。自己紹介されたのかも覚えていなかった。
そしてその日のことが記憶の彼方に追いやられていたのに、倒れている男の瞳を見た瞬間、鮮明に思い出してしまった。
王都からは馬で駆けても一週間はかかる。
なぜこんな辺境の地に?なぜこんなボロボロに?
疑問はあったけど何かが起きたことは間違いない。
クロエは男をなんとかウイングに乗せて城に帰ることにした。
なんとかでもクロエが男を担ぎあげることができるのは日々の鍛錬の成果であった。
辺境の地。隣国とは睨みあっていてる。時々諍いが起こりクロエ自身も自らウイングに跨り小隊を率いる事もある。
両親が亡くなってからは、亡き父に代わり辺境伯領を治めていた。
しかし、この国には男子のみが爵位の継承権を持つ。救済措置として、遺された女性は〈代理〉として次代を継ぐ男子が決まるまでその領地の領主の権利を預かることができる。
クロエは独身。婚約者もいない。親戚から養子を迎えるか、急いで結婚して婿養子を迎えるしか方法はなかった。
辺境の地。いくら戦争に発展しないからと言っても、国境沿いでは度々諍いが起きる。そんな地に婿に来たいと言う殊勝な者はいなかった。
そして、この男。記憶ではかなりガッチリした騎士のような体型だったと記憶しているが、異常に軽かった。
「まずは医師に診せなければな…」とクロエは城に急いだ。
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「クロエ様、先程医師が参りまして今診察をしております」
「そうか」クロエはボウルに入ったイチゴをつまみながら答えた。
「お食事はちゃんとご用意しておりますよ。ダイニングでどうぞ…」呆れ気味に言われもうひとつイチゴをつまんで
「ふふ、ではダイニングでいただこう」と足をダイニングに向けた。
途中。「大きな怪我はあったか?」クロエの質問に
「いえ、特には…背中に古傷がかなりございました」
「背中に?」
「おそらく…ムチの跡かと思われます」
「…そうか。他には?」
「着替えをさせる時に確認しただけですので、他にもあるかもしれません」
「そうか…」
「クロエ様」
「うん?」
「あの者は何者ですか?」ベックが鋭い目つきで聞いてきた。元とはいえ軍人だった彼の目は誤魔化しは許さないと言っている。
「フッ」とクロエは少し笑って
「王都で会ったような気がする。他人の空似かもしれない。まずは意識が戻ってからだな…」
「さようでございますか。承知いたしました」とベックはそれ以上は言わなかった。
朝食を済ませた頃、診察が終わったと使用人から連絡がきた。
客間に向かい、医師の見立てを聞く。
「処置が急がれる傷はありませんでした。背中の古傷はおそらく1年か1年半ほど前のものでしょう。治癒はしてますが、跡は残るでしょう。
発熱が始まっていますので予断は許されませんが、内臓に損傷がなければ、2日か3日のうちに熱も下がると思います。水分補給は問題なさそうなのでこまめに行ってください。途中血を吐くようでしたら城に待機していますのでお呼びください。明日、また参ります」そう言って医師は下がっていった。




