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第25話 一緒に作りましょう

『お父さん、お母さん。花屋の店員として夢が叶ったというのに、職務中に事故に巻き込まれて先立つ不孝をお許しください。

 現在私はクローン体(訳あり)という特殊な転生を果たし伯爵令嬢から、冬の妖精王の花嫁になりました。今はノックマ丘にある屋敷のアルバート様とモフモフのノワールと、領土復興に尽力して――いるはずです!

 基本的にサツマイモとジャガイモを美味しくする研究と、畑仕事、それから――。

 私が春の権能を覚醒させず、アルバート様も死なせないで、森を守る方法を考えることです。やってやります!』


 途中から日記ではなく前世の両親に対しての手紙っぽい感じになってしまったが、元々はアルバート様の力になれないか考えて筆をとったのだ。妖精への転属や寿命については近々、妖精王オベロンと会う機会を作ってくれるらしいので調整待ちだ。

 次に森の毒や呪いの対処だが、アルバート様の権能を使って雪の浄化を続けている。それとは別で海の妖精たちから貝殻や塩を分けて貰えるよう手配中だ。


(貝殻は肥料にして土壌の状態を改善するために、塩は……前世で呪いに効果があると聞いたような……。ダメ元で試してみたい。そもそもハッシュドポテトを作るためにも塩は必要なのよね! いやその塩はあるか)

「サティ、海の妖精(セイレーン)から荷物が届いたが……」

「早っ!?」


 アルバート様が突然部屋に現れたので、驚いたがその内容にもビックリした。昨日の今日で荷物が届くとは思っていなかった。


「貝殻はコボルドに頼んで粉状にすり潰せばいいのか?」

「はい! 貝殻肥料はカルシウムが豊富に含まれているので、よい土壌を作るのに良いんですよ! あ、でも妖精の国ではこの法則が適用するかはまだ分かりませんが……」

「貝殻をこの土地に卸した段階で、大地が歓喜する声が聞こえてきた。これは当たりと思って良いと思う」

「はい!」


 アルバート様の言葉はぶっきらぼうだけれど、気遣ってくれることが伝わってきて口元が緩む。塩も届いたと言うことなので、アルバート様に美味しいハッシュドポテトを食べて貰おうと決意する。


「塩も届いたのなら、今からオヤツにハッシュドポテトを作ろうと思います!」

「……またサティが俺――私に料理を作ってくれるのか?」

「はい!」


 表情はまだ少し固いものの、期待の眼差しを向けてくれるのが嬉しい。せっかくなので「作るのを見ますか? それとも一緒に料理を作ります?」と気まぐれに聞いてみた。

 そしたらアルバート様は片手で顔を覆って「二人での共同作業……」と、呟き出す。


(妖精特有の照れ?)


 時々アルバート様は可愛いことをなさる。尻尾とか耳が見えるのは幻覚かもしれないが。


「サティが良いというのなら……」

「はい! 一緒に作りましょう! 今度こそアルバート様に美味しいって思わせてみせます」

「それは楽しみだ」



 ***



 そんなこんなで始めたハッシュドポテト作り。

 ジャガイモに近い《パタィタ》を使って、まずは皮を剥いてから蒸籠で蒸かす。この蒸籠は私が「こんな感じ」というアバウトな説明をしたことで、シルエさんが用意してくれたのだ。


 アルバート様には蒸かした《パタィタ》を潰す仕事を任せた。オリーブオイルの準備も完璧だし、塩と胡椒とバジルなどの香辛料を用意しつつそれらを細かく切ってジャガイモと混ぜる。ちょっとだけ水も入れて一口サイズにまとめる。


「皮を剥いて、蒸して、潰して、形を作り直して、揚げる……。一つの料理にここまでの工程を踏むのだな」

「そうすることで美味しくなるのです」

「なるほど。しかし、サティと何かをするのは――楽しいな」

「私も念願のハッシュドポテトをアルバート様と一緒に作れて嬉しいです!」


 じゅうじゅうと揚げて、少し色づくまで待つ。


(そろそろできあがりかなぁ~)


 ふと屋敷の中にいる家事妖精(ブラウニー)たちも興味深げに見ているが、以前よりも数が増えたような気がしなくもない。

 全長五十センチの幼女たちがメイド服を着こなし、屋敷の家事全般をこなしている。メイド服もそうだが、幼女たちはみな愛らしくお人形さんのよう。癒される。


「それにしても家事妖精(ブラウニー)が増えましたね。これもアルバート様のいう傾向なのですか?」

家事妖精(ブラウニー)が姿を見せるようになったのは、少なくともこの屋敷内の(ゆが)みが消えたからだ」

「そうなのですか? 確かにお屋敷は以前よりもピカピカになった気がしますが」

「君が嫁いでくれたからな」


 フッ、と時々驚くほど優しい顔をするのは反則だと思う。そのギャップにやられそうになるのを耐えて、ハッシュドポテトを皿に盛り付ける。キッチンペーパーが良い感じで油を吸い取ってくれたようだ。


「その役立っているのなら嬉しいです。……この調子で森を侵食している毒と呪いを解決できればいのですが……実際に森に行くのは駄目なのですか?」

「……確かに直視することで何らかの打開策ができるかもしれない」

「なら」

「だが、その前にサティ。君の体の状態を確認するのが先だ」

「あ」


 すっかり忘れていたが、アルバート様が慎重になっているのは私のことを考えてくれていたからだと気付く。


「君が手伝ってくれるのは嬉しいけれど、君も万全とは言い難い状態なのだから一度オベロンたちに看て貰うべきだ。幸いにも三日後にこの国でパーティーが開かれる。そこで君を紹介しつつ、相談しようと思う」

「三日後!? ……そしてパーティー!?」

「ああ」



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