リリアーナ7
しばらく抱き合っていたけれど、ジークは泣き止んでもわたしから離れようとしなかった。何度もジークの顔を拭いたハンカチは、もうびちゃびちゃに濡れている。
わたしがお父様に婚約継続を願い出ると伝えても、ジークはわたしの側を離れない。ずっとわたしの手を握っている…指をからませて、手を繋いだままだった。
「今日はもう帰って?明日また来て?ね?」
ジークは、本当に明日また来ていいのか。門の中に入れてくれるのか。わたしが会ってくれるのかをしつこいくらいに確認し、ようやく帰って行った。
帰る前に、アランに必死になってお礼と謝罪をしていた。わたしへのとりなしと、一目見るだけという約束を破ってしまったこと…。泣きながら頭を下げるジークに、アランは困り顔になっていた。
予想はしていたが、やはりアランがジークを連れてきたのだと聞いた。
ぐちゃぐちゃになったジークの顔に、アランは若干引いていたけど、面白いのでそのままにしておいた。新しいハンカチで彼の顔を拭いてあげると、名残惜しそうにジークは帰って行った。
父の帰宅を待って、ジークとの婚約を継続したいと伝えると、父はただ抱き締めて頭をなでてくれた。
その日、久しぶりにぐっすり眠れた。夢に出てきたジークは、ずっとわたしの手を握っている。
二人で花冠を作ったあの日のことも夢に見る。
あの日、一緒に出かけたわたしとジークは、教会で結婚式を見た。花冠を被って、真っ白なドレスを来た花嫁が、幸せそうに微笑んで新郎と歩いていた。
それから数日後、ジークがわたしに花冠を作ってくれた。「リリアーナ、いつかぼくの花嫁になってください」そう照れたように微笑んで、わたしに花冠を被せてくれた。決して上手にできたものではなかったけれど、一生懸命練習したのだと、あとから彼の侍女がこっそり教えてくれた。わたしも、ジークに花冠を作って被せた。「もちろん、喜んで。ジークハルト、ずっとわたしと一緒にいてください」二人でお互いを見つめて笑い合う。愛しい時間の、大切な思い出…。
あれからも、時々ジークは花冠を作ってわたしに被せてくれた。微笑むわたしを、愛しそうに見つめるジークの瞳が大好きだった。
ジークと繋いだ手を見つめ、彼に視線を戻すと優しく微笑んでいた。彼の唇が言葉を紡ぐ。
「あいしてる」
陽だまりの中にいるように、その言葉が暖かくわたしを包む。穏やかな眠りの中で幸せな夢を見た。




