閑話:王子妃達の戯れ 2
お読みくださりありがとうございます。
王子妃達の戯れ 1の続きです。
女神が話し掛けてきた。
「はじめまして、私はシュタルク帝国、リム大元帥の娘フランチェスカと申します。アレクシス王子妃ソフィア様と、エドワード王子妃リナ様ですね?これから宜しくお願い致します。」
その挨拶に答え、ソフィアに続いてリナも挨拶を交わす。
少しばかり彼女に興味を持ち、立ち話をしてみた。
大人びて見えたので、同い年くらいかと思っていたが、5歳も年下であることが判り驚く。
体の凹凸の成長度合いは、お国柄なのだそうだが、身長もその年齢の女性にしては、とても高い。
「ところで、お二人は先程の対決に立ち会われていなかったようですけれど、勝負の行方はお聞きになりましたか?」
その問いに、ソフィアと私は何の話であろうと、顔を見合せた。
「あの、それは、どのような対決で、どのような結果が出たのでしょうか?」
妙な胸騒ぎが湧き、恐る恐るリナはフランチェスカに聞いた。
すると、とんでもないことが、本人の知らぬ間に決定されていたと知らされたのである。
それは、父さまと国王陛下が対決するテンペストの勝敗結果により、私とエドワードの今後の行く末が決まると言う、私達にとっては重要な出来事であった。
そして結果は、父さまが勝利し、父さまの出した案が採用されることとなったと、フランチェスカから教えられたのだ。
その案の内容は、エドワード殿下は直ぐに臣下となり、ハートフィル侯爵領に近い王家管轄領が陛下により分配されるので、そこへ移り住むと言うものであった。
それを聞いていたソフィアが、怒りの声を上げる。
「あり得ないわ!そんなの絶対に許さない。まだまだ、私はリナと一緒にここで過ごしたいのよ!そうか、今日、私達が王妃様のお茶会へ無理矢理駆り出されたのは、その対決の為だったのね。邪魔が入らないようにと追い出されたのだわ…知っていたら全力で止めるはずだから。このこと、アレクも知っていたわね…。」
ソフィアが今生で見せたことのないくらいの怒りの表情と声を、周りを気にせずに出してしまっている。
これは、相当ヤバい!?
隣でソフィアが大激怒してくれてる所為か、逆に自分は冷静である。
しかし、流石にここまで両親に勝手をされるのは、私も面白くない……。
「私、出来ればもう少し、こちらでソフィーと過ごしたい。妊娠しているせいか、不安になることが多いから、ソフィーが居てくれると安心するの。ソフィー、協力しましょう!」
2人は目を合わせ、強く頷き合った。
「そういう事ならば、私も協力するわ。私は女性の味方よ。」
フランチェスカもこちらに居る間、情報提供の面で協力してくれることとなった。
リナはキョロキョロと、周りを見回すと、柱の陰に目を凝らす。
「カイル、居るんでしょ。出てきなさい。」
そう叫んだ。
すると、柱の影から、カイルが現れる。
ソフィアが驚いていた。
「なぜ、モーリス隊長がこちらに?いつもならばジョージの所でしょう?」
そう、ソフィアが問いかける。
ソフィアの問いには答えず。
「なんで分かった?」
と、カイルがリナに問う。
「アレクシス殿下の事だから、大切な人の所に信用があって、腕が立つ者を寄こすと思ったの。今は、ジョージ王子が狙われやすい時期だから、普段はそっちへ行っているのでしょ?まあ、私の警護の時は、父さまとアレクシス殿下の貸しを返すという事で、父さまたっての願いで、カイルが私の警護をしていたのだろうけど。」
いつも口を挟まずにボーっとしているので、まさかそんな考えを述べるだなんて、唯のマヌケ令嬢ではなかったのだなと意外であるといった顔で、リナを見るカイル。
リナはその目を侮辱と捉え、カイルを睨みつけた。
「今日、ジョージ王子の所にカイルが居ないのは、ソフィーが外部の者と接触するお茶会が模様されるのと、エドワード殿下の所からキーランを借りているから、カイルをこちらに寄こしても問題ないとアレクシス殿下が判断したのではないかしら?今日は、朝から私の傍にキーランの気配はないの。テッドは近衛騎士数名と第二騎士団副隊長のフィリップとガイムの小隊を連れて、王家管轄領地へ出てるから、無いはずないのに。キーランをテッドが貸すということは、キーラン以外で私の監視をするのに、テッドにも信用のおける人物で気配を私に全く掴ませない者が、ずばりカイルが居ると踏んだわけよー。」
ソフィアが小さく拍手する。
「私もなかなかやるでしょ。」
得意げにリナは笑い、両手を腰に当て胸を張る。
ソフィアがカイルへ近づき、
「極稀になんだけど、リナもハートフィル侯爵家の一員だったって思い出させるような鋭い意見を言う時があるのよ。」
と、小声で耳打ちした。
その言葉に、確かにあると納得しながら、カイルが話す。
「ははっ、凄いな。それにリナ、お前、キーラン殿の気配が分かるのか?」
「昔は気にも留めなかったから、気づけなかったんだけど、テッドに直接紹介されてからは、気づくようになってしまったの……テッドには秘密にしてね。キーランに申し訳ないから。」
「あー、善処する。」
カイルが報告するつもりだと分かり、ふくれっ面になるリナ。
「それで、俺を呼んでどうする気なんだ?」
カイルがリナを見る。
その視線にリナは答える。
「どうするって、この前のカイルに陶酔しきっていた侍女の件で、私達に借りがあるでしょ。だからその借りを返してもらうのよ。」
「そうね、私達が動かなかったら、あなたは濡れ衣きせられて、今頃あの娘と結婚させられていたでしょうね。近衛も辞めさせられて、この場にもいなかったはずよ。さあ、どうする?協力する?」
フフフっと笑って話すソフィア。
「分かったよ。んで、俺は何をすればいいんだ?」
仕方ないといった口ぶりで返事をするカイル。
「あらあら、アレクの近衛騎士なのに物分かりが良いこと。幼馴染さまさまかしら?そうだわ、これはどうかしら?先程の対決の話を聞いてしまった私は、ショックを受けてしまうの。心の支えのリナを失う不安感を覚え、産後も相まって気を病んでしまうわ。それをアレクに伝えるのがあなたの最初の役目よ。フフッ、もうすぐ戴冠式。さて、アレクはどうするかしら?」
おっとりとした口調で、カイルへ命令するソフィア。
「今からソフィーが気絶したフリをして、私が悲鳴を上げるから、騎士達が駆け付けたら、カイルは現れて急いでアレクシス殿下に伝えに行って、あとは私とソフィーに任せてくれればいいから。その後は随時、指示を出すわ。あ~、こういうの久しぶりね。楽しみ!」
「そうね、アレクのアタックを回避する時以来だから、かなり久しぶりね。ワクワクするわ。」
リナは嬉しそうにソフィアの両手を取り、左右に揺らしている。
ハシャグ2人を横目に、カイルは深く溜息をつく。
このあと、計画は実行され、領地までの移動を考慮した出産ギリギリの時期まで、リナはソフィアと王城で過ごすことになる。
その間、ソフィアがアレクシス殿下の不甲斐ない対応の所為で、床に臥せているといった噂によりアレクシス殿下の許へ、ソフィアの妹が鬼の形相で離縁書を片手に乗り込んできたり、戴冠式の準備をする際にアレクシス殿下とソフィアの激しい駆け引きの攻防が繰り広げられたり、陛下にテンペストで挑んだリナが奇跡的に勝利し滞在をさらに伸ばしてもらったり、滞在中のフランチェスカが思わぬ相手を見初め、そのいざこざで庭園の迷路が切り倒され中央に真っすぐ道が出来てしまったりするのだが、それは少しばかり長くなるので機会があれば、お茶を飲みながらお話しましょう。
***
本日は晴天なり。
リナがフォード公爵領で娘を出産し、あっという間に一年半が過ぎた。
そんなある日の王妃様主催のお茶会でのこと。
「リナ、やっときたわね。王都へおかえりなさい。また楽しい日々の始まりね!」
「ただいま、ソフィー。また夫を困らせるつもりなのかしら?協力するわよ。」
フフフッと笑いあい、リナはお菓子をつまみ、ソフィアは紅茶を口にした。
こうして、王都のタウンハウスへ越してきたリナは、またソフィアと楽しい日々を過ごすのである。
--- END---
「リナ、娘の婚約者はもう決めたの?」
「まだよ。ジョージ殿下は?」
「まだよ。クスッ、これからが楽しみね。」
「フフッ、ええそうね。」
これにて、“兄さん、まずいことになりました”
リナ&エドワード編は完結です。
未消化がチラホラと……。
これまで辛抱強く読んでくださりました皆々様、ありがとうございました。
リナの娘の話【女神の帰還】 や、脇役たちのスピンオフもいくつか投稿してますので、 機会がありましたら御立ち寄りください。




