アルビオレの杜撰な計画 ③
今回でアルビオレ視点最後です。疲れました。
はしょってる所も有りますが……許して?
今回一発書きなので、変なところは後で直す……カモ。
食堂に着いてしまった。丁度近くを歩いていたメイドに、少女……ツェツィーリアが食堂の中に居るか確認させると、まだ来ていない事が判明した。
直ぐに来るだろうと、腹は空いていたが待つ事にしたのだが、待てど暮らせどやって来ない………。
空腹でイライラが爆発しそうになった時、ようやく食堂の扉が開いてツェツィーリアが入ってくる。
そして俺を見て固まった。
俺が食堂に辿り着くまでに考えた計画では、食堂に ツェツィーリアが入ってきたら、まず最初に式でのキスを謝ろうと計画していたのだが、余りの空腹につい口が滑った。
「おいっ!何をボケッとしているんだ?早く席に着け。お前が遅いから食事が始められんのだぞ?」
はっ………確か俺は謝ろうとしてたんじゃ無かっただろうか?イライラしていて、つい……。俺が内心焦って居ると、ツェツィーリアから惚けた質問が投げ掛けられる。
「アルビオレ様は何故ここにいらっしゃるのですか?」
何だその質問は?にしても、名前を呼ばれるのは少し照れるな。俺は口許がニヤけ無いように我慢しながら答えた。
「何故も何も…ここは俺の邸だが?」
あっ!そうでしたね?って顔だな……全部表情に出てしまっているな。こんなに分かりやすいのに、何故あの時は分からなかったのか不思議だな。
「ふぅ…いいから、早く席に着け」
そう伝えると慌てて席に着いた。その余りの勢いの良さに、ツェツィーリアの椅子を引いてやるのを失念してしまった。マオカが代わりに引いてくれていた。流石にボコボコ辞めて行く使用人の中でも、我関せずの体で冷静に仕事をこなしていただけはあるな。
「ではやっと始められるな。リグレット!」
「かしこまりました。坊っちゃま……」
うわっ!止めてくれっ!ツェツィーリアの前で坊っちゃまはっ!
慌ててリグレットに坊っちゃま呼びを訂正させると、俺の事を旦那様と呼ぶ事にすると言われた。まあ、坊っちゃまと呼ばれなければ良いだろう。
マオカにツェツィーリアが料理のメインを聞いていたが、何故俺に聞かない?ムカッとしながら、喋るとろくなことが無いまた余計なことを言ってしまう。
「……それはリグレットが料理を持ってきたら分かる。それより最初に言っておくが、結婚はした…だが俺には惚れた女が居る。お前とは公式な場所以外では、一緒には居ないからそのつもりで居るんだな?今日だけ特別に一緒に食事をすることをラハグローと約束してしまったから、今日だけだからなっ!」
ぐはっ!俺のこの舌をどうにかしてくれっ!謝りたいのに、どんどん謝れる状況じゃ無くなっていく……主に自分のせいで。
しかしそんな事を俺が考えているとは知らないツェツィーリアが、嬉しそうに笑いながら、
「ええ、私は一向に構いません。それにルルさんがアルビオレ様をきっと待っていらっしゃいます……よ……」
と言って来たのだ。一瞬動揺して思考か停止してしまった。
なっ…何故ルルの名前を知っているんだ?そして俺は何に動揺しているのだろうか?落ち着け、俺!
「何故ルルの…俺の女の名を知っている?」
そう聞くと、ツェツィーリアは黙り混んでしまう。まさか既にどこかで出会ったのか?どうなんだ?
俺が返答を待っているとマオカが、自分がツェツィーリアにルルの事を伝えたと言って来た。
何故?と聞いたら、まあ当たり前な答えが返ってきた。そうだよな…ルルは自由奔放だ…流石にツェツィーリアに無理矢理会いに来たりは、しないだろうが偶然会うこともあり得なくは無い。俺は失念していた。
マオカが大変申し訳御座いませんと、俺に言ったが苦労を掛けてるのは俺だし、申し訳無いのは俺の方だな、うん。
マオカの独断を許し、こちらも謝っているとリグレットが、料理を持ってきたのでやっと食事が始まるのであった。
***
そして食事が始まったのだが、俺はずっとツェツィーリアを凝視してしまっていた。
何故ならば彼女は物凄い恍惚とした表情で、しかもこれまた凄いスピードで料理を平らげて行ったのだ。
更にお代わりまでする始末。
何て幸せそうな顔で食事をするんだろうか?
俺がメインの肉料理に辿り着く頃には、ツェツィーリアは既に食べ終わっていた。下品な食べ方では無かったのだが、速すぎだろ?
料理を食べ終わった途端に彼女はもう部屋に戻るそうだ。挨拶をしてきたので、最後に後で部屋に向かうことを伝えると、「わかりました…アルビオレ様のお好きになさって下さって構いません」と言ってきやがった……。
キスだけで固まっていたのに、大丈夫なのだろうか?まあ、好きにしろと言うのだから別に問題は無いのだろうが………。
俺は料理を食べ終わり浴場へ向かうために食堂を出ると、扉の前にルルの弟のノヴァが居た。
もしやルルに何かあったのかと慌てるとそうでは無く、ルルからの伝言があると言ってきた。
ルルは今夜離れに戻って居るそうだ。ラハグローに俺に伝えてくれと言ったのだが、多分伝えては下さらないと思ったから、直接伝えに来たそうだ………素晴らしい勘だな、まず間違い無くラハグローは俺には伝え無いだろうからな。
ノヴァにルルを頼むと言うと、少し悲しそうな顔をして戻って行った。
***
身体も浴場で綺麗にしてきたので、夫婦の寝室へ向かい扉をノックするが応答が無い。
怪訝に思いながらも扉を開けると、室内は暗闇だった。
まさか……寝てないよな?と思いベッドにゆっくりと近付くと、人が寝ているのは分かった。
だが、暗い。明かりは何処かと探したが見つからん!面倒なのでツェツィーリアを起こすことにする。
最初は軽く揺すってみるが、全く反応が無い。次に優しく叩いてみる…やはり無反応だ。更に強く叩くと、やっと反応を見せた。
「メヨーヨ……早くしなさい……私は眠いのよ?」
誰かと勘違いしている様だが、メヨーヨとは何者だっ?メヨーヨなる人物が気になって、俺の抵抗が弱まると同時に、ツェツィーリアが思いっきり俺の頭を引っ張った。
「むぎゅっ」
何やら顔に柔らかいものが当たっている?………どうやら彼女の……胸元に…抱えられて居るようだ。
なっ…何をするんだっ!い…息もしにくいぞっ!離してほしくて必死に抵抗するが、気が動転していて上手く出来ない。
辺りに抵抗したので、彼女が俺をやっと離してくれる。
「ぶはっ……ゴホゴホッ………な…何を…ゴホゴホッ…するん…だっ!」
死ぬかと思ったぞ?俺が咳き込んでいたら、何を考えたのかツェツィーリアがいきなり叫び始めた。
「キャーキャーキャー……死ぬっ!死んじゃう~!キャーキャッ…モガッ…」
余りの事に彼女の口を押さえて、静かにさせる。本当に何なんだ?やれやれ…やっと落ち着いたか?っと思ったら何と口を押さえていた俺の手のひらに思いっきり噛みつきやがった。
「ウグッ……さっきから何をするんだっ!お前はっ!」
まさか彼女が俺を強盗と勘違いしているなど露ほども思っていなかった為、とんだ初夜の断り方だな……などと思っていたのだった。
怒鳴ったら俺に気付いた様で、直ぐに明かりを点けてくれたが、予想以上の力で手のひらを噛まれていたらしい……血がシーツに落ちる。
シーツで止血でもするか?と考えていると、直ぐ側でビリビリと布を裂く音がした。
不思議に思いながら音のする方に視線をやると、なんとツェツィーリアが自分の夜着を引き裂いていた。
な…何をしているのか聞くと、少しバカにしたように「止血をこれでするから手を出せ」と言われたが、元はと言えばお前が噛みついたからだろっ?と返すと、「何故ベッドに入ってきて、起こすのか?」と言い返される。
食堂で部屋に行くと伝えただろ?聞いて無かったのか?嘘だろ?ちゃんと返事をしていたじゃないか?
彼女に確認をしたが、「聞いてない」や「眠かったから寝た」などと言われた………。
ちゃんと伝えたことを話し、初夜で別れて眠るとかあり得ないだろ?とか話していると、ツェツィーリアは何を思ったかニヤニヤ笑い出す始末。
こいつ絶対話を聞いていないな………はあ。
「じゃあ、まあ寝るか?と言っても寝るだけだ。特に何もしないから………」
まだ笑っている……少し不気味だな。
「おいっ……聞いているのか?」
「ええ、お聞きしていますよ?」
おい…顔に書いてあるぞ?聞いてませんでしたって?
「そういう事なので、今日だけは一緒の部屋で寝る事になる。俺はベッドで眠るので、お前は……ソファーででも眠るが良い」
最初は俺がソファーで……とも思ったのだが、明日も王子の護衛がある為ベッドで寝ることにした。ツェツィーリアは小柄だし、ソファーでも充分に眠れると判断したからだが、彼女は怒り出し凄いスピードでベッドの中に潜り込み、毛布で防御体制を取ってくる。
俺もベッドに乗り丸まった彼女に体重を掛けてやる。思ったよりも我慢しているみたいだが、そろそろ辛いんじゃないか?と思い、彼女の上から退いてやるが、動かない。はあっ?まさか死んだりしてないよな?
慌てて毛布を剥ぎ取ると、ツェツィーリア気を失っていた。呼吸を確認するも、普通に息をしているようであった。
焦った……結婚してその日の内に花嫁が亡くなったとかになったらシャレにならんっ!
安心したら疲れたな……はあ……もういいか……このままでも……別に手を出したりはしないし……な……。
俺もツェツィーリアに続いて気を失うように眠りに落ちていったのであった。
アルビオレの残念さが良くわかりましたか?っていうか、この話しに残念じゃない人なんて……リグレットとマオカぐらいじゃね?(現時点で)