第2話〜ニャンバラ軍の狙撃手〜
「動くな」
後ろから、ドスの利いた低い声が聞こえた。
「クソ、誰だ! 邪魔すんじゃね……!?」
声がした方を振り向くと、ボクよりちょっと小せえ背丈の、黒いフードをかぶったトラネコがいた。
こっちに向けて、細長い何かを構えてやがる。
「ニャンバラ軍偵察部隊【サターン】の狙撃手、【ミマス】に目ぇつけられたからには……貴様らの命は、もうないぜ。俺のスナイパーライフルで、貴様らを殺す」
出やがったな! ニャンバラ軍の奴だ。
「怖いよ!」
「ルナ! 今は喋るな!」
ミマスという名のトラネコは、ライフルとかいう武器を構えたまま、話を続けた。
「貴様ら、スパイのゴマとルナだよなぁ? 任務に失敗した貴様らを、殺せとの命令が出ている」
「何だと?」
ミマスとやら、背丈がボクらと同じって事は、コイツも“ワームホール”をくぐって来たのか。……って、今はそんニャ事考えてる場合じゃねえ。
「まあ、恨むというのなら、迷子になった上に機密事項の入った“ニャイフォン”を紛失し、貴様らも見失った間抜けなプレアデスを恨むんだな。“神の子”のプルートと仲良くできるという立場にあぐらをかいて、いい気になって図に乗っていたプレアデスは……、今は軍を追放されて、ざまァ見ろって感じだぜ。貴様らはプレアデスのミスのせいで、始末されるのさ。可哀想に……」
「プレアデスの野郎、迷子になった上に“ニャイフォン”失くしたから、連絡が取れなくなったのかよ。やっぱりただのドジ野郎じゃねえか」
「兄ちゃん……お母さん……やだ、死にたくない!」
ルナが、両前足でボクの背中をガシッと掴んだ。ガタガタと震えてやがる。
「何にせよ、貴様らはここで死ぬのだ。覚悟しろ」
ガクガク震えるルナの前足を、ボクはガッシリ握ってやった。恐さよりも、怒りの方が圧倒的に勝っている。
「テメエ……! ルナにちょっとでもケガさせやがったら……! ボクがテメエを、ズタズタに引き裂いてやる……!」
「貴様の爪より、俺の銃弾の方が速いぞ。死ねぃ!」
ミマスが、ライフルの引き金を引こうとした時だった。
「やめなさい!」
突然、紫色の光がボクの視界を覆った。思わず目をつむる。
目を開けてみると、ミマスは道路の方へ弾き飛ばされていて、持っていたライフルは地面に転げ落ちていた。ミマスは倒れながら、悔しそうに牙を剥き出しにしてやがる。
「クソ!!」
ボクは後ろを振り向いた。そこには……。
とんがった紫色の帽子をかぶり、キラキラした丈の長え紫色の服を着て、宝石をあしらった木の杖を持った――母ちゃんの姿があった。
「か、母ちゃん!?」
夢の中で見た、泥人形と戦っている時のムーンさんの姿、そのまんまだ。
母ちゃんが、ミマスを吹っ飛ばしたんだろうか。
「ゴマたちは隠れて下さい!」
「分かった、母ちゃん! ルナ、こっちだ!」
「うん!」
ルナを連れて茂みへ向かっていると……。
今度は、重くて頑丈そうな銀色の鎧を着て、スラリとした刃物を持った――どっかで見た事のある白ネコが、こっちに向かって駆けてくる。
「【星光団】、【ソール】だ。今、戻った。ニャンバラ軍の侵入を許してしまってすまない!」
「ソール、“ワームホール”の封鎖はできそうですか?」
「いや、“ワームホール”の仕組みが分からないゆえ、手こずっている。しかし敵はまだ少数。今のうちに我々だけで、先に偵察部隊を捕らえてしまおう!」
“星光団”――。
母ちゃんの仲間って、やっぱり“星光団”だったんだ。そして――。
ソールと名乗る白ネコ。
夢で、ボクに一緒に戦うように言ってきた奴だ。
銀色の鎧に身を包んで、右前足に大きな刃物を左前足に頑丈そうな板を持っている。よく見りゃあ額に、菊の花の形をしたような模様がある。
「急ぎましょう、ソール」
「ああ! 行こう、ムーン!」
ボクはルナを守りながら、茂みに隠れて、母ちゃんとソールがどこへ行くのか、ジッと見ていた。
その時。
ガサッ!!
茂みをかき分ける音が耳に入った。
「ルナ! 隠れとけ!」
「う、うん!」
ニャンバラの奴らなら、容赦しねえ。ボクは振り向いて、ツメを構えた。
あれが正夢なら、いずれボクも変身して――。
「……あれ!? メルさん、じゅじゅさん!!」
「ゴマ!? 何でここに!? ネズミさんのところにいなさいって言ったでしょ!」
「早く〜、一緒に森に隠れて〜!」
茂みから出てきたのは、ニャンバラの奴らじゃなく、メルさんとじゅじゅさんだった。
「メルさん! やべえ事になってやがるじゃねえか!」
「メル姉ちゃーん! 怖かった……うわああん!」
ルナは泣きながら、メルさんに飛びついた。
「よしよし、もう大丈夫。ゴマ、早くこっち来なさい!」
「あ、ああ。それより、母ちゃんがニャンバラの奴をぶっ倒してたぞ! 母ちゃんって、めちゃくちゃ強えんだな!」
メルさんは、走って行く母ちゃんとソールを見ながら答えた。
「母さんはね……【もふネコ戦隊・星光団】のメンバー、【望月の魔導士・ムーン】。“星光団”は、世界の平和を守る、正義の戦隊なのよ!」




