第37話〜ネズミの世界の秘密〜
「とあるニンゲンが、心から願った理想の世界を、絵本に描きました。9匹のネズミさんの家族が、力を合わせて自然の中で平和に暮らす……という内容の絵本です。その絵本の世界が……【太陽の神様】の力により、具現化されたのです。それが、今私たちがいる世界なのです」
ネズミたちは、何事か分からなさそうな顔しながら、母ちゃんの話を聞いている。大丈夫だ、ボクにも分かんねえ。
「あなた方ネズミさんたちは、絵本作家のニンゲンの想像力と“太陽の神様”の力によって、創り出された存在なのです」
「ねえお母さん、よくわかんない」
「そうねチップ。とにかく、最後まで聞いてみましょ」
ネズミたちだけじゃなく、メルさんたちも、首を傾げている。
ニンゲンが、太陽のカミサマの力を通して、ネズミたちをつくった?
どういう事ニャんだ?
「とある絵本作家のニンゲンの想像力と“太陽の神様”の力により創られたこの【ネズミさんの世界】において、ネズミさん方は、平和に幸せに暮らしています。そしてこの世界には、平和を乱す者たちが侵入できないよう、“結界”が張られています」
ああ、そういや、この世界は白いドームになってやがったな。外から覗くことはできたが、白い光の壁が邪魔して、中には入れなかった。
そこで、あのプルートのジジイが発明した変なトンネル――“ワームホール”だっけか――を使って、白い“結界”とやらをすり抜けて、この世界に入って来たんだったな。
「“結界”によって、天敵である私たちネコや、イタチ、そしてニンゲンたちが侵入できないようになっています。私の魔法の力でも、通過できません。ところが、ニャンバラに住む“神の子”……天才科学者プルートは、“ネズミさんの世界”を目にした後、“ニャンバラ”へ帰ってから……」
ん? プルートのジジイが、カミの子?
あのヘンならジジイも、何か特別な力を持ったヤツだった、って事ニャのか?
「プルートは、“ネズミさんの世界”へ行ってみたいという思いを持つようになったのでしょう。彼は、“結界”の通過が可能となる発明品……“ワームホール”を作ってしまったのです。その後、“ネズミさんの世界”の噂は瞬く間に広がり、“伝説の理想郷”などと呼ばれるようになりました」
母ちゃんの力でも通り抜けられねえ“結界”を通り抜けられるのが、“ワームホール”だって事か。それを作ったプルートのジジイは、カミの子だか何だか知らねえが、やっぱり特別な力を持ってるって事ニャんだろう。
「母ちゃん、ボクも母ちゃんたちも、“ワームホール”とやらで、このネズミの世界に来たんだろ? それに、“ニャンバラ”の奴らがネズミの世界へ攻め寄せようとしてるって事は、簡単にその“結界”も破られるかも知れねえって事だよニャ? 何かその“結界”とやら、結構ガバガバニャんじゃねえの?」
尋ねると、母ちゃんは難しい顔をした。
「それは……。かの天才科学者プルートが、超越した存在だからです。“神の子”ですから」
「ねえ、お母さん」
やっぱりニャ、と思った矢先。
ずっと黙って話を聞いてたルナが、母ちゃんに何かを聞こうとしてる。母ちゃんの難しい話が分かるのか。まあルナは、頭はイイからな。
「ルナ、何でしょうか?」
「“結界”を通れるトンネルを作れちゃうプルートさんが、凄いネコさんって事なんだよね。お母さん、何でそんな事知ってるの?」
「プルートはおそらく、“神の力”を使い、かのトンネル“ワームホール”を発明したのでしょう」
続けて「私が色々と知っているのは……」と母ちゃんが言った瞬間、母ちゃんの両目が、黄色くギラリと光った。
「【月の導き】があるからです。私は月の力を借りて、あらゆる情報を知る事ができるのです。未来に起きる事も、ある程度は分かります。しかし、全ての物事を正確に知る事ができるわけではありません」
……やっぱり、コレは夢じゃねえんだろうか。
“魔法”だとかカミサマだとか“月の導き”だとか……。
最近、フシギな夢ばかり見るからニャ。正夢とか関係なくて、今の目の前の状況自体、きっと夢ニャんだろう。
ボクは、ヒゲを思いっきり引っ張ってみた。




