第32話〜ネズミとネコの団欒〜
地底に住むネコたち――。
「おいルナ、それって……」
「間違いないよ、兄ちゃん。ニャンバラのネコさんたちだ」
母ちゃんは、再びネズミたちに向かって頭を下げながら話を続けた。
「ネズミのお父様、お母様。厚かましいお願いではありますが……、数日の間、私たちを泊めて頂いてもよろしいでしょうか」
まさか。てっきりこのまま帰るもんだと思っていたが、メルさんたちもみんな一緒にこのネズミたちと暮らすってのか。
予想通り、ネズミの父ちゃんは嬉しそうにOKを出した。
「もちろん大歓迎ですよ! ゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます。お世話になります」
こうしてボクらは母ちゃんたちと無事に合流し、そのまま9匹のネズミの所で世話になる事になった。
だが母ちゃんたちも“ワームホール”を通ってきたんだとしたら、早く帰らねえと元のネコサイズに戻っちまわねえか? それとも、ボクらと同じように、ミランダに魔法をかけてもらってずっとネズミサイズでいられるようにしたんだろうか?
……まあ母ちゃんの事だから、何かあっても上手くやってくれる気がする。
……にしてもだ。
ニャンバラの奴ら、一体何を企んでやがんのだろうか。
何でボクらは、ここを動いちゃいけねえんだろうか。
そして何で母ちゃんが、ニャンバラの奴らについて知っているんだろうか――。
気になる事がありすぎるぜ。
「ねえ、ネコさんたちの寝床とかどうするの?」
「あ! じゃあ、1階に新しくベッドを作ろう! あと5つだね」
ひとまずは、ネズミたちとの生活の支度だ。
引き続きボクとルナは、ネズミたちを手伝う事にした。木とかを切ったりして、ベッドを作るぜ。
母ちゃんたちには、ちょっとゆっくりしといてもらわねえと。あれだけ旅させちまったんだ。
「僕とユキは一緒のベッドで……」
「何言ってるのポコ、場所をわきまえなさい」
「いてて……冗談だよ」
……ユキとポコのバカップルは、後でみんなの前で思い切りからかってやろう。
楽しげなネズミたちとは逆に、ムーンさんはさっきから、ずっと張り詰めた顔してる。
「ネズミの皆様に、伝えなければならない大切な事があります。後ほどじっくりお話ししますので、まずは私たちの家族を、よろしくお願いいたします……」
また深々と頭を下げる母ちゃん。その大切な事ってのは、一体何なのだろうか。
ボクは、何となく嫌な予感がしたんだ。
ネズミ9匹と、ネコ7匹。みんなでテーブルを囲む。まったく、賑やかな晩メシの時間だ。
「うーーん、おいしいわ! ねえ、母さん」
「本当ですね、メル。栄養もしっかり取れる献立ですね」
「おいし〜い! おかわり〜」
「じゅじゅ姉ちゃん、食べすぎたらまた太るよ。ネズミさん、ネコの好みの味を分かってるね……もぐもぐ」
「ポコ、口の周りにソースがついて白くなってるわよ。ほら、拭いてあげるから」
予想通り、メルさんたちは、ネズミたちの料理の味にめちゃくちゃ感動していた。
シチューっていう、ミルクを使ったあったけえ料理だ。とろっとした食感で、後からじわーっといろんな食材のウマさが混ざった味が口の中に広がるんだ。めちゃくちゃウメえ。
チップも口の周りを白くしながら、嬉しそうに言う。
「モモ姉ちゃんが、腕をふるって作ったんだよ」
長女のモモは、本当に料理が好きみてえだ。コイツの作るクッキーもまた、めちゃくちゃ美味えんだよ。
「うふふ、ゴマくんとルナくんも手伝ってくれたのよ。みんなで作るの、楽しいよね!」
「そーだ。ボクも手伝ったんだぜ! ボクもニャかニャかやるもんだろ、モモ」
「兄ちゃん、意外と手際良かったよ」
「ルナ! 意外とは余計だ!」
じゅじゅさんは、口にメシを頬張ったままウンウンとうなずいている。
「あんなに働くゴマ、初めて見た〜。ルナもずいぶんしっかりしてきたじゃないか〜」
じゅじゅさんも手伝ってくれよ……。こっちに来てもあんた、ゴロ寝してばっかりじゃねえかよ……。
そう思いながらルナの方を見ると、じゅじゅさんに言われた事が嬉しかったらしく、尻尾をピンと立ててやがる。
「ふふーん。だって僕、お兄ちゃんになるんだもん!」
「ルナ兄ちゃん!」
「ルナお兄ちゃーん! えへへ」
「えへへ、なんか照れちゃうな」
へえー、うちの家族じゃ一番のおチビさんだったルナが、チップとナナに懐かれてやがる。
ま、ルナは元々しっかり者だからニャ。ボクももう少し、大人にならねえと。
それよりも、ちょっと気になる事がある。聞いてみよう。
「なあメルさん、みんなネズミを見て何も思わねえのか? 取って食っちまおうとか思わなかったのか?」
「ああ、それは母さんに【魔法】をかけてもらったから大丈夫よ。ネズミさんを食べたくなくなる“魔法”をね。気付いてないでしょうけど母さんはゴマとルナにも、さっきかけてたわ」
「ま、“魔法”だと?」
母ちゃんも、ミランダと同じように“魔法”が使えるのか。
そういやボクも、ネズミを食いてえって欲望が全く無くなっちまっていた。
“魔法”について気になったボクは、母ちゃんに色々聞いてみようとしたが、
「「「ごちそうさまでした!」」」
「片付け、お手伝いしますよ」
「僕もー!」
「私も!」
「あらあら、ありがとう、ネコさんたち。ゆっくりしてくれてていいのに」
メシを食い終わったネズミたちが、片付けを始めやがった。まあいい、母ちゃんには後で聞くことにしよう。
それにしても、昼間の食い物集めもそうだが、みんなで力合わせて生活するってのは、こんニャにも楽しいもんニャのか。それが、ネズミたちの生活の仕方ニャのか。
ボクの家族は、いつもそれぞれ好き勝手に起きて、飯食って、狩りをして、遊んで……だもんニャ。ま、ボクはボクらしく生活するさ。ネコは、プライベートの時間ってのが、すごく大事ニャんだ。
さて、メシの後は――。
「ネコさんたちと僕らで、自己紹介し合おうよ!」
「「「さんせーい!」」」
自己紹介だと? 一体、何を喋ればイイんだ……?




