第19話〜オシャレなボクの家族〜
薄暗い洞窟の奥、ミランダの所に居候して3日目ぐらいか。
メシも食えるし、メルさんとも連絡が取れるようになった。
このまま無事に、母ちゃんやメルさんたちと合流して、また“ワームホール”をくぐるか、あるいはミランダが“ワープゲート”とやらを使えるようになれば、ボクらはアイミ姉ちゃんの所――棲家のガレージへと、帰る事ができるんだ。
「ニャーア……母ちゃんたちまだ来ねえのか。暇だニャ」
「兄ちゃん、メル姉ちゃんたちにちゃんと謝ろうね?」
「わかってらあよ。でも悪いのはプレアデスの野郎だからニャ」
ミランダはさっきから空中でじっとしながら、ひたすら魔法の呪文だか知らねえが、意味の分からねえ言葉をブツブツ呟いている。“ワープゲート”を開くための練習らしい。
邪魔するのは悪りいが……。
「おいミランダ、母ちゃんたちは今どこなんだ?」
気になって仕方ねえから、我慢できずに聞いちまった。
「ん、待ってね。]=《∞……」
ミランダは修行を中断して、ボクらのために呪文を唱えてくれた。
また壁に映像が現れて、メルさんたちの姿が映る。
「兄ちゃん、メル姉ちゃんたち、もうネズミさんたちの街に来てるよ! メル姉ちゃん、じゅじゅ姉ちゃん、ユキ、ポコ、そしてお母さんも、みんな服着て、2本足で歩いてる!」
「うおおお、マジだ!」
母ちゃんは、あったかそうな紫色の上着と青くて長いスカートを穿いている。
メルさんは、白い生地の短いドレスみてえなのを着てる。あのおっかねえメルさんがフリフリのドレスだなんて、ちょっと笑えてくるぜ。
じゅじゅさんは、水色のセーターみてえなのと紺色のズボンだ。デカいじゅじゅさんにはサイズが小さすぎて、腹の肉がはみ出してる。
ユキは、白いワイシャツに薄い桃色のスカートだ。女の子らしくてよく似合ってる。
ポコは、カッコつけてんのか、真っ赤なキャップなんかかぶってやがる。上はオレンジと黄色の縞模様が入った長袖シャツ、下は青い短パンだ。黒ネコだから、派手な柄がよく似合うな。
「みんな似合ってるよなあ。特に見ろよ、ユキの服! アイツ、なかなか可愛いもんじゃねえか」
「だね。でもあの服、どこで用意したのかな? プレアデスさんは行方不明だし」
「ネズミの服屋にでも行ったんじゃねえの? ボクもオシャレしてえぜ。後で、ネズミの服屋行こうぜ」
「ちゃんとお母さんたちと会えたらね。お母さんたち、ちゃんとここに辿り着けるかなあ……?」
母ちゃんたちは、あの時のボクらと同じように、“ワームホール”をくぐってネズミサイズになって、2足歩行になったんだろう。
ネズミサイズになって2足歩行でいられるのは2日ぐらいだったはずだから、それまでにボクらの所へ辿り着いて、また“ワームホール”んとこへ帰らなきゃいけねえわけだ。
ルナの声を聞きつけたミランダが、目の前に飛んで来る。
「ここに来るまでの交通機関の使い方も、ムーンちゃんたちに伝えておいたからね」
「ああ、ありがとよ」
「ありがとう、ミランダさん」
あの草叢の中で見た、卵形の列車にでも乗って来るんだろうか。イイニャあ。合流できたら、帰る前にしばらくみんなでネズミの街を探検したいぜ。
ま、合流するにしても、あの距離だ。まだしばらく時間がかかるだろう。
「さあて、ずっとここにいるのも暇だニャ……ん?」
洞窟の奥の方から、微かにネズミのガキどもの声が聞こえてくる。




