第14話〜謎の声〜
「ルナ、朝だぞ」
「ううーん……」
洞穴に、お日様の光が射し込む。すでに、日はだいぶ高かった。
視界に入る、見慣れねえ草叢の景色。
場所自体は棲家から近いはずなのに、もうどこか遠い遠い場所にいるような感じさえした。
あのニャンバラにいるよりはよほどマシだが、やっぱり早く棲家に帰りてえ。
「ルナお前……、大丈夫か。顔色悪りいぞ」
「ちょっとつらい……かも。……クシュン!」
ルナは何だか元気が無え。ボクはルナのおでこに肉球をかざしてみた――ちょっと熱い。
まずいぞ、こんな時に風邪ひきやがった。
こうなったら……。
「ネズミの奴らに助けを求めるしかねえか……」
「ダメ、だよ……」
ルナは目を細めながら首を横に振りやがる。このまま風邪が悪化したらどーすんだ。
「もうプレアデスの奴とも連絡取れねえんだ。ていうか、騙されたようなもんだろ、これは。こんなとこにいちゃ、悪化するだけだ。その辺のネズミの家で寝かせてもらうぞ」
洞穴の外に出ると、ネズミのガキが数匹キャッキャと声を上げて遊んでやがった。
アイツらに声かけよう。
ボクは外に出て、大きく手を振った。
「だめだって……、見つかるよ!」
ルナがボクの尻尾を引っ張りやがる。ボクは即座に言い返した。
「お前、ここで死ぬ気か!?」
「うう……。クシュン! だってプレアデスさんとの約束が……」
「そんな事より自分の心配をしろ! ……おおーい、そこのネズミども!」
ルナの前足を振り切ると、ネズミのガキどもに向けて声を上げた。
が、その時だった。
足元でボコッという音が聞こえたかと思うと、突然体のバランスが崩れた。
「ん? ニャアアア!?」
「え、何? うわあー!」
地面の土が崩れて、穴が空いた――。
「ニャアア!! 何だこれは! 落とし穴かよ!」
「うわあ、兄ちゃんー!」
追ってきたルナと一緒に、そのまま穴の中へと転がり落ちちまった――!
ドスンと鈍い音がしたかと思うと、じわりと冷てえ感覚が腹に広がってくる。
周りを見ると、そこは――ジメジメとした地下の洞窟だった。
すぐ横で、ルナが伸びている。
「おいルナ、しっかりしろ!」
「うーん……」
「とりあえず体起こせ。冷えちまう」
「ありがとう……。びっくりしたよ。……クシュン!」
ボクの体3つ分ぐらいの高さの天井に、穴がある。あそこから落ちてきたっぽいな。
さっきのネズミのガキどものイタズラか? 落とし穴とか、シュミ悪りいぜ。
周り一面、湿った茶色い土の壁だ。空気は冷んやりとしている。こんな場所にいりゃあ、ルナの風邪も悪化するじゃねえかよ。
「何とかしてこの洞窟を出るぞ。もう少し辛抱してくれ、ルナ」
「頑張る……クシュン! ……あ、兄ちゃん静かに! 上の方から、声が聞こえる」
「……ん?」
足を止め、耳をすませた。
「ねえ、誰かここに落っこちて行ったよ」
上の方から声が聞こえた。さっきのネズミのガキの声っぽいな。
ボクらが落ちてきた、天井の穴からだ。
「僕が掘った落とし穴に誰か落ちたんだよ、あはは!」
「あらら、こんなに中まで埋まっちゃって」
「大丈夫だよ、浅いから自力で出られるよ。早くおやつ食べに行こ!」
やっぱり、ネズミのガキどもの仕業か。浅いから自力で出られるだと? ガッツリ底が抜けちまってるじゃねえか。
「……ネズミのクソガキどもめ。後で丸ごと食ってやる」
「ダメだよ兄ちゃん。とりあえず、洞窟を出よう。こっちで合ってるのかな……」
もっかい足を進めようとした、その時だった。
「あなたたち、もしかしてネコさん? こんな所で何してるの?」
今度は、すぐ近くで、ささやくような高い声が聞こえた気がした。
ネズミのガキか? いや、違う。すぐ近くから聞こえたんだが、周りにはルナしかいねえ。
「ルナ、何か言ったか?」
「ううん、何も言ってないよ? 誰の声だろ、今の?」
「お前も聞こえたのか。ハハッ、ボクらとうとう幻聴が出てくるくらい、疲れ果てちまったのかよ……」
途端に、歩く気力が無くなってきた。ちょっと休もうかと思ったら、また。
「ここよ、ここ」
耳元で、またさっきの声が聞こえた。
「……ったく、誰だ……。ん?」
何だ?
ぼんやりと黄色く光る何かが、目の前をフワフワと飛んでる――。




