第11話〜決死の追跡〜
あのマサシって奴は、ニンゲンなのか? ネズミとおんなじサイズだから、妖精か何かじゃねえのだろうか。
そしてここは、ボクらが集会してる神社の奥の奥にある、木が鬱蒼と茂る森の中だったはずだ。
それニャのに。
ここから遠くを眺めてみても、清々しいくらいの真っ青な空が広がるばかりだ。
何か、不思議な事ばっかりだな。
「兄ちゃん、ネズミさんたちみんな、楽器を吹いたり叩いたりしてるよ」
「何だか楽しそうだな。あ、マサシとやらも、一緒にラッパみたいなの吹いてやがる」
「本当だ。何かのお祭りかな?」
「ボクらも一緒に混ざるか?」
「だから、ネズミさんたちに見つかっちゃダメなんだってば!」
「分かってらあよ。冗談だ」
気づけば、ボクらもネズミどもが鳴らす音楽に合わせて、体を揺らしていた。アイツら、演奏上手えな。ウットリしちまう。
「……見てたらボクらもやってみたくなるよな、楽器とやら」
「兄ちゃんのはただの騒音になりそうだけどね」
「うるせえな! やってみなきゃ分かんねぇーだろ」
ボクらは公園の物置小屋に隠れながら、ネズミどもの音楽を夢中で聴いていた。音楽だけじゃなく、踊ったり動き回ったりもしてて、見てても楽しくて、こっちも一緒に体が動いちまう。
演奏が終わると、ワァーという歓声が湧いて、観客のネズミどもが盛大に拍手をした。
ボクも、不思議と愉快な気分になっていた。
「兄ちゃん、何うっとりしてるの! ニンゲンさんたち、どっか行っちゃうよ?」
「何ッ!?」
ルナに言われて見ると、マサシどもは既にいなかった。
しまった。どこだどこだ……?
道路の方に目をやる。いた。奴らは、ちょうど円盤形の乗り物に乗り込む所だ。
「兄ちゃん、どうする?」
ボクはルナの腕を引っ張り、道路沿いに向かいダッシュした。
右側から、ダンプトラックみてえな乗り物が走ってくる。
他の車は地面からちょっと浮かんで走ってるが、大型の車はちゃんと車輪があるんだな……って、そんニャ事はどうでもイイ。
「ルナ! すぐ後ろのダンプトラックみたいなのに飛び移るぞ!」
「ええーー!?」
考えている暇なんか無え。報酬の高級魚缶詰のためだ。
マサシどもが乗り込んだ円盤形の乗り物の、すぐ後ろを走るダンプトラックの荷台に、ボクは狙いを定めた。
「行くぞルナ! 合わせろよ! いち、にの、さん!!」
「うわあああーー! 兄ちゃんーー!!」
助走をつけ、思い切って道路に向かってジャンプした。
猛スピードで、ダンプトラックが迫る――。
「ぐあッ! ルナ、大丈夫か!」
「うう……」
よし、うまく飛び乗る事が出来た。
「まずい、かぶり物が……! ルナ、体を伏せろ!」
「分かってるよ」
「ルナ……怒ってるか?」
飛び乗った衝撃で、ボクのかぶり物はどっかへ吹き飛んで行っちまった。ルナのも、ビリビリに破けちまっている。
それでもボクは、見つからねえように荷台から少しだけ顔を出して、前を走るマサシどもの乗った車の様子を見ようとした。
風がビュンビュン吹きつけてくる。うまく前が見えねえ。
「ルナ、悪りい。怒らねえでくれ」
「怒るよもう! 兄ちゃんのバカ! 死ぬかと思ったよ! ここはもう諦めようよ」
「うう、だが高級魚缶詰は諦めきれねえよ……」
「もう! 勝手にしなよ!」
ルナに呆れられちまったが、ボクは再び吹きつける風と戦いながら、必死で前を覗いた。
見えた。確かに円盤形の乗り物の窓に、マサシの姿が見える。
……が。道路が二又に分かれてやがる。
マサシどもの車は左に曲がりやがった。このトラックは……。
ダメだ! 右に行きやがる!
「クソッタレ! ルナ、また飛び移るぞ!」
「やめろ!! 死にたいのか!!」
「フギャア!? 痛えー!!」
本気で怒ったルナに、尻尾を思いっきり噛みつかれた――。
「行き当たりばったりもいい加減にしなよ!!」
二又に分かれた道路は、それぞれ全く違う方向へ続いて行く――。
マサシどもの乗った車は、完全に見失っちまった。




