第9話〜ネズミとニンゲンを追え・2〜
建物の中には変な機械やら何やらがいっぱいあって、隠れられる場所が多い。そもそも、誰もいねえ。楽勝だ。そのままコンベアから、美味そうなパンみてえなモンを頂いちまおう。
「機械の音でちょっとくらい足音立ててもバレねえ。楽勝だな」
「僕やだよ、そういうの」
コンベアの前に来れたぜ。
コンベアに乗って流れてくるパンみてえな食いモンを……。
「あぐっ」
……ゲットだ。美味え!!
「これは……!? 何て美味えんだ! ほらルナ、お前も食え!」
「うわわっ、……むぐ。……あ、美味しい!」
「こりゃ、止まらねえなあ!」
「あああ、ダメだよそんなに取っちゃ」
うおお、こんな美味えモン食ったことねえや! 腹減ってるから、余計に止まらねえ!
ボクとルナは、夢中でがっついた。あっという間に15個くらい、平らげちまったぜ……。
腹一杯になったところで、ボクらはまた裏口から抜け出して、任務に戻った。
「さっきのニンゲンども、まだいるかな」
「あ、いるよ! 入り口のとこ!」
茂みの陰に隠れながら建物の入口の方を見ると、さっきのニンゲンの男と、子ネズミのオスと、子ネズミのメス――マサシ、トム、ナッちゃんとやらがいた。
もう1匹、メスのネズミも一緒に何か話している。多分、この建物の主だろう。
「いつもありがとね。おとうさんたちによろしくね」
「お茶おいしかったです。ごちそうさまでした」
「また来ますねー!」
奴ら、ちょうど出発するところらしい。
ボクは隠れながら、再び撮影を始めた。
パシャパシャパシャパシャ――!
「兄ちゃん、また連写になってる!」
「あーもう! どーなってんだコレ。……だが今度はブレてねえぜ。にしても、この音消せねえのか?」
「多分、消せないね。この穴から音が出てるから、肉球で塞げばちょっとは音小さくなるかも?」
今度は気付かれなかった。セーフだ。
次からはルナの言う通り、“ニャイフォン”の下の穴を塞いで撮るか。持つの難しいから、落っことしそうだが。
気付けば、トムとやらとナッちゃんとやら、そしてニンゲンのマサシとやらは、ずいぶん先に進んでやがった。
だが、話し声はかろうじて聞こえる。
「あの川沿いのカフェで、ケーキ食べようよ」
「え、トム兄ちゃんったら、また食べるのー?」
トムって奴、間違いなく食いしん坊だな。
それよりも。辺りを見回せば、服着たネズミがいっぱい歩いてやがる。
もしかしたらマサシとやらと同じように、ネズミサイズのニンゲンが他にもいるんじゃねえか。そう思い、周りを探してみたが。
やっぱり、ニンゲンの姿してるのは、マサシとやらだけだ。
「おい、あのマサシってニンゲン、追いかけるぞ」
「うん、僕も気になってた」
奴らは今、ヘンな形をした車が行き交う道路を渡るため、立ち止まってやがる。
……何だあれは。行き交う車、みんな車輪がねえぞ。どの車も円盤みてえな形をしてて、地面から少し浮きながら動いてやがる。
……って、そんニャ事はどーでもイイ。奴らが立ち止まってる隙に、“ニャイフォン”でプレアデスの野郎に連絡してみよう。
「ルナ、プレアデスの奴に連絡する時はどーするんだ?」
「【NYAINE】っていうアプリを開くんだよ。僕がやろうか? 使い方も調べておいたから」
ルナはすぐさま“ニャイフォン”を取り出し、“NYAINE”と書かれた四角いマークに触れた。
「宛先はプレアデスさんに……と。確か、マイクに向かって伝えたい事を言えば、文字になって画面に出てくるはず」
「“ニンゲンみたいな奴がいるぞ”、これでイイか?」
「それじゃ何のことか分からないよ。“ネズミさんたちを撮っていたんですけど、ネズミさんと同じ背丈のニンゲンさんを見かけて、今も後を追ってるんです。一応、報告しますね”、送信っと」
ルナめ、いつの間にか“ニャイフォン”を使いこなしてやがる。
突然、ブルルン、ブルルン、とルナの“ニャイフォン”が震え始めた。
「兄ちゃん、プレアデスさんから着信だよ。出るね」




