第5話〜ネズミの世界へ〜
ここは、プルートのジジイが開発したトンネル、“ワームホール”の中だ。
上も横も前も後ろも、全てが虹色の空間だ。うう、何だか酔ってきたぜ……。
……お? 段々と、2足歩行が出来るようになってきたぜ。体も軽い。チビになってきたって事か。
「ルナ、出口だぞ」
「あ、待ってよー!」
虹色の光の真ん中に、ポッカリと暗い穴が見える。ボクらは、そこに向かって一直線に走った。
さあ、抜けたぞ。
何だ、ここは――?
そこは真っ暗な夜の森だったが、周りに生えてるのは木じゃなく、やたらとデカい草花だ。
「うお、何だこれは」
「すごーい! 周りの草とか石ころとかが、おっきいね」
ボクらは、本当にネズミサイズになってしまった。
出てきた“ワームホール”の方を恐る恐る振り返ってみると――。巨大なプルートのジジイのブキミな姿が見えるかと思ったが、何の変哲もない夜空が見えるだけだった。
“ワームホール”の出口の先っちょだけが草地に置かれているだけで、先っちょより向こうのトンネル本体は、なぜだか見えなくなっちまっている。
光のドームから外の様子が全く見えねえようだ。……ていうか、光のドームの壁がどこにあるのかも、ここからじゃ分からねえ。
一体、どうなってんだ……?
「来たね、ゴマくんルナくん。ここからは静かにね。もう一度言うけど、ネズミたちに見つかっちゃダメだからね。これ、君たちの服。それから“ニャイフォン”1つずつね。カメラ機能の使い方は、後で教えるから」
ボクらは、プレアデスに渡された服をパパッと着た。ボクは白い半袖シャツと青くて短いズボン。ルナは長袖で紺色のシャツに、ボクと同じ青くて短いズボン。
どれも地味なのは、目立たないようにするためなのか。せっかくだから、もう少しオシャレしてえぜ。
「あと、これも着てね」
「ん? 何だ、この変なかぶり物は?」
「兄ちゃん、これ頭からかぶるんじゃない?」
厚紙みてえな物で作られた灰色のかぶり物も渡された。プラスチックか何かで作られた目と鼻とヒゲが、雑に貼られている。
「あと、これも」
続いて渡されたのは、中が空洞の細長いミミズみてえな形の、ゴムのような物で出来た物だ。
「待て待てプレアデスよ。これは何だよ?」
「それは、ネズミの顔と、尻尾だよ。ほら、頭にかぶって」
「わっ……!」
プレアデスがルナの頭に、雑な出来の、ネズミの頭かぶり物をかぶせた。次いでミミズのような尻尾も、ルナの尻尾の上からかぶせやがった。
「これで、もしネズミたちに見つかってもごまかせる。多分ね」
「多分ねって、お前なあ……」
「ほら、ゴマくんもかぶって」
「おいやめろ!」
ボクもプレアデスに無理矢理、ネズミのかぶり物をかぶせられた。毛の感じといい、明らかに縫い合わされた跡といい、こんニャの偽物だってすぐわかるだろう。本当に大丈夫か、コイツ……。
空気穴があるから、息はしやすかった。雑に空けられた穴から、かろうじて前も見える。
「ルナ、大丈夫か……? 前見えるか?」
「何とか……」
プレアデスの野郎もすぐに、ネズミのかぶり物を装備した。全然ネズミっぽくねえ。顔を動かすたびにバタバタと音がして、かえってバレそうな気しかしねえよ。
「ここのネズミって、こんな姿なのか? “ニャンバラ”の奴らと同じように、服着て2足歩行で歩いてるんだったな?」
「そうだよ。……って、プルートが言ってた」
「おい、何だよそれ!」
「この林を抜けたら、多分、ネズミの街だ。さ、準備できたら、僕についてきて。ちなみに、地底のネコはネズミを食べないから、心配しないで」
ボクはプレアデスのひきつった顔を見逃さなかった。コイツ、多分嘘つくの下手だ。きっと何か隠してやがる。
だが、ボクらに頭下げる時、本気で困ってるようにも見えたんだよな……。
まあ、しばらくは様子を見るとするか。
「妙にあったけえな、ルナ」
「見て、おっきなドングリがある」
ルナに言われて見ると、巨大なドングリが、そこかしこに転がっている。
不思議な事に、ボクらの世界だと冬だったが、こっちの世界はまだ秋真っ盛りのようだ。冬の毛だと少し暑い。
さて、今更もう後戻りは出来ねえ。不安とワクワクが混じった不思議な気持ちのまま、プレアデスの後をついて行った。




