第24話〜危機〜
“パルサー”が大きく揺れて、ボクは頭をぶつけた。
「ニャッ!? 痛え!」
「うわあ! 兄ちゃんー!」
「大丈夫かい? ゴマくん、ルナくん、しっかりつかまってて!」
しばらく揺れが続く。
頭ん中かき回されてるみたいで、めちゃくちゃ気持ちが悪りい。
吐きそうになってきたが、幸いにも揺れはだんだんと収まってきた。
「うおえ……気持ち悪りい。……ったく、おい! ジジイ、どうなってんだよ」
「あれ~? おかしいですねぇ。穴がずっと続いてるはずなのにぃ? 途中で岩盤にぶつかってしまったみたいですぅう?」
揺れは収まったが、“パルサー”自体、完全に動きを止めちまっているみてえだ。
「あ? じゃあどうすんだよ。ちゃんと地上に帰れんのか?」
「仕方ないですぅ、ここからは、岩盤を掘りながら地上へ向かいましょう~。揺れますからァ、我慢してくださいぬぇ?」
再び、“パルサー”が動き出す。同時に、さっきとはまた違った揺れがボクらを襲った。
キーンと、甲高い音が響いてくる。近所で工事をしてるニンゲンが機械で道路やらを削るのを見ることがあるが、アレの100倍ぐらいうるせえ音だ。
「うおえ! うるせえええええ!!」
「頭が痛くなってきたよう……」
「ゴマくん、ルナくん、ごめんね。大きなドリルで、岩盤を削りながら進んでるから、しばらくの辛抱だよ」
冗談じゃねぇーぞ。
絶え間なく、揺れとうるせえ音が続いて、頭がガンガンする。吐きそうだ。
耐えられるだろうか。
「窓のシャッターを完全に閉めますぅ~。ここから先はマグマ地帯の近くを通ることになりますからねェ。“パルサー”はぁ、高温にも耐えられますのでぇ、安心してくださいねぇ」
窓の外にあるシャッターが完全に閉じられた。
マグマ? 高温? 何だか不穏な言葉が聞こえた気がしたが、気持ち悪さと不安と息苦しさで、それどころじゃねえ。
ボクよりも、ルナが心配だ。気絶したりしないでくれよ。
「うう……。プレアデスさん、いまはどのへんなんですか?」
良かった。まだ喋る元気はあるみてえだ。
「ルナくん、大丈夫かい? 今はちょうど地殻の真ん中を抜けた所だよ。だから、あと半分くらいだね」
「おい、まだ半分かよ!」
思わず声を上げちまった。
こんな狭っ苦しいとこで身動きもできず、うるせえ音聞かされながら何時間も閉じ込められてるなんて、ボクは耐えられねえぞ。
「なあプレアデス、1度どっかに停めて、休めねえのか!?」
「まだマグマ地帯のそばだから、もう少し低温のエリアに行くまで辛抱して」
歯を食いしばって、ひたすら揺れと爆音に耐えていた。
――が。
「ぎゃああああ!!」
誰かの金切り声が、ボクの耳を貫いた。
プルートのジジイだ。……と気付いた瞬間、今度は突き上げられるような衝撃がボクらを襲った。
「ニャアアア!! おい、何だ? 今のは」
「動力が停止ぃ!? そんなぁバカなぁ?」
プルートのジジイが、うろたえている。
「ゴマくん、ルナくん! 落ち着いてね! 大丈夫だから!」
プレアデスは、怖がって縮こまっているルナの背中をさすりながら、声をかけてきた。
どう考えても、大丈夫じゃねえ。
機内に、虫の鳴くような変な音が鳴り響いている。操縦席にある赤いランプが、点いたり消えたりを繰り返していた。
プルートのジジイの声が震えている。
「マ……マグマ地帯にぃ? 進入したところォ、動力が完全に停止ぃ……そんなぁ、バカなぁ?」
「おい、ジジイ! どーなってやがんだ! ……って、ンニャアアア!?」
「うわああ、兄ちゃーん!!」
またも天地がひっくり返るようなデケエ揺れと爆音に、ボクらは襲われた。
ビービーと、耳に突き刺さるようなサイレンが鳴り響く。
『緊急事態発生。緊急事態発生。直ちに避難準備を』
赤いランプが点いて、機内が真っ赤に染まった。
おいコラ、テメエら! なんとかしろ! こんなとこで死ぬのは嫌だぞ!!
「ニャアアア!! クソ!!」
「うわあああ! 兄ちゃん……! 死にたくないよー!!」
もう上も下も分からねえ。
だんだんと暑くなってきやがった。
目が霞んで何も見えねえ。喉はもうカラカラだ。息がしにくくなってきた……!
「クソ、熱ちい!!」
「やだようー! 助けて……兄ちゃん、メル姉ちゃん……」
ルナの声が耳に入ると、瞼の裏にボクの家族――メルさん、じゅじゅさん、ユキ、ポコ、そして飼い主のアイミ姉ちゃんの姿が浮かんできた。
おいやめろ! まだ死にたくねえぞ……!
「温度制御装置がぁ故障。動力はぁ? 依然停止中……。こ、このままだと! マグマの熱で“パルサー”はぁ? 私のぉ? “パルサー”があぁあ! 私のぉ? 大切な“パルサー”がぁぁぁ!! ウ……! ウヒヒョヒョヒョヒョヒョロヒョロホロロォオオ!!」
「プルート! 落ち着くんだ! 操縦、僕が代わる!」
プレアデスが、無理やり前の席へ移動したのが、かろうじて分かった。
イカれたクソジジイの泣き声と、サイレンが入り混じる、地獄みてえな空間だ。
このままじゃ、みんな蒸し焼きになっちまう。
何とかしろ、プレアデス――!




