第16話〜疑問〜
すぐ近くで、何かが爆発した。
窓ガラスが割れて飛び散る。地震みてえに地面がグラリと揺れて、棚に入っていた食器やらが次々と床に落ちた。
「うわあ!! 兄ちゃん!!」
「大丈夫か!? ルナ! 何が起きてんだ、これ!」
「まずいな……、【ニャルザル】の軍隊がこの街にも来たみたいだ! ゴマくん、ルナくん、早く部屋を出よう! 地下室へ行くんだ!」
ボクらは訳が分からねえまま、プレアデスに前足を引っ張られ、ボロ部屋を飛び出した。
外の廊下から目の前の景色を見ると、ボロアパートの周りは火の海になっていやがった。ネコたちが、ニャーニャーと声を上げて逃げ惑ってやがる。
ボロアパートもすでに火に包まれ、黒い煙を上げている。
焼け落ちたいくつもの木のカケラが、廊下の床で燃えていた。それをよけながら、ボクらは地下へ続く階段を下りて行く。
「ゲホッ……! クソ、煙が……! ルナ、絶対離れるな!」
「うわーん! 兄ちゃーん!!」
「早く、この部屋へ入って! 地下室は安全だから!」
ヒンヤリとした地下1階の廊下に、鉄の扉があった。プレアデスは扉を開いて、ボクらを招き入れる。
ボクはルナを引っ張り、真っ暗な部屋へと飛び込んだ。
どうにか、ケガもなく安全な場所へと逃げ込むことができたみてえだ。
プレアデスが壁にあるスイッチに触れる。すると、たった1つだけある剥き出しの電球がぼんやりと光った。壁際には、訳の分からねえ廃材とかが山積みにされている。
そこそこの広さがある、ジメッとした石造りの地下室だ。
「おいプレアデス、一体何が起きたっていうんだ」
「このアパートに、爆弾が直撃したみたいだ」
「バクダン? 何だそりゃ?」
「火薬を使って、ネコたちを殺したり、建物を壊したりする兵器だよ。【魔法】みたいに、力を制御できないから怖いんだ」
ネコを殺す、だと? ひでえ奴らがいるもんだ。
そう思った途端。
天井の方で何かデケエ物が壊れて崩れるような音がすると同時に、部屋全体がズシンと揺れた。
天井のタイルがひび割れて、小っちゃな石とか砂が落ちてくる。
「うわわわ、怖いよ!」
「ルナくん、安心して。この地下室は避難用にできてるから、崩れたり燃えたりはしないよ。……でも、おそらく僕たちがさっきまでいたアパートは、崩れ落ちちゃった」
「……もう一歩遅けりゃ、ボクらは死ぬとこだったってことか」
ニャンバラの街のあちこちで煙が上がっていたのは、そういう事だったのか。
他所の国の奴らが、街にバクダンとやらを落っことして建物をブチ壊して、街のネコどもを殺してやがる。
それで街のネコどもも、暗い顔してやがった訳だ。
「……ごめんね。急にこんな怖い目に遭わせちゃって。これから僕は、警察や軍隊に、今の街の状況を聞いてこなくちゃいけない。危ないから、絶対に地下室から出ちゃダメだよ」
プレアデスは慌てるように鉄の扉へと向かいやがる。ボクは「おい待て」と言って呼び止めた。
「ボクらを地上に帰すってこと、絶対忘れんじゃねえぞ。テメエが言うボクらが地上に帰るための条件とやら、帰ってきたら今度こそ絶対聞かせろよ」
「ああ、分かってる。すぐ戻るから」
プレアデスの奴、やけにイライラしてやがる。「チッ」と舌打ちが聞こえた気がする。そのまま逃げるように出て行き、乱暴に鉄の扉を閉めやがった。バアンと、閉まった扉の音が地下室に響く。
アイツ、本当に信用できるのか? ボクらを利用して、何か良からぬ事しようとか、たくらんでんじゃねえだろうな……?
ボクとルナは外に出る事もできず、しばらくはこの薄気味悪りい地下室で過ごす事になっちまった。




