表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
317/322

八巻(十八)

ハエルヌンによる春(五)

 東州公[オンジェラ・ゴレアーナ]の後見人として、都に来ていたゾオジ[・ゴレアーナ]どのが、また、前触れもなく、サレの屋敷をふらりと訪れて来た。

 この時は運よく、サレは在宅中だったので、大事には至らなかった。

 サレが応接室に通そうとすると、ゾオジどのが大きな手を横に振った。

「失礼ながら、東州公が母上とお会いしている間の暇つぶしに、贈り物を届けに来ただけですので」

 そのように言いながら、ゾオジどのが、漆塗りの小箱をサレに差し出した。

「煙草がお好きと聞きましたので、葉を持参しました。東方の国からの舶来品です。よかったらお吸いください」

 ゾオジどのの申し出に、サレは、「それはありがたい。大事に吸わせていただきます」と素直に受け取った。

「前のいくさでは、私の家臣も(てい)(ちょう)に葬っていただき、感謝のことばもありません」

「……いくさびととして当然のことをしたまでです。お互い、大事な家来をたくさん失いました。いくさ場で人を殺すのが我々の仕事ですが、やりきれない部分ですな」

 サレの言に、ゾオジどのは黙ってうなずいた。

「前のいくさのことがあり、気兼ねするそうですが、愚息があなたにお会いして、いろいろとご教授願いたいと言っておりました」

「優秀なご子息に、わたくしが教えることは何もありませんが、わたくしもまたお会いしたいと思っております。わたくしもご子息もいくさびとです。敵味方に分かれて斬り結んだ程度のことを、いちいち気にする必要はないように思います。……ご子息はすばらしいいくさびとですが、正直、うらやましくはありませんな。わたくしは、息子に凡夫として、つまらない一生を送ってもらいたい」

 サレが話している間中、静かな笑みをたたえていたゾオジどのは、ひとつ首肯したのちに、「話の続きはまたゆっくりと。きょうはこれで失礼いたします」と言い、サレの屋敷を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ