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第四章・スケ番再び(五)

(五)戦い済んで……


 全員が無事脱出した直後だった。

 ビルが大音響を上げて崩れはじめたのだ。

「危なかったあ。後数分脱出が遅れたら、生き埋めになっていたわね」

「それもこれも、こいつのせいだ」

 慎二が、肩に担いでいた蘭子を降ろしながら言った。

 かなりのショックを受けていてまだ気絶したままだ。

 他の黒姫会のメンバーは、青竜会に囲まれて車座に座らされている。

「助けだしたはいいが、やっぱりす巻きにして新河岸川にでも放りこむか?」

「待ってください。あたいには、蘭子の気持ちがよくわかるんです」

 意外にも竜子が助け船を出したのだった。

「とにかく、こういうこと、あたしは苦手だから、後のことはお竜さんにまかせるよ」

「はい。わかりました」

「でも、ビル破壊しちゃいましたけど、いいんでしょうか?」

「どうせ解体予定のビルよ。逆に感謝されてもいいくらいじゃないかしら?」

「そうそう、周囲の建物や人的被害がでなかったから大丈夫だよ。埋まったブルドーザーも掘り起こして修理すれば十分使えるさ」

「そういうものでしょうか?」

「まあ、いずれ警察がやってくるだろうから、早めに退散したほうがいいわ。というわけで……」

 と慎二の方に向き直って、

「慎二、行くよ。送ってくれるんでしょ」

「梓さん、鞄」

「ありがとう」

 鞄を受け取り、自動二輪の方へてくてくと歩きだす梓。

「へいへい」

 頭掻きながら後に付いていく慎二。

「お疲れ様です」

 スケ番達が次々と頭を下げて挨拶していく。

「おい、見たか。あいつ、沢渡だよな」

「ああ、鬼の沢渡を顎で使ってるよ。さすがリーダーだ」

 バイクに跨った慎二の後ろに、横向きの女の子座りで着席する梓。来るときの三人乗りと違って座席に余裕があるからだ。

「じゃあ、発進するぞ」

「うん。女の子が乗ってるんだから、慎重に運転してね」

「ぶりっこするなよ。おまえのどこが女の子なんだよ」

「こら!」

 軽くこつんと慎二の頭を叩く梓。

「へいへい。女の子でした」

 エンジンを始動し、自動二輪を発進させる慎二。

 梓が女の子座りしているので、そうそう荒っぽい運転ができないのは確かだ。慎重に運転しなきゃならないのは判っているが、梓のバランス感覚も抜群で少々の揺れでは振り落とされないだろうことも判断できる。

 自動二輪は街中を抜けて、一路城東初雁高校のある田園地帯方面へと向かっている。

「本当に学校へ戻っていいのか?」

「教室に忘れ物したんだ。取りに戻る」


 やがて校門前に到着する自動二輪。

 後部座席からぴょんと飛び跳ねるように降り立つ梓。

「サンキュー、助かったよ。帰っていいよ」

「自宅まで送ってやってもいいんだぞ」

「一人で帰れるから大丈夫だ」

「そうか、気を付けて帰れよ」

「うん。ありがとう」

 自動二輪を発進させる慎二。その後ろ姿を見送る梓。

「すまない慎二。好意は感謝するけど、屋敷を知られたくないから」

 慎二の自動二輪が見えなくなるのを確認して携帯電話で連絡を取る梓。

「あ、麗香さん。学校まで、迎えにきてください。うん、じゃあ」

 携帯を鞄に戻して、女子クラブ棟の方へ歩いていく梓。

「とにかく汗を流さなくちゃ、気持ち悪い」

 清潔好きな梓は、身体とくに自慢の髪が埃まみれなのが気に入らないのだ。クラブ棟にあるシャワーで汚れを落とすつもりだ。それに女子テニス部部室にあるロッカー内には替えの下着と制服も置いてある。

 きれいさっぱりした梓が、裏門にまわると、すでにファントムⅥが待機していた。

 梓の姿を見届けて、麗香が助手席から降りて来て、後部座席を開ける。

「お疲れさまです。お嬢さま」

 梓が座席につき、後部座席の扉を閉めると、麗香は反対側の扉から乗り込んだ。絵利香が同乗しない時は、梓の隣の席に座るのが日常だ。

「石井さん。出発してください。それと遮音シャッターを上げてください」

「かしこまりました」

 石井は車を発進させると同時に、パネルを操作して遮音シャッターを上げた。

「今日は、遅いお帰りですね。クラブ活動はなかったと記憶しておりますが、いかがなされました? 絵利香さまもすでにお帰りになられていまして、お屋敷の方にご連絡がありました。まだお帰りになられていないとお答えしましたが、ご心配そうなお声でした」

「そっか、絵利香ちゃん。心配してたのか……」

「また、喧嘩なされましたね」

 ずばりと言ってのける麗香。

「どうして?」

「頬のかすり傷ですよ」

「あ……やっぱり、気がついた?」

 蘭子のチェーンで切られた傷が残っていたのだ。常日頃から、梓のその日の体調や気分などに気を配っている麗香が気づかないはずがない。

「まあ、これくらいの傷なら跡を残さずきれいに直るでしょう。避けられぬ事情があったとは思いますが、お顔にだけは傷をつけないように、十分気をつけてくださいね」

「わかった……気をつける」

「絵利香さまがご心配なさってたのです。ご連絡を差し上げてはいかがですか?」

「そうだね……」

 携帯電話を出して連絡を取る梓。ファントムⅥには車載電話もあるが、絵利香と話すときは自分の携帯の方を使う梓だった。

「一体今まで連絡もよこさず何してたのよ」

 電話が繋がった途端に、絵利香の甲高い怒った声が飛び出して来る。着信表示で名乗らなくても梓だと判っているからだ。

「ご、ごめん」

 梓が謝ると、落ち着きを取り戻した声が返ってくる。

「もう……心配してたんだからね。怪我とかしてない?」

「うん。大丈夫だよ」

「よかった。それでお竜さん、助かったの?」

 教室での会話で、梓が竜子を助けに行ったことを知っているからだ。

「うん、助かったよ」

「そうか。さすが、梓ちゃんね。とにかく明日、ちゃんと話ししてよね」

「わかった。明日、ちゃんと話すよ。じゃあ、また明日」

「うん。またね」

 携帯を切る梓。

「お屋敷に到着です」

 屋敷の門が開かれ、ファントムⅥがゆっくりと入邸していく。

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