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第四章・スケ番再び(六)

(六)慎二の一日


 とある建設現場。

 資材を満載した大型トラックが搬入口から入ろうとしている。

 一角にあるプレハブの事務所兼休憩所。

 コンビニの弁当を、同僚達と談笑しながら食べている慎二。

「おい、慎二くん。食事中済まないが、重機を動かしてくれないか。資材が届いたんで、荷おろし頼む。食後まで待ってくれと言ったんだが、次の現場も急いでいるんだそうだ」

 現場監督という腕章をつけた人物が入ってくるなり慎二に言った。

「いいっすよ」

「悪いな。終わったら、休憩時間延長していいから」

「それと誰かもう一人頼む」

「俺がいくよ」

 慎二ともっとも親しく話していた青年が答えた。

 作業用ヘルメットを被り、手拭いを腰のベルトに下げて出ていく二人。

 慎二が、大型クレーンに乗車して始動させると、轟音と共に排気口から黒煙を上げて動きだす。

 トラックの荷台上の運転手と、下の資材置場に先程の青年。三人一組の玉掛け作業で、資材を降ろしていく。

 その作業を、離れて監視している現場監督。

 そこへ、一人の人物が近づいてくる。

 気づいて振り向く監督。

「やあ、これは近藤さん。社長が来ているんですか」

「いや。社長は、別の会社社長と視察にお出かけで、その会社への送迎の戻りなんですよ。近くを通ったもので、立ち寄った次第ですよ」

「そうでしたか」

「どうですか。坊っちゃんの仕事ぶりは」

「十六歳とは思えぬほどの素晴らしい仕事ぶりですよ。真面目で手を抜くことなく、一所懸命にやってくれてます。遊び半分で重機を動かさせてみたんですけど、すぐに動かし方をマスターして、今じゃ誰にも負けない重機乗りになりましたよ。でも本当は十八歳以上で移動式クレーン運転士免許や玉掛免許とかが必要なんですけどね。正規の運転士はみんな給料の良い大手にいっちゃうので、こんな小さな建設会社には来ないんですよ。しかたなく慎二君のように無免許で動かしてもらうしかないんですよ。まあとにかくですね、同僚達とも気さくに話し合っていて受けもいい。ただ学生アルバイトなので、毎日じゃないのが残念です」

「社長令息ということは、他の従業員にはまだ内緒にしてますよね」

「ええ。彼自身がそうしてくれと言うんでね。ここでは坊っちゃんは禁句にしてます。給金も他のアルバイトと区別してません。重機作業手当はついてますけど」

「そうしてくれると有り難いです」

「それで社長とは、仲違いしたままなんですか?」

「はい。相変わらずです。一人でアパート暮らししてます」

「そうですか。長男は医者、次男は弁護士、後を継いでくれるのは慎二くんしかいないのに。二代目には申分ないんですけどね」

 重機を動かす慎二に視線を移す二人。

「それじゃあ、私は会社に戻ります。お仕事中、お邪魔致しました」

「近藤さんが来た事、慎二くんに伝えましょうか」

「いえ、黙っていてください。いやがりますからね」

「わかりました」

 挨拶をして立ち去っていく近藤。

「監督! もうここには一杯で置けませんよ。どこに置きますか?」

 大型クレーンの運転台から身体を乗り出して大声で叫ぶ慎二。

「おう! 待ってくれ」

 足早に慎二達の方に駆けていく現場監督。

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