Ⅱ
憧れ続けていた肖像画の女性が今目の前に。
レビンはソフィアがユリーシャ様でないのは分かってはいるが、あまりに似ているので危うく抱きしめてしまいそうになった。
兄と初めて肖像画を見たときは、ユリーシャ様の瞳に吸い込まれそうな感覚に襲われ、この城にいないとわかると更に会いたくなっていった。
ユリーシャ様は薔薇がとても好きだったと聞いてからは、自分で手入れをするようになりもう十年になるか。
パーティの夜。ソフィアを見たとき金縛りにあったかのうように動けなかった。
だからサミルを助けるのにも出遅れてしまった。まさかソフィアが身体をはってサミルを守ってくれるとは。自分の主人だろうと思われる令嬢に口答えする彼女を目にし、体に電流が走った感覚。ソフィアから目が離せなかった。
はっと思ったときソフィアは意識を失っていた。慌てて駆け寄り、サミルを兵士に預け自分はソフィアの膝に手をやり抱きかかえた。
軽い。身長の割にとても軽いと感じた。
抱きかかえたときに、ちらと見えた足首にどきっとした。女を知らない男ではないし、何故こんなに動揺しているのか分からない。
他人がこんなに似るものなのか?
客間まで運び、アナと侍女に着替えを任せ、着替えたのを確認してからレビンは部屋に残った。普通なら部屋を出るのが当たり前だが、目が覚めるまで傍にいたい衝動にかられてしまった。
冷静に対処したと思う。
目覚めたソフィアにレモン水を飲ませることができたし、何と言っても話をすることができたことで気持ちが高揚した。ユリーシャ様の子なのではないかという期待も捨てきれない。きちんと髪を梳いたらどんなに綺麗な艶が出るか想像しただけでぞくっとした。
あの髪を手で梳いてみたい。男なら思うことだ。
明日の朝、アナに整えられた姿を見るのが楽しみでならなかった。