みずうみ谷家
このへんから『アイスランドサガ』編も挿入してます。
リナは空腹で、ある一軒家の前に倒れてしまった。
同時に熱も出始め、意識が混濁する。
このまま死んでしまうのだろうかとか、大好きなオドワケルの生死の安否も気遣いながら、彼女はとうとう意識を失う。
一軒家に住む人間、みずうみ谷家のトルステイン青年は、薪割りをしようと斧をもって外へ出てきたが、リナを見つけるとあわてて抱き起こした。
「おい、生きてるか。しっかりしろ」
トルステインは純情な青年であったため、ここで今すぐどうこうと言うことはしなかった。
「お、おなかが、すい、た・・・・・・」
トルステインは哀れに思い、
「よしよし、今すぐメシを喰わせてやるから」
と、言ってリナをベッドに寝かせる。
「こんな肉を焼いたものしかないが」
鶏を焼いたものを差し出すトルステイン。
「私、肉は食べられないの」
リナは断ったが、トルステインは大弱り。
「このへんは寒い地域だから、作物は育たないんだ。何か食べないと、嬢ちゃん、餓死するぜ?」
眉をひそめるトルステインに、リナは身体を支えているのもけだるく、テーブルに突っ伏した。
「おいおい、だいじょうぶか」
「私のことは、ほっといて・・・・・・」
リナがヤケになると、トルステインはムッとした表情をしながら、
「いいや、放っておけないね。お前さん、俺の家の前で倒れていたんだぞ。なのにここでお前を見捨てたら、俺はイヤな男として名高くなるだろうよ。世間がどうこう、いうんではないが、それが俺の責任ってもんだ。わかるか」
「ようするに、どういうこと」
空腹のためか、リナは頭が回らないらしい(汗。
「――要するに・・・・・・お前を助けてやりたいんだ」
トルステインは小さな微笑みを浮かべてリナを見つめる。
リナは、トルステインがオドワケルに見えるような錯覚を起こし、抱きついていた。
「オドワケル・・・・・・」
違う名前を呼ばれるとトルステインは胸が痛くなったが、それでも身近にいるものとして、リナを愛したかったのだろう。
トルステインはリナの好きなようにさせてくれた。
「ここは俺が独りで住んでいるからな。気兼ねなくのんびりしてくれ」
とはいうものの、気持ちと裏腹なのがトルステインには非常に辛かった。
気持ちと裏はら・・・・・・それは、リナに対する恋心と、オドワケルに対しての嫉妬であった。
しっかし、トルステイン!;
あんた純情だっけか(汗。