94:拗ねた顔も可愛いな
「拓海、よくコントロールしたな。もう落ちるかと思ったのに」
「ベリル、ひどい」
「拗ねた顔も可愛いな、拓海」
ベリルが体を離した。
「……そろそろ部屋に戻るか、拓海。明日からまた、婚約者候補と一対一でデートだ。でも全員とのデートが終われば、晴れてクレメンスを婚約者として発表し、この茶番を終えることができる」
ロードクロサイトとの話はついた。
だからと言って、婚約者候補達を家に帰し、クレメンスとの婚約を発表して終わり、というわけにはいかなかった。
まだデートが残っている。婚約者候補がベリルにちやほやするのを、引き続き見守らなければならなかった。
「拓海、そんな顔をするな。私の気持ちはお前にあると、分かっているだろう?」
「……分かっているよ。それでもベリルが他の男に触れられたり、愛を囁かれたりする様子を見るのは……嫌だ」
ベリルから視線を逸らし、思わず不貞腐れてしまう。
「……拓海」
ベリルの手が頬に触れるが、横を向いたままでいた。
すると……。
「拓海、部屋に戻らず、ここで一緒に休むか?」
「……! いいのか⁉」
「拓海がそうしたいのなら」
「もちろんそうしたい」
起き上がり、ベリルを抱きしめる。
「拓海、服を」
「嫌だ」
「風邪とやらを引いてしまうぞ」
「その時はベリルに看病をしてもらう」
「……仕方ないな」
ベリルが俺の首に牙を立てる。
しかも立て続けに5回。
いくら意識をコントロールできるようになったとはいえ、すでに4回吸血されている。その上で5回も連続で吸血されては、もう、コントロールは不可能に近い。
そのままベッドに倒れこむ。
目を開けているのがやっとなのに、ベリルは着ていた白いドレスを脱いだ。繊細な刺繍が施されたペールブールの下着が見えたが、もう快楽の頂点が迫ってきていて、それどころではない。
ベリルは下着姿になると、そのまま俺に身を寄せる。間違いなく、あの形のいい、そして弾力のある温かいバストが、体に触れているはずだった。
でもそれを感知できず……。
それどころか。
明かりを消すと同時に、ベリルがさらに吸血を行った。
その瞬間、意識だけが言葉にできない快楽の頂点に達する。
せっかくのベリルの体を感知することなく、そのまま眠りに落ちた。
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