92:信じられないぐらいゾクゾクした
「ベリル、いつからこの計画を考えていたんだ⁉」
椅子から立ち上がったベリルに向き合い、尋ねた。
「拓海がゼテクにさらわれそうになった時からだ。でも拓海が突拍子もない動きをするから、計画が狂わないかハラハラしたが、うまくいって良かった」
「スピネルは、ベリルが俺に似て無鉄砲になってきているって言っていたけど、違うんだな。ちゃんと計画を立てて動いていた」
「まあ、そうだ。でも、湧き上がる衝動は計画的にはできない」
ベリルはパソコンを閉じ、俺の手をひいて歩き出す。
途中、ヴァイオレット達のところへ行き、今日はもう下がっていいと告げ、そして俺を寝室へ連れて行った。
当然のように上衣を脱がせ、ベッドに横たえると、首に牙を立てる。
さらわれた俺を助け出すために、魔力を使ったのだろう。
大人しく吸血を受け入れ、快感の波に揺れる。
それでも意識をベリルに戻し、尋ねた。
「魔力は結構使ったのか、ベリル」
「いや。戦闘もしていないから使わずに済んだ」
「そうか……。⁉」
二度目の吸血が唐突に行われ、思わず声を漏らす。
気持ちいい……。
存分に快感を味わいたくなったが、それを抑えた。
「なあ、ベリル、ゼテク達が別荘に侵入すること、事前に分かっていたんだろう?」
「ああ」
「ゼテクが頭領であることも見抜いていた。リマとレイラが姉妹であることも、ゼテクの孫であることもベリルは知っていた。どうやって情報を掴んだんだ?」
「知りたいか、拓海?」
ベリルが耳元で囁く。
信じられないぐらいゾクゾクした。
ベリルに吸血され、押し寄せる快楽をコントロールできるようになってから、意識で快感を味わいつつ、自分の体に物理的に加えられる刺激も感知できるようになっていた。
つまり、以前は吸血されれば、意識の中が快感でいっぱいになり、体にベリルのバストが押し付けられていても、その感触を感じることができなかった。
だが今は、吸血による快感を認識しながら、耳元で囁かれれば、その甘い吐息を感知し、気持ちよいと感じることができている。
これは大きな成長だった。
乗馬や剣術の腕が上達したことより、実は嬉しかったりして。
ベリルの囁きにゾクゾクしながら、返事をした。
「知りたいよ。だってロードクロサイトさえ、ゼテク達は国外にいると思っていた。それなのにベリルは彼らの居場所を掴んでいたんだ。当然、気になる」
腕を伸ばし、その美しい顔に触れた。
届かないと思っていた美しい華が、俺を見て微笑んでいる。
喜びで心が震えた。
「拓海はかなり意識をコントロールできるようになったんだな」
ベリルは自身の頬に触れる俺の手を掴んだ。そしてぐいっと自分の口元に腕を近づけると、手首に巻かれた包帯に口づけする。
直接キスされたわけではないのに、その行為だけで心臓が高鳴った。
「傷は痛むか?」
「いや、大丈夫。シャワーを浴びたらしみるけど」
「そうか。……このような傷はどれぐらいで治るのだ?」
「そうだな。一週間も経てば治っていると思う」
「……人間の体は弱いな」
「でもベリルが……俺をヴァンパイアにしてくれるんだろう?」
快感を押しとどめながら、ベリルを見つめる。
いくら押しとどめても表情には出ているのだろう。
俺の顔を見たベリルはフッと微笑を浮かべた。






