表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】死亡フラグ遂行寸前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/547

68:拓海様、大人の階段上ってくださいね

レッド家の邸宅においても、俺はベリルの部屋に行ったことがない。


この別荘についてからは、アフタヌーンティーに招かれ、ベリルの部屋に行っていた。でもそれはみんなが一緒であり、一人での訪問ではない。


しかし今、俺は、夜も更けたこの時間に一人、ベリルの部屋を訪ねようとしている。俺にとってそれは物凄く勇気がいることだった。つまり滅茶苦茶緊張している。


緊張のあまり、何度か迷ったりもした。

ようやくベリルの部屋の扉の前に立ったのだが……。


「あら、拓海くん、どうしたの?」


スピネルに声をかけたれた。

口から心臓が飛び出るぐらい驚いた。


「ちょ、ちょっとそのベリルに話が」


スピネルは黒のオーガンジー生地の薄手のガウン姿だった。


その姿にも俺は驚き、さらに心臓がバクバクしている。


「あら、そうなの? でもベリル様、さっき部屋に戻ったばかりだから、今、入浴中だと思うわよ」


「⁉ 随分ディナーに時間がかかったんですね」


「違う、違う」


スピネルはゆらゆらと手を振った。


「私の部屋で話していたの」


「あ、そうなんですね」


「どうする? 出直す? それとも私の部屋で待つ?」


ここに来るまでに何度か迷った。スピネルの部屋で待てるなら、まさに渡りに船だ。


「……スピネルの部屋で、待ってもいいんですか?」


「構わないわよ」


「ありがとうございます!」


俺は遠慮なくスピネルの部屋で待たせてもらうことにする。


さっきまでベリルが部屋にいたというだけあり、ソファの前のローテーブルには、二客のティーカップと、ポットが置かれていた。


「何か飲む?」


「あ、じゃあ水で」


「水でいいの?」


「はい」


スピネルは部屋の電話を使い、水とワインを頼み、俺の斜め前の一人掛けのソファに腰をおろす。


「……それで拓海くんは、ベリル様に何の話が? なぜそれを聞くかと言うとね」


そう言うとスピネルは脚を組み、前のめりになって囁いた。


「実はベリル様、さっき、ここで泣いていたの。だから話そうとしている内容によっては、私、拓海くんを止めるつもりよ」


「ベリルが泣いていたんですか⁉」


衝撃で俺は目を丸くする。


「そうよ。珍しいわ、ベリル様が泣くなんて」


「何が……ディナーの席で何かあったんですか⁉」


「そうねぇ」


そこでドアがノックされた。


「いいわよ、カレン」


ボトルのワインとボトルの水、そしてグラスを載せたトレンチを手に、カレンが部屋に入ってきた。


「あれー、スピネル様と拓海様の組み合わせ、久しぶりですね。何か検査でも?と思いましたが、これからワイン飲まれるんですよね、スピネル様」


テーブルに置かれたティーカップやポットをチェストに移動させながら、カレンはスピネルを見る。


「そうよ。これから拓海くんのこと口説こうかと思って」


「そんなことだろうと思いましたよ。ちゃんとボトルで用意しましたから」


テーブルをさっと拭くと、手早く2つのボトルと2つのグラスをおいた。


そしてそれぞれのグラスに、ワインと水を注ぐ。


「さすがね、カレン」


チェストに置いていたカップ類を、トレンチに載せたカレンは……。


「あと30分でぼくらも業務終了です。……スピネル様、ほとほどに。拓海様、大人の階段上ってくださいね」


意味深に微笑んで出て行った。


とんでもない会話が、スピネルとカレンの間でなされた気がする。でも、当然お互い冗談だと分かってしている会話に違いなかった。


だから俺は、さっきの続きを聞くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●第2回ドリコムメディア大賞●
●一次選考通過作●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇
『【完結】断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇』もおススメです☆

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
『悪役令嬢は死ぬことにした』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ