47:ベリルの騎士である俺が願うべきこと
15時からアフタヌーンティーとなると、あと一時間ぐらいか。
みんなはどうしているのだろう?
俺はとりあえずトロピカルジュースを飲みながら、さっきの出来事を思い出していた。
アンナの件はとりあえず置いておいてと。
あのクラウド家のクレメンス。
ベリルの最有力婚約者候補とロードクロサイトは考えているようだが、それは正しいと思えた。ほんのわずかな時間で観察しただけだが、容姿はもちろん、その言動は、非の打ち所がなかった。
性格も優しそうだし、クレメンスとならベリルは幸せになれる――そう思えた。
ベリルが幸せになること。
それこそがベリルの騎士である俺が願うべきことなのだ。
それでいいんだよな……。
一瞬の空白の時間。
ドアがノックされた。
「拓海、今、大丈夫ですか?」
キャノスがドアから顔をのぞかせた。
「うん、大丈夫。アフタヌーンティーまでどう時間を潰そうかと思っていたんだ」
俺はキャノスとかなり打ち解けていたので、いつの間にかため口になっていた。
だがキャノスは相変わらず丁寧な言葉遣いで俺に接してくれている。
「じゃあ、丁度いいですね。トレーニングルームに行きませんか?」
「え、今から訓練⁉」
「いえ、違いますよ。私の隣の部屋は、クラウド家の第一騎士のオスカーだったんです。彼とは顔見知りだったので、立ち話をしていたんですよ。すると拓海のことが話題に出たんです。それでボクシングのことを話したら、オスカーが興味を持ちまして」
「なるほど。そういうことか。でもキャノスだけでもボクシングの説明も動きもできるだろうに」
俺の言葉にキャノスは大袈裟なまでに謙遜した。
「私はまだまだ拓海には及ばないですよ。それに初めてボクシングを知る相手に、間違った情報を伝えるわけにはいかないですからね。何より拓海はここにはいるわけですし。だから呼びに来ました」
「了解。トレーニングルームへ行こう」
俺は部屋を出て、キャノスと並んで歩き出した。
◇
トレーニングルームについて驚いた。
クラウド家の第一騎士のオスカー一人がいるのかと思ったら、そこには十人ぐらいの騎士がいた。皆、婚約者候補を主に持つ三騎士のメンバーであり、驚くほどのイケメン揃いだった。
俺はふと、三騎士になるための条件に、実は「イケメンであること」という項目があるのではないかと思ったぐらいだ。
そんなイケメン達を前に俺がボクシングについて説明を始めると……。
魔人のような屈強な男をどのようにして素手で倒したのかを知りたい、となった。そこでキャノス相手に具体的な動きとどこにどんな打撃を与えたのかを解説した。すると騎士たちの目の色が変わった。さらに与えた打撃がどんな効果を相手にもたらすか説明すると、皆、尊敬の眼差しで俺を見た。
一連の動きを連続で見たい、となり、キャノスが魔法でトレーニングウェアを出してくれた。着替えた俺が実際にシャドウボクシングで体の動きを見せると……。
イケメン揃いの騎士たちは俺を「師匠」と仰ぎ、練習を請うた。
不思議だった。
こんなにイケメンから慕われるなんて。
元の世界では考えられないことだった。
一旦着替えに戻った騎士達が再集合し、練習開始となった。
ここにいるのは選りすぐりの精鋭の三騎士ばかり。
俺の一度の説明ですぐに動きを覚えた。
特に、クラウド家の第一騎士のオスカー。
主であるクレメンスが完璧だったが、彼もまた完璧だった。
俺の指導に対する飲み込みも早く、動きもよく、そして俺に対してこれ以上のないぐらい丁寧に接してくれた。
ベリルとクレメンスが結婚したら、オスカーとは同僚(騎士としてはもちろん大先輩だけど)という立場になるのだろうか。
もしそうなったとしてもうまくやっていける気がした。
「拓海、ここでの滞在中、時間がある時はまた指導してもらえないだろうか?」
ヒヤシンスブルーの長い髪を後ろに束ね、青い瞳を輝かせたオスカーは、綺麗に整った顔で俺を見た。
「もちろんですよ」
「ありがとう」
白く輝く歯を見せ、オスカーは美しいイケメンスマイルを見せた。







