46:熱烈に女子から言い寄られる
「な、何を仰いますか! アンナ様はクラウド家のお嬢様なのですよ」
「でも拓海様はレッド家の騎士ですよ」
「でも拓海様は見習いの身ですし……」
「アンナもまだ学生です。卒業する頃には見習いではなくなっているでしょう」
「しかしですね……」
アレンとアンナが問答していると……。
「アンナ、レッド家の召使いを困らせてはいけないよ」
深みと甘みのある落ち着いた声がした。
声の方を見て驚いた。
とんでもない美青年がいた。
アンナと同じ水色のサラサラの髪。
瞳は深海のような青。
彫の深い顔立ちで、背も高く、引き締まった体をしていた。
これからプールに行くつもりなのだろう。
パーカーに海パンというラフな姿だったのだが……。
ただそこにいるだけで、圧倒的なイケメンオーラが漂っていた。
ガン見している俺に気づいた美青年は、綺麗な笑顔を浮かべた。
男の俺でもドキッとするような笑顔だ。
「君があの拓海だね。決闘場での君の活躍は僕も見ていたよ。誰もが勝利に酔いしれていたのに、君だけはブノワの愚行に気づいてベリルを庇った。勇気ある行動だった。僕の未来の花嫁を守ってくれてありがとう。申し遅れたね。僕がアンナの兄であり、クラウド家の次男、クレメンスだ」
そう言って手を差し出した。
俺はその手を握った。
男とは思えない細く長い指。
爪の形も綺麗に整っている。
肌も女子みたいにすべすべしていた。
握手を終えたクレメンスは、アンナの頭にポンと触れた。
「アンナは君のファンでね。あの日以来、君に会いたい、会いたいと大騒ぎしていたんだ。こう見えて普段はおしとやかにしているんだが……。拓海くん、君を前にするとどうも別人になってしまうようだ。何か失礼をしていたらすまないね」
「そ、そうなんですね。事情はわかりました。その失礼なんて、そんな。大丈夫ですよ。むしろ俺のファンになっていただき、光栄です」
「違うよ、拓海様! アンナは未来の拓海様の花嫁なの!」
「こらこら、アンナ。勝手なことを言うんじゃない。プールに行くのだろう」
俺に抱きつこうとするアンナの肩をつかみ、クレメンスは歩き出した。
「お騒がせしたね。また今夜の夜会で会おう」
クレメンスはそう言うとアンナを連れ……いや引きずりながら歩いて行った。
「ふうー、クレメンス様が来てくれてよかったですね」
アレンが額の汗を拭い、部屋に入った。
「アンナ様はぼくとカレンがここに到着してからずっと、拓海様はどこにいるんだって、聞いてきて。大変だったんですよ」
そう言いながらアレンは沢山果物が飾られたトロピカルジュースを、ソファの前のローテーブルに置いた。
俺はソファに腰をおろした。
あんな風に熱烈に女子から言い寄られる経験なんて、もちろんなかった。
しかも可愛い……。それにあの体つき……。
少し頬が緩んだ。
それを見逃さなかったアレンは冷たい目で俺を見た。
「拓海様、まさかアンナ様の水着姿を思い出していませんか⁉」
「ぎくっ」
「あたりですね。でもダメですから。クラウド家は生粋の純血主義なんです。確かにクラウド家は長男もしっかりしているし、あともう一人男子がいるのでアンナ様の結婚についてはそこまで厳しくないかもしれません。ですが結婚相手は絶対に純血じゃなきゃダメと考えているはずですし、どうしても、となれば正式な夫ではなく、情夫にされちゃいますよ」
情夫⁉
つまり妾みたいものか……。
でも養ってもらえるなら……。
「拓海様!」
「はいっ」
「もう少し、自分の価値、考えてください。どうして気づかないんですかね」
アレンはため息をついた。
「でもまあ、拓海様もこの別荘での滞在を通じて、気づかれると思いますけどね」
「気づくって何を?」
「それは自分で考えてください! あ、あと、15時にアフタヌーンティーをベリルお嬢様のお部屋でするそうなので。それまでは自由にしていいそうですよ。そこの机にこの別荘の案内図がありますのでご覧ください」
アレンはそう言うと部屋を出て行った。
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