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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】死亡フラグ遂行寸前編

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39:拓海とのこの時間は誰にも邪魔させない

知らなかった。

飛べるなんて。

翼があるなんて。

でもそうだよな。


俺が知っている映画のヴァンパイアも、マントで空を飛んでいた。


そして現実のヴァンパイアには、美しい黒い翼があった。


「ベリル!」


「拓海」


ベリルは落下する俺の体を、しっかりと受け止めた。


「怪我はないか、拓海?」


「大丈夫だ。ベリルこそ、魔力封印されたのに、どうやって……?」


「魔力を封じられ、身動きが一瞬とれなくなったが、次第に動けるようになった。それに拓海はさらわれてしまったが、船にはお前の剣が残されていたからな」


「ツヴィークのことか?」


「そうだ。ツヴィークの力について、私が話したことを覚えているか?」


ハッとして俺はベリルを見た。


「ツヴィークには、かけられた魔術を解除する力がある……!」


「そうだ」


その時だった。

上空より魔術の塊が降ってきた。


だが。


不死鳥が現れ、くちばしからとんでもない火力の炎が放出された。


同時にベリルは防御魔術を展開した。


炎にのまれた魔術の塊は砕け、魔法使いのゼテクは「ひぃぃぃ、絨毯が燃える!」と叫んだ。


「戻ろう」


ベリルは俺を抱きしめたまま帆船に戻った。

船に戻ると俺は大切な剣を鞘に納めた。

ベリルは帰還魔術を使い、不死鳥を元に戻した。


「拓海、いいか?」


ベリルのルビー色の瞳が、艶やかに光った。


「えっと」


俺の血を求めていると分かったが、艶めいた瞳にドキドキしてしまい、俺がもじもじしていると……。


ベリルは素早く駆け寄り、俺の黒のフロックコートを脱がせ、ネクタイをほどき、シャツのボタンをはずした。そして何やら呪文を唱え、シャツを肩まで脱がせると、甲板に横たえた。


甲板はまるで床暖房のように、ポカポカになっていた。


ベリルは俺の首元に顔を近づけた。

すぐに吸血されるだろうと思い、目を閉じたが……。


「拓海、お前が無事で良かった。お前の身に何かあったらと思ったら、気が気じゃなかった」


耳元で囁くようにベリルが呟いた。


温かい息が耳にかかり、俺はゾクゾクしていた。


「拓海、私のそばから離れるな」


ワイン色の美しく長い髪が俺の肌に触れたと思ったら、激痛と快感が同時に押し寄せてきた。


久々だった。


忘れかけていたこの快感……。

なんて気持ちがいいんだ……。


もうこのまま意識を閉ざそうかと思った瞬間、さらなる快楽の波が全身を巡った。


「ベリル様~」


スピネルの声が聞こえた。

そうだ、みんなが心配している。

みんなのところに行かないと。


「ベリル、みんな心配している。船も止まった。降りないと」


「いや、待たせておけばいい。拓海とのこの時間は誰にも邪魔させない」


ベリルはそう言ってから、フッと笑った。


「拓海は騎士の訓練を経て、精神力も鍛えられたようだ。私の魔力を2回も送り込んでいるのに、意識を現実に戻すとは」


……!


確かにそうだった。


2回目の吸血をされたばかりなのに、快感もよりも使命感で、俺は船を降りることをベリルに提案していた。


「つまらぬな。私は恍惚とした拓海の顔がみたいのに」


ベリルはそう言うと立て続けに吸血を3回行った。


俺の意識は再び快感の海に沈んだ。


本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!

次回更新タイトルは『ロードクロサイト』他2話です。

それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。

明日のご来訪もお待ちしています‼

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