感謝してもしたりない
「今まで本当にありがとうございました」
タブレットに録画したダンナのメッセージと共に、ホームヘルパーさんとシッターさんに、契約の終了を告げた。
ダンナはもう仕事を辞めてたし、完全に<緩和ケア>に入ってたし、ちょうど、契約を更新するかどうかっていうタイミングでもあったから。
「残念ですけど、仕方ないですね……」
「……分かりました……」
この時点ではダンナはまだ生きてたこともあって<お悔み>はなくて、だけど二人ともとても残念そうだった。
特にシッターさんには、観音の修学旅行の時にも、必要なもののダブルチェックをしてもらって、見落としてたものを指摘してもらったりってこともあったからね。
高校の時の修学旅行の準備はその時の失敗を教訓に、ちゃんとやった。なんとかやれた。
ホント、一応の<法律上の母親>のはずの私よりもよっぽど母親らしい人だったよ。
ホームヘルパーさんだって、彼女がいたからこの家もいっつも綺麗だったんだしさ。今よりずっと。
感謝してもしたりないくらい。
そんな二人も、今は他の家に派遣されてるって年賀状が届いたことがあった。
こうやっていろんな人に助けられながら生きてるんだって改めて実感するなあ。
そして、ダンナが亡くなってから五年。なんとか観音と二人でやってこれた。
二人でアニメを見て、笑って、たくさん話して。時には泣いて。いろんな人生を垣間見てきた。
もちろんそれらはただの<作り物の人生>だけど、自分達のそれと重ね合わせて考えると、いろんなことを感じるんだ。いろんなことが学べると思うんだ。
私にとってのダンナ以上の男性に出逢える予感はまったくない。だから再婚なんて考えてもいない。再婚しない、男性に好かれる必要もない。だとしたら、別に、仕事の時に『保育士として』ちゃんとできてたらそれで何も問題ないよね。
昨今の社会情勢もあって、観音と一緒に休日を家でだらだらと過ごしストレスを解消して、朝、化粧をして着替えて<保育士の顔>になって仕事に行く。
ダンナが亡くなってからも淡々と繰り返してきたことだ。
ダンナの病気のことで何度か休ませてもらったり忌引きをもらったりしたけど、幸い、退職を促されるようなことまではなかった。おかげで、今も仕事は続けられてる。
退職を匂わされたりしたら、辞めてもいいと覚悟してたんだけど、ちょっと拍子抜けだったかな。そんな職場ばかりじゃないってことだ。
ただ、同僚の保育士や園児の保護者には、ちょっと困った人がいるのも事実だけどね。




