私なんかより
なんで……どうしてこんなことになってしまったんだろう……?
ダンナが、何か命で償わなきゃいけないようなことでもしたっての……?
ふざけんな……
ふざけんな……!
ふざけんな……っ!!
おい! 神様!! 仏様か!? どっちでもいい! 本当にお前らがいるってんなら! 今すぐ! ここにきて土下座しろ!! 土下座して、なんでダンナがこんな目に遭わなきゃいけないのか、納得いく説明をしろ!!
クソが! クソが!! クソがあっっ!!
……
………
…………
もう、誰に対してこの気持ちをぶつけたらいいのか分からなくて、私は、ベッドに潜って枕に顔をうずめて、力の限り吠えた。それしかできなかった。
ダンナに当たったって、ましてや観音に当たったって、意味ないことは分かるから……
翌日は、今後の治療方針の説明と、家族に対するケアを受けることになった。私と観音、それぞれが別々の部屋に呼ばれて、カウンセラーの面談を受ける。
だけど、正直、何を言われたのかよく覚えてない。
「ご主人は、これからいろいろ我儘を口にしたり暴言を口にしたりということがあると思いますが、これは病気の所為ですから、ご主人の所為ではありません。もし、ご主人のおっしゃったことで辛さを感じた時には、いつでも相談してください」
とか何とか言ってたことだけは辛うじて覚えてるけど……
それよりも、誰かに、
『これは全部ドッキリだ』
『これは全部悪い夢だ』
って言ってもらいたかった。全部嘘だったって言ってもらいたかった。
だけど……
だけど……
どうして誰も言ってくれないの…?
嘘だと言ってよ……誰か……
お願いだから……
会計で、待合所で待ってる間、私は、涙が止まらなかった。
「お母さん……」
観音がそう言って私を抱き締めてくれるけど、やっぱり涙が止まらない。すると、病院の職員の女性が、
「どうされました?」
と声を掛けてきてくれて、またカウンセリング室へと連れて行かれた。そこでも、私はただ泣きじゃくってるだけだった。
大人なのに……
観音の母親なのに……
観音に支えられて、子供みたいに泣いてたんだ……
情けない……
情けない……
こんな情けない私なんて、なんの役にも立たないじゃない……!
ダンナの代わりに私が癌になればよかったんだ……! そうしたらダンナはちゃんとしてくれる……!
私なんかより、ダンナが生きるべきなんだ……!
観音と血も繋がっていない私なんかより……!
なんで……
なんでよお……
なんでこんなことになんのよお……
いやだ……もういやだあ……




