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たられば

こうして坂口さんとの軽い飲みを経て、私は、


『これはなるほど<仲間>だな』


って実感した。何しろ、私にはさっぱりな鉱物とか地層とかの話で盛り上がりつつも、思ったほど砕けた話はしなかったからね。たぶん、お互いにプライベートまで踏み込んだ付き合いじゃないんだろう。


ただ、最後の方で、


「うちのも、突然だったからな。癌が見付かって四ヶ月だったよ。まさかまさかだった。お前も気を付けろよ」


って坂口さんが。


と言うのも、坂口さんの奥さんも癌で他界してて。それも、スキルス性の胃癌で進行が速く、気付いた時にはもうステージⅣだったそうで……


「ああ、そうだな俺も検診はちゃんと受けてるよ」


ダンナはそう応えてたけど、まさかそれが<フラグ>になるなんて、思わないよね?




一応、ダンナも、会社で毎年検診受けてたからさ。中性脂肪とか総コレステロールが、ギリギリ異常値ではないんだけど高めで、気を付けるようにと毎回言われるのが定番だったらしい。


ギリギリで維持してるのがむしろ感心するよ。普通はそのまま悪化するか、気にして下げるかって感じだと思うしさ。


本人的には、一応、気にはしてるんだろうな。


なのに、病気ってやつは人間の裏をかいてきたりもするよね……


憎たらしいことにさ……




でも、観音(かのん)が中学二年の時に受けた検診では、毎度のギリギリを維持してたそうだ。


癌とかも発見されなかった。だからまあ、安心したんだ。


家族三人でいつものように寛いで、ストレスを解消して。


ただ、思えば、検診が終わった後に、ダンナの胃薬を飲む量が増えたのは確かだった気がする。


会社の方で、接待とかが増えたらしい。ダンナは、人当たりが柔らかいから交渉事の際のクッション役として動員されることが多かったんだって。


もし、この頃、今の<新型コロナウイルス感染症>の件があったら、ダンナもそういうのを控えてて、胃に負担を掛けるようなことも減ってたのかな……


そんな<たられば>に意味がないのは分かってる。分かってるけど、やっぱり考えちゃうんだよ。


『ああだったら』


『こうだったら』


ってさ……




それは、観音(かのん)が三年生になった夏のことだった……


仕事から帰ってきたダンナが、すごく浮かない顔をしてるのを感じたんだ。


「どうしたの……? 会社で何かあった……?」


観音(かのん)がお風呂に入っている時に、私は思い切ってそう尋ねたんだ。


辛いこととか嫌なことがあったのなら私達の前で吐き出してすっきりしてほしかった。ダンナがそうしてくれてたからね。


すると、ダンナは……


「明日、病院で精密検査を受けることになった……」


って……



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