様々な関係性を実際に見てきたことで
ダンナと坂口さんの関係性について、私は、なんとなく分かるような気がする。
ただ、観音にはまだピンとくるものがないようだ。
『同じ趣味を共有して親しくしているのなら、それは<友達>なんじゃないだろうか?』って感じてるんだろうな。
私も中学生や高校生の頃だったら、そんな風に思ってたかもしれない。
けれど、今は、そういう微妙なニュアンスもありなんだろうなと、思うんだ。
だけど同時に、私やダンナのその感覚を、今すぐ理解しろとは、言わない。こういうのは結局、人生経験を重ねた上で、様々な関係性を実際に見てきたことで腑に落ちるものなんじゃないかな。
それよりも、今は、
「ここは、家族風呂も露天風呂になってるんだ」
ダンナがそう言いながら障子を開けると、そこには、なるほど三~四人で入るのに丁度よさそうな露天風呂があった。
「うひょ~っ♡」
それを見た途端、観音が歓声を上げて、
「入ろ! 入ろ! 今すぐ!」
その場で服を脱ぎだした。そんな彼女を、私もダンナも笑顔で見てる。彼女が喜んでくれるのが嬉しいんだ。
「もうすぐ夕食なんだが、そうだな。先に一風呂浴びようか」
私も観音に続いて服を脱ぎ始めたから、ダンナはフロントに、
「先に風呂にしますので、食事の用意だけお願いします」
電話でそう告げてた。
だから、もし、食事の用意をしてるところに鉢合わせたりしないように、障子の向こう側の廊下みたいになったところに脱いだ服を置いて、障子を閉めた。もちろん、貴重品は金庫にしまう。
「うっほほ~い♡」
観音は急いで体を洗い、
「いっちば~ん!」
真っ先に温泉に浸かった。本当に小学生みたいなはしゃぎぶりだ。
でも、ここには家族しかいない。しかも今日は他に宿泊客もいないそうだからちょっとくらいは騒いでも大丈夫と坂口さんも言ってくれてた。
実は、近くに大きなホテルができたことで、坂口さんが経営する旅館のお客が減ってるらしい。今回、ここに来たのは、<仲間>の窮状に少しでも力になりたいというダンナの意向が大きかった。
この辺りは、<大人の事情>だからね。観音には言ってない。とは言え、彼女もなんとなくは察していたみたいだけど。
その上で、細かいことは抜きにして楽しもうとしてくれてるんだ。
それでいい。そういうあれこれは、大人になってから考えれば済むことだ。今はただ楽しんでくれればいい。
観音に続いて、私とダンナも体を洗い湯に浸かる。
ちょっとぬめりがあって体にまとわりつく感じのお湯だった。
「ここのお湯は、慰労回復、免疫向上の他に、美肌効果もあるそうだ」
ダンナの説明を聞きつつ、観音も私も、とろけそうな気分になってたのだった。




