甘酸っぱい思い出
自分の一方的な<想い>と、それにかこつけた酷い振る舞いを、
『好きな相手だからこそちょっかいをかけてしまう』
なんて言葉で美化しようなんて、そんなことをしてるからストーカーが自分の行為を正当化できてしまうんじゃないの?
思えば、私にも小学校の頃にやたらとちょっかい掛けてくる男子がいたけど、その男子と大学時代に偶然の再会もしたけど、しかも、
「俺、お前のことちょっと好きだったんだぜ」
とか言ってきたけど、私はそれを聞いても、
『はあ? ふざけんな!』
としか思わなかった。私がそれでどれだけ嫌な思いしたかまるで理解しようともせず、あまつさえ、
<甘酸っぱい思い出>
的に語ってるその態度に殺意さえ湧いたよ。本当にふざんけんなっての。
『たとえ世界が滅んで二人だけが生き残っても、あなただけは選ばない!』
って思ったね。
そう。『好きな相手だからこそちょっかいをかけてしまう』なんて、相手からはそんな風に受け取られることだってあるんだっていい加減に気付くべきじゃないの?
そんなことしない男子だってちゃんといるんだからさ。
と、私の話はどうでもいいんだ。観音のことだよ。
彼女はずっと耐えてきたけど、やめてくれるように言ってもきたけどやめてもらえなくて、それで耐え切れなくなったんだ。そんな子供の訴えに耳を傾けないような親では、私はいたくない。
そして観音の父親は、そんな親じゃなかった。
しかも、学校も、彼女の訴えを蔑ろにはしなかった。
それまでは様子を見ていたとしても、『学校に行きたくない』とまで言い出すというのは深刻な事態だと捉えてくれて、詳しい話を聞いてくれて、男子達にも指導してくれたって。
そういうことができる学校で、本当によかった。
何より、観音の訴えにちゃんと耳を傾けてくれる彼で、本当によかった。
このことで、私は一層、彼を好きになったんだと思う。彼となら、きっと、幸せな家庭を築けるって感じたんだ。
その後、観音は二日学校を休み、担任が連日家庭訪問してくれた上に、彼とも電話で丁寧に話をしてくれたって。
私は、それには直接関われなかったけど、二日目の夜に観音から、
「来て」
って電話もらって駆けつけて、結局、観音と一緒に寝ることになって。
この日の観音は、すごく甘えっ子だった。彼が仕事から帰ってきても私から離れようとしなくて、
「一緒に寝てほしい……」
とまで。
「それはさすがに迷惑では……」
って観音を諭そうとする彼に、
「いえ、大丈夫です!」
返して、家に着替えとか取りに帰って、彼女と一緒にお風呂も入って、甘える彼女を抱き締めたまま寝たんだ。




