表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/92

デートのお誘い

『最初のデートはオシャレな場所で。それ以外は論外』


みたいな考え方をする人がいるのは知ってるけど、私はそういうのに拘ろうとは思わない。そもそも私自身がそんなのに相応しい人間だとは思わないから。


そういうことで人間の価値を図ろうとする人とはそもそも話が合わないしさ。


と、喜び勇んで外に出たら、そこにいたのは彼と、観音(かのん)だった。


『あ、そっか。そりゃそうだよね……』


<デートのお誘い>かと思ってテンション上がっちゃってたから、正直、ちょっとがっかりしちゃったのは事実だけど、


観音(かのん)がね、あなたと一緒に行きたいって言うから」


って言われて、


「ありがと、観音(かのん)♡」


逆に嬉しくなっちゃって。


そっかあ、観音(かのん)が……!


小学校に上がってからの彼女は、一気に社会性を身に付けてきた気がする。元々優しい子だったけど、自分からそういうことを言い出すようになったのか。


そうして三人でラーメン屋に行って、テーブル席に着いて。


「全部食べられなくてもいいから、好きなものを頼んだらいいよ」


「うん♡」


彼と観音(かのん)のそんなやり取りに私もなんだか頬が緩んでしまう。それどころか、


『私達、家族に見えるかな……』


そう考えるとさらにニヤけてきちゃって。そしたら、


「かんちゃん、きも~い」


って、観音(かのん)が。


『かんちゃん』。彼女が、私(観音(かんね))を呼ぶ時に使う呼び名。


他の大人を呼ぶ時は苗字で呼ぶのに、私だけはそう呼んでくれる。


それがまた嬉しくて。


さすがにまだ『ママ』とかは呼んでくれないけど、まあこれは実際に母親じゃないから当然か。


で、注文したラーメンが届くと、彼女はまださすがに熱々のをいきなりは食べられなくて、一旦、小さなお椀に移してからツルツルと、上手に箸を使って食べる。


彼女は、シッターさんが丁寧に教えてくれたこともあって、箸の使い方が上手だ。むしろ、父親よりも綺麗な持ち方かもしれない。


ダンナ、いや、彼の方は、いわゆる<X箸>とかじゃないんだけど、微妙に持ち方がおかしいんだ。普通は小指を除いた四本の指で扱うところを、小指まで全部使って持ってる。


彼の家で食事をよばれた時にそれに気付いて、つい、見入ってしまったことで彼も察して、


「はは、箸の持ち方がおかしいですよね。でも、これでずっとやってきたからか、これでないと上手く使えなくて。親としては良くないのかもしれませんが、幸い、観音(かのん)はちゃんと使えるようになってくれているので、もうこのままでもいいかな、と」


そうだ。彼も、決して<完璧>じゃない。自分が完璧じゃないから他人に対しても完璧を求めない。本人の努力を認め、その上で、結果を出せば素直に賞賛する。


それが当たり前にできる父親の下で、観音(かのん)はすくすくと育ったんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ