どこのお嬢さんですか?
小学校の入学式があった日、私が会いに行くと、
「見て見て! 可愛い ?」
観音は そう言ってその場でくるりと一回転してみせた。入学式用にしつらえられた可愛らしい服を私に見せてくれたんだ。
普段はあまり可愛らしいかっこうというのを好まない観音だけど、この時ばかりはさすがにテンションが上がっていたのか、ひらひらとしたいかにもな可愛らしい服とも相まって、『どこのお嬢さんですか?』って感じだった。
だけどそのかっこうはそれっきりで、
「あの服はもう着ないの?」
私が尋ねると、
「だってあれ邪魔だもん。座ったらパンツ見えるし」
と、実も蓋もない言い様。
なるほど入学式という特別な日に着た特別な服だからテンションが上がってたっていうのがあるんだろうな。
だけど私も正直、いかにもフェミニンな服装はあまり好きじゃないというのがあるから、彼女の言ってることにも共感はできる。
あと、『パンツ見えるし』と言ってたくらいだから、実は、他人に下着を見られるのは恥ずかしいという感覚は当時からちゃんとあったんだよね。
私が帰ってきた時にマッパだったのは、結局、私が家族だからっていうこともある。私も観音の前ではどんなにだらしない格好をしていても気にならない。だけど当然、他人の前ではそんな格好はしない。結局はそういうことかな。
私がお風呂に入ってる間にパンツだけは履いたみたいだけど。
そういえばさすがに私が家に訪ねてくるようになったばかりの頃には、シッターさんもいたこともあってか、裸でいるようなことはなかった。
シッターさんも、立場上、彼女があんまりにもだらしない格好してたら、それについては口出ししないわけにはいかなかっただろうしね。ダンナは気にしなくても、世間一般には家族の前だからってあんまりだらしない格好してるのは良くないっていう風潮はあるだろうから。
だけどそういうことに口うるさい人も、結局、他人から見て好ましくない振る舞いをしていてそれを他人に注意されたって素直に聞き入れないんだよね。
ほら、他人を悪し様に言ったりすることについて注意されたってムキになるばっかりで改めない人も多いよね。『原因を作った方が悪い!』とか言ってさ。
批判と悪態は別の話だっていうのを認めようとしないんだ。
他人には厳しいのに自分には甘いんだよ。
そういう大人は子供から信用されないんだよね。
保育士として子供に接してきた経験から得た実感。ほら、テレビとか見てても思うでしょ。他人のやらかしにはすごく厳しいのに、自分がやらかした時にはとにかく言い逃れで誤魔化そうとする人についてさ。
そういう人を見た時に自分がどう感じたかっていうのを考えたら、自分がどう振る舞うべきかというのもおのずとわかるんじゃないのかな。




