ルインの血族・2
一年ぶりくらいの更新です。更新間隔は他より遅くなるかもですが、またよろしくお願いします。
「ルインの血族?」
なんだそれは、俺は紛れもなく日本人だぞ?
「ルインというのはね、種族や民族のことじゃない。君達の言葉では破滅という意味もあるが、神の名前の一つなのだよ」
「神の?」
「要するに、管理者が去った後も管理するようにと、ルインという神によって使命を言い渡された血族。それが“ルインの血族”だ」
「俺が……その血族だって?」
「君の世界では誰もがそんな異能力を使えるのかね?」
「――!」
「そうじゃないだろう? 君だから使える。“ルインの血族”であるなら、全てに説明がつく。筋が通る。“ルインの血族”は特別な存在だが、一人だけというわけではない。多重次元世界それぞれに一人ずつ存在し、人知れず使命を果たしている。死ぬ間際に新たな血族が生まれることから、新たな血族が生まれるのは当代の寿命が近いと言われている。つまり、君の先代の“ルインの血族”はもうすぐ死ぬか、すでに死んでいるのだ。君の年齢を考えればもう死んでいると思うがね」
俺が……神から使命を言い渡された“ルインの血族”……? だからあの妙な声や、超能力みたいな、魔法みたいな技も使える?
「さて、君が“ルインの血族”だとするなら一つ大きな問題がある」
「問題?」
「“ルインの血族”は多重次元世界につき一人。それは原則である。君の元居た世界には、他にいるかね?」
「――!」
「今すぐ崩壊するわけじゃない。だが、これまでの歴史上、“ルインの血族”が他の多重次元世界へ移動したという話は聞いたことがない。それはつまり、なにが起こるか分からないということだ」
「このまま戻らなかったら?」
「さあ、どうなるかね? ああ、陛下のことなら心配は要らないよ。あのお方は多重次元世界が崩壊した程度でどうにかなるような弱い存在ではないからね」
「その陛下って奴は見つかったのか?」
「それは教えられないね。それに、今やるべきことは遺跡の破壊だ。そろそろお喋りもお終いにしようか。なに、君ならそう簡単に死なないだろう。他は知らんがね」
「なっ!?」
「“ルインの血族”は大変珍しい存在だ。私は君に興味がある。ぜひ生き残ってくれたまえ」
そう言い残すと、ディメルの姿が消えた。
「どういうことだ?」
遺跡の破壊? この神殿のことか?
その時、ズズズッと重い地鳴りのような音がして巨大な地震が来た。
「うわわわわわ!」
慌てて神殿の中へ避難する。
「ななななんだ!?」
そうか、これがさっきディメルが言ってた遺跡を壊すって、こういうことか!
「エストレインジメント!」
神殿と地震を概念乖離で切り離す。
「ふぅ、落ち着いた」
とはいえ、大地震は続いている。
「もしもーし!」
耳に指を当てて話しかけてみる。しかし全く応答が無い。
「なんだよ一方通行かよこれ」
この地震の仕組みが分からない以上、アマドライトを守ることもできない。
「とりあえずはまあ、この神殿だけ守れればいいか」
本当は外の人達も守りたいけど、残念ながら今の俺にその力は無い。今はここで揺れが落ち着くのを待つしかないようだ。
地震が落ち着いて外に出ると、不思議と町は無事だった。どうやらディメルの目的は本当に遺跡の破壊のみだったらしい。他にも犠牲が出るような言い方だったから覚悟してたけど、良かった。杞憂だったようだ。
「大魔法師様ー!」
「ああ、サリヤちゃん無事で――」
振り向くとほぼ同時にサリヤが抱きついてきて腰がボキッと良い音で鳴った。
「ぐぇっ!」
「ありがとうございます! おかげで被害は最小限に済みました。……大魔法師様?」
「サリヤ、大魔法師様が死んでしまうぞ」
「キャァー! ごめんなさい!」
さようなら、みんな。俺は一足先に旅立つよ。
「なーに勝手に死んでんの」
どこからともなく、いきなり現れたグラサンを見て、周りの人達は驚きながら警戒する。
「あー、面倒な説明は省くけど、敵じゃないってだけ言っておくよ。言うなれば大魔法師様の従者といったところかな」
従者と聞いて周りがざわつく。
「いやはや参ったよ、気付いたらいないんだもん、君」
「そ……それは、お前のせい……だろ」
「んー、なんでも人のせいにしちゃダメだよ。聞いたんでしょ? “ルインの血族”について」
「ルイン?」
初めて聞く言葉にサリヤは聞き返す。
「うん。大魔法師様のこと。ちなみにアマドライトにもいると思うから、もし見つけたら教えてねー」
そう言ってグラサンは転送の準備にかかる。
「もう、行っちゃうんですか……?」
「うん……ごめんね、また、来るから」
「……」
動けない体に、不意打ちでキスをされる。
「!?」
「待ってます! ずっと、いつまでも……」
「おやおや、隅に置けないね君」
「うるさいな……」
こうして俺は、慌ただしいままにアマドライトを離れた。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。




