ルインの血族
「仮定として……あり得ない……説明が……」
棟梁を避難させてからもう10分は経つ。ディメルは未だにあの調子だ。
「これもう無視していいんじゃない?」
反撃開始とは言ったけど、俺には攻撃手段はない。ただ防御が無敵というだけだ。無理して戦闘をする必要はない。
そろ〜っとその場を立ち去ろうとすると、ディメルはカッと目を見開いて反応する。
「何処へ行こうというのかね? 研究材料が逃げるんじゃない!」
「誰が研究材料だ!」
思わず俺も反応してしまった。
「五月蝿いねぇ少し黙っていたまえ。ちょうど今、ある仮説を立てたところでね。かなり頭のネジが飛んだ話だが、今の君ならそれもあり得るだろう。君……“ルインの血族”だね?」
「ルイン……?」
「遠い遠い古代の話だよ。君はこの世界にいくつもの世界が内包されていることは知っているね?」
「たしか……軸がどうとかって」
「その通り。この世界は軸によって多数の世界が混在している。多重次元世界などとも呼ぶがね。そのレイヤーのうちの一つがここアマドライトというわけさ。そして、君の居た世界もまたレイヤーの一つというわけだ」
「そして、全く同じ条件じゃないと元の世界には戻れない。だろ?」
「んー? 君は博識だねぇ、そんな昔のことをよく知っているものだ」
「昔の?」
「そう。昔は今のようにレイヤー間を移動する技術なんてなかったからね、厳しい条件を整えないと移動なんて出来なかったのだよ。実質不可能だった」
ちょっと待て、アリエスが言ってたことが、昔の話……? どういうことだ?
「話が逸れたね。この多重次元世界は軸によって全てが連結され保たれている。実はこんな仕組みは宇宙を探してもここだけなのだよ。何故か分かるかね?」
「知らねーよ」
「ふむ、肝心なことは知らないのか、妙な奴だな。まあいい。この多重次元世界は、神々の悪戯で生まれたのさ」
「神々? 神がいたのか」
「大昔の話だ。神話と言ってもいい。神々は世界を創りすぎてしまい、管理が難しくなってしまった。そこである神がこう提案した。『世界を一つにまとめよう』とね。それがこの多重次元世界というわけだ。その後は神々が散り散りになって、この多重次元世界はもう数万年ほど放置されている。管理者のいないこの世界が何故存在し続けていられるのか。その謎を解く鍵となるのがルインなのだよ」
* * *
「あれー? おかしいなぁ」
「何してるんですか」
廊下を散歩していたアギリは、通信室で無線機と格闘するグラサンを見て、呆れるように訊いた。
「いやね? なんか調子悪いんだよ。やっと繋がったと思ったら突然だんまりなんだもん」
「はぁ……」
このグラサンは一体何台の無線機を壊せば気が済むのだろうか。
切れ者で仕事が出来て銃に関してはすごいくせに、機械に関しては本当に弱い。すぐ壊れてしまうからと、携帯電話すら持ってないのだ。どう扱えば携帯電話が爆発するのか……。
今は見兼ねた技術班が作ってくれた超が付くほど頑丈で簡単操作な無線機を使っている。
しかし今使っているのは通信室にある無線機。ということは、手持ちの特別製では通信が届かない相手なのだろう。
アギリは巻き添えを食う前にそそくさと退散することにした。
「お、繋がったぞ」
退散しようとしたアギリは、無線機から聞こえる言葉に足を留めた。
『その謎を解く鍵となるのがルインなのだよ』
*続く*
ディメルが語る、昔の話。
ルインの血族、レイヤーワールド。
大戦の事情が明らかに?
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