第50話:世界一の献身者、ようやく「自分の幸せ」を許す。
第50話をご覧いただきありがとうございます。
ついに50話という節目を迎えました。
今まで誰かのために身を削ってきたアルスが、ようやく自分の幸せを受け入れる。
この「報われ」の瞬間を、皆様と一緒に迎えられたことを嬉しく思います。
ハルバート領を見下ろす、花が咲き乱れる丘。
そこには、かつて世界を背負い、一人で震えていた青年の姿はなかった。
「……アルス様、またそんな遠くを見つめて。今日は公務も、肩代わりも、全部お休みだって約束したはずですよ?」
リアナが、柔らかな日差しを浴びながら、俺の隣に座った。
彼女だけではない。シルフィア王女、女神ルナリス、そしてエルフの女王セレスティーヌも、思い思いの格好でピクニックを楽しんでいる。
「ああ、ごめん。……ただ、あまりにも穏やかで、本当に俺がここにいていいのか、時々不思議になるんだ」
俺の言葉に、ルナリスがプクッと頬を膨らませて詰め寄ってきた。
「まだそんなことを言っているんですか! アルス様が幸せじゃない世界なんて、私が神様をやめてでも書き換えてしまいますよ!」
「ふふ、ルナリスの言う通りだ、アルス殿。貴殿が守り抜いたこの世界は、貴殿が笑っていることで初めて完成するのだから」
シルフィアが俺の手を優しく握る。その温もりは、かつて魔力を吸い取られるだけだった俺の指先に、確かな「生」の実感を与えてくれた。
俺は初めて、自分の魔力を誰かのためではなく、ただ彼女たちと繋がるため、愛を伝えるためだけに使った。
「……ありがとう。俺、この人たちと一緒にいられて、本当に良かった」
俺が心からそう告げると、丘を吹き抜ける風が祝福するように花びらを舞い上げた。
一方、王都の場外にある貧民街の片隅。
誰にも気づかれず、泥水を啜って生きるエルザたちは、丘の方から流れてくる温かな魔力の気配を感じていた。
「……あ。……あぁ……」
エルザは、もう涙を流すことさえできなかった。
アルスが幸せになればなるほど、世界はますます輝き、相対的に彼女たちの影は薄まっていく。
かつて自分が「無能」と蔑み、都合よく使い潰そうとした男。
その男が今、自分たちとは一生縁のない「愛」と「安らぎ」の中にいる。
その光景を見る権利すら、今の彼女たちには残されていなかった。
「……さあ、アルス様。お弁当が冷めないうちに召し上がってくださいね」
リアナが差し出してくれた、手作りのサンドイッチ。
俺はそれを一口かじり、自分を愛してくれる人たちの笑顔を見つめた。
肩の荷は、もう降ろしていい。
俺の新しい物語は、この温かな陽だまりから始まっていくのだ。
アルスの穏やかな笑顔と、彼を愛するヒロインたち。
彼の献身がようやく報われたこの瞬間は、物語の大きな到達点でもあります。
完結に向け、アルスの幸せはさらに盤石なものになっていきます。
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