第1話:「無能の君にはもうついていけない」と聖女に追放された俺、実は【全魔法のコストを肩代わり】していただけだった。
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「アルス。悪いけれど、今日限りでパーティーを抜けてもらうわ」
王都にある高級宿屋の一室。
かつての幼馴染であり、パーティーリーダーの聖女エルザが、冷淡な声でそう告げた。
「……えっ? どういうことだ、エルザ」
「言葉通りの意味よ。正直、今の私たちのレベルに君はついてこれていないの」
彼女の後ろでは、重騎士のガイと魔導師のミレーヌが、嘲笑うような視線を俺に向けている。
「アルス、お前はいつも後ろで突っ立っているだけじゃないか。剣を振るうわけでも、派手な魔法を撃つわけでもない。ただの『荷物持ち』に分け前を払うのは、もう限界なんだよ」
ガイの言葉に、俺は拳を握りしめた。
俺の固有スキルは【魔力肩代わり】。
パーティーメンバーが魔法やスキルで行使する魔力の消費を、すべて俺の体で肩代わりするだけの、地味な補助スキルだ。
彼らがどれだけ強力な聖魔法や爆裂魔法を連発しても疲れないのは、俺が裏ですべてのコストを引き受けていたから。
彼らが毒や呪いを受けても無傷なのは、俺がそのダメージを魔力で相殺していたからだ。
「……俺がいなくなれば、君たちの魔法は維持できなくなるぞ。それでもいいのか?」
俺が静かに問いかけると、エルザは心底おかしそうに鼻で笑った。
「ふふ、強がりを。魔力なんて寝れば勝手に回復するものでしょう? 私たちは選ばれた才能があるの。君みたいな『魔力タンク』がいなくても、代わりはいくらでもいるわ」
エルザは最後の一言を言い放ち、俺の足元に銀貨数枚を投げた。
「これは手切金よ。明日からは、自分の実力に見合った場所で働きなさい」
……そうか。
俺がどれだけ身を削って彼らを支えてきたか、彼らは何一つ理解していなかったんだな。
「分かった。……そこまで言うなら、俺は出ていくよ」
俺は銀貨を拾わずに、宿の部屋を後にした。
その瞬間。
――パチン。
俺の体の中で、何かが弾ける音がした。
「……っ!? なんだ、この……溢れ出す力は……!」
今まで仲間のために供給し続けていた膨大な魔力。
その蛇口が閉ざされ、行き場を失ったマナが、すべて俺一人の内側に還ってきたのだ。
視界が白く染まるほどの魔力の奔流。
街中の魔導具が共鳴して鳴り響き、夜空にはありもしないオーロラが揺らめく。
一方で。
俺を追い出した直後の、あの部屋。
「さあ、邪魔者が消えたところで、明日の迷宮探索の打ち合わせを——えっ? な、何よこれ、身体が……重い……?」
エルザがその場に膝をついた。
彼女の指先から、眩いばかりの聖なる光が、急速に色褪せて消えていく。
「ミレーヌ!? あんたの魔力はどうしたのよ!」
「わ、分からないわ! 魔力回路が焼けるみたいに熱くて……魔法が、一つも発動できない……っ!」
彼らはまだ知らない。
自分たちが誇っていた「才能」の正体が、すべて俺からの借り物だったということに。
ついに追い出されてしまったアルス。しかし、その瞬間から彼の「本当の伝説」が始まります!
一方、聖女たちは自分たちの異変に気づいたようですが……?
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