対面(していない)
急ぎ爆発音のした方へと向かうとそこにいたのは、目をまわした聖女たち一行であった。
どうやら主人公の行動らしく、きっちり宝箱を回収しようとしたのだろう。
そもそもゲーム中に看板に書かれていることなんて読まないか、読んでも無視するの二択であった。
おそらくは聖女たちは読んだうえで無視することにしたのだろう。
そうなればこの結果は自業自得ともいえる。
ただ、さすがに意識を失っている彼らを見たうえでこの場所に放置することは俺にはできなかった。
「はぁ……、まったく面倒ごとが舞い込んでくるな」
まだまだガルド領は発展途上である。
領民たちの暮らしを優先しているために軍事施設は乏しい。
ろくに牢もないので仕方なく聖女たちはいったん俺の館へ運び込み、部屋に軟禁することにしたのだった。
◇◇◇◇◇◇
「出せー!! ここから出すんだ!!」
彼らが目を覚ますと一気に屋敷の中が騒がしくなった。
主に牢代わりに使っている部屋周辺だが。
「どいてください。この程度の扉など吹き飛ばせばいいだけです。中級火魔法!!」
とんでもない威力の炎の槍が部屋の扉目掛けて飛んでくる。
もちろんそれもすでに対策済みで、この部屋は魔力を吸収する素材で作られているのだ。
しかし、想像通りとはいえまさか屋敷の中で火魔法を放つなんて。
魔力を吸収する素材のおかげで助かったが、もし木などでできていて燃えてしまったらどうするつもりだったのだろうか?
自分たちを助けたかもしれない相手の家を燃やすつもりなのか?
いや、そういう奴らだとわかっていたからこそこの部屋に閉じ込めたわけだからな。
今度は第二王子ジークハルトが思いっきり扉に殴りかかっているようだ。
もちろん武器は全部取り上げている。
当たり前だ。わざわざ装備を置いたまま閉じ込めるなんて、明らかに『部屋を壊して出てください』なんて言わんばかりのことをするはずがない。
近くの部屋に置いておいて、部屋から出たらどうぞ持って行ってください、みたいなこともしない。
俺だけ入れる宝物庫にきっちりしまい込んである。
もちろんそこのカギを適当に歩いている兵が持っている、なんてこともない。
宝物庫に入れるのは俺とリフィル、あとはルーウェルの三人だけである。
とはいえ宝になるようなものなんてほとんどないために今は彼らの武器くらいしか入っていないが。
「はぁ……、いい加減にしてくれないか?」
扉越しに話しかける。
「お、お前はテオドール!! こんなところに閉じ込めて、俺たちになんの恨みがあるんだ!!」
「恨み? それは俺よりもここの領地にいる奴らの方がありそうだが?」
「そ、それはどういうことでしょうか?」
中から女性の声が聞こえてくる。
よく考えると聖女と声をかわすのはこれが初めてかもしれない。
「お前たちが大森林で火魔法を放ったせいで集落が燃えて住めなくなった獣人たちがどれだけいると思うんだ? そいつらがお前たちに恨みを持たないとでも?」
「私が放ったのは火の初級魔法だ。しかも魔物に放っただけで周囲に大火災を起こす力なんてない」
「お前たちが魔物と言っていたのは戌人族の獣人だ。しかも初級であろうとも周囲を木々に囲まれていて、魔力も充実している大森林ならばあっという間に燃え広がることなんて子供でもわかることだ」
「はははっ、そんなことで俺たちが騙されると思ったのか! あのクラスの魔法は魔族や魔王でもないかぎりは放つことはできないぞ!」
ジークハルトが笑ってくる。
自分たちの望むようにしか考えられない奴らだな。
「ここにはお前たちが火の初級魔法をぶつけて死にかけた戌人族もいる。その言葉を本当にそいつらの前で言えるのか?」
「ボロを出したな。やはりここは魔族に支配された地であったか。魔物を使役するなんて」
「はぁ……、論外だな。しばらくはそこで反省しているといい」
まさかここまで話が通じないとは思わずに俺は背を向け、自室に戻ろうとする。
「ま、待ってください。今の話、本当なのですか!?」
「俺が嘘をついてどうする? 大森林は元々俺とは無縁の場所だぞ?」
「お、おいっ、まさかこんな奴のいうことを信じるのか? こいつは嫌われ王子なんだぞ?」
「ですが、実際に被害が遭われた方がいるのなら謝罪はすべきです!」
聖女が毅然たる態度でいう。
そもそもそれが間違いなのである。
「何の脈絡もなく突然襲われて、死にかけて、今までの暮らしまで奪われて、そんなやつらがただ謝罪されて受け入れるとおもうのか?」
「そ、それは……」
「テオ兄ちゃん、ルーウェル様が呼んできてほしいって。今度は別の人たちが襲ってきたみたい」
「わかった。すぐに行く」
ミューに言われて今度こそその場を後にする。
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